戦争映画

戦争映画が大好きだ。
とくに第一次世界大戦と第二次世界大戦はやはり格別である。
一応言っておくが、右翼でも左翼でもない。
悲劇は必ず名作を生むという世界の原則を、平和な場所でただ観測している。


ネットフリックスに入り直して、また映画を観るようになった。知らない言語は心地良い。

最近はオランダの戦争映画を観たり、西部戦線異状なしのリメイクを観たりしている。
ドイツ兵は家族を思い出し、このまま仲間と焚き火を囲んで笑うほうが幸せかも、と呟き、イギリス兵は戦いの記憶を持ったまま元の生活に戻れるはずがないと訴える。
トルコ兵は文字が読めなくて、ノルウェーの中立的立場は民間人を巻き込む。
ハリーポッターのドラコ・マルフォイがイギリス兵となり、カナダ軍との合流を目指している。



ここで突然過去10年の個人的トップ3戦争映画。

「灼熱」2015年🇭🇷
クロアチア内戦を開戦前日、戦後、その後の3視点から描いたドラマ映画。
美しい土地と、突然近所が敵になるという" 民族戦争" 独特の空気感が見事に感じられる。

音楽の使い方も類を見ない。
独特な狂気と静けさが人間の心を侵食していく。


東京に来たばかりのころ、青山にひとりで観に行った。映画を浴びたあとの感動と悲観に、外の寒さと静けさが入り交じった。新しいブーツで歩いた青山一丁目。わたしは孤独だったと思う。

「灼熱」トレーラー



「アンノウン・ソルジャー」2019🇫🇮
歴史好きにはおなじみ?の" 冬戦争" のあとの継続戦争をフィンランド視点で描く。
同国の大ヒット古典小説「無名戦士」の映画化であり、制作費はフィンランド戦争映画史上最高額をマーク。
長引く戦争。すこしずつ狂気に染まる兵士たち。

ひとつの戦いの長さが印象的な作品といえる。
場面は移り変らない。視聴者でさえ、もう終わって!と思うほどしつこく命の架け合いが続き、それがリアルさを増す。

雪景色を望める戦争映画は稀である。
美化しない。だけど彼ら、絶望もしていない。
凍える寒さとどこまでも積もる雪、どこまでも続く戦い。
青春を戦地で過ごす青年たち。
彼らはこの戦争に終わりなんてないことを知っているようだ。

わたしはロシア映画が大好きなのですが、ロシアの暗さとは表現が異なる印象。

「アンノウン・ソルジャー」トレーラー

※冬戦争 
第二次大戦中の1939-40年、冬越しに行われたソ連のフィンランド進攻により勃発。両国とも多くの犠牲者を出し一度収束するが、1943年よりせめぎ合いが再開。のちのこの戦いは冬戦争を引きずった継続戦争として認知される。
アンノウン・ソルジャーはこの" 継続戦争" を描いた作品。
お気づきの通り、ここでのフィンランドはいまのウクライナの立場だと考えてもらうと分かりやすい。(もちろん両国、兵士と国民にはなんの罪もない。という見解を添えておく)



「1917」2020🇬🇧
第一次世界大戦の西部戦線。ドイツ軍の罠に対する作戦中止命令を届けるため前線を横切ることになったイギリス兵を描く。
脅威のワンショットムービー。さらに実話。前線の緊張感はもちろん、塹壕や占領地の描写、疲れ切った兵士たち、そして戦地がこんなに美しく映るのかと思うショットの数々。

任務を開始した夕方からカメラは彼らを追い、夜が来て、明ける。(厳密に言うと2ショットとなるがそれにより夜を共に越し物語を追う設計となっている。)
絶望に満ちた死の塹壕と、帰れないことを知っている兵士たち。夜の闇と爆撃の閃光。その影を写し出す廃退した街の美しさ。

主演のジョージ・マッケイは自分好みの映画によく出ているので、戦争映画俳優なのではと個人的に思っている。

「1917」トレーラー


※ワンショット余談
ガチのワンショットムービーとしてはドイツ映画の「ヴィクトリア」🇩🇪が挙げられる。
若者たちが犯罪に巻き込まれていく様を真夜中から夜明けにかけてガチワンショットで撮影し数々の賞を受賞した。こちらも忘れられない一本。(トレーラーのリンク貼っときました。)



戦争のさなかに生まれ、戦地で死んだら幸せだなと思う。生きる意味など考えずに来る日も来る日も必至に生きて、死の恐怖は戦いに紛れる。平和は奇跡で、幻想だ。

五木寛之さんが何かの本で、戦中や戦後は豊かな時代に比べて生きている感覚があったと綴っていた。
豊かさと平和は生きる意味を見失うのに十分な理由となるようだ。

「1917」での敵国にあたる第一次世界大戦中のドイツ兵を描いた「西部戦線異状なし(新版)」にも触れようと思ったが、そうやって文章がどんどん長くなるので今日はやめる。
SNSから離れていると趣味の話をする場所が全くないことに気づく。

読んでいただきありがとうございました。

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