元デパート受付嬢が学んだ「親切」と「サービス」の違い
学んだ。なんて申しますと仰々しいでしょうか。
お客様と接するなかで、失礼ながら「こんなことまでしなきゃいけないのはおかしいのでは…?」と思ったことが70回以上ございました。
上記数字、ウケ狙いで盛ったわけではございません。眠れない夜に数えたら70人を超えており、自分の執念深さにやるせなくなって数えるのをやめたのです。(多分本当はもっといます。とほほ…)
デパートの受付嬢は親切でないと務まらない仕事なのに、なぜこんな風に思ってしまうのだろう…と落ち込みながら考えたこともございました。
考えながら働くうちに、「親切」と「サービス」の違いについて考えるようになりました。
サービスには値段がつけられる。
親切には値段がつけられない。
サービスはお金で買える。
親切はお金じゃ買えない。
サービスはお金を払わないと受けられない。
親切はお金がなくても要求できる。
「お金がないからサービスを受けられない。」は当たり前。
「お金がないから親切にしてもらえない。」だと、まるでお店が不親切のように聞こえる。
サービスには誰が見ても明確な基準がある。
親切は受ける側によって印象が違う。
つまりこちらが親切でやったことを「差し出がましい」と怒る人もいれば、敢えて手を出さなかったことを「不親切だ」と怒る人もいる。
サービスは商品にできる。
親切は商品じゃない。
サービスはお金を払って要求すれば、手に入れられる。
親切は要求されてするものじゃない。
こんなことがございました。
30分に60人以上の問い合わせを受けて息つくヒマもない程忙しい時に「紙袋をください」とお問い合わせを受け、紙袋をすぐ使えるように開いてお渡ししました。
すると後日、私に名指しでクレームが入りました。クレームの内容はこうでした。
「紙袋を渡しただけで荷物を入れるのを手伝ってくれなかった。」
正直申し上げてよくもこの程度のことでクレームが言えますね。という気持ちでした。
確かに他にお客様がいない状況であれば、お荷物を整理するお手伝いをするように教えられていましたし、実行していました。
しかし、
「紙袋をください」に対して
「紙袋を開いてカウンターから出てお客様のお荷物を重いものから順番に紙袋に入れるお手伝いをすること」は、商品として確約されたものではありません。
もし30分に60人以上の問い合わせを受けている状況でカウンターの外へ出て、お客様のお荷物を入れるお手伝いなどしていたら、他の困っているお客様への配慮ができなくなってしまいます。
受付嬢に最低限求められている、
「受付へ来たお客様のお問い合わせにお答えし、快適なお買い物のお手伝いをする」というミッションを果たせなくなってしまいます。
今思うと、もう少し人手がいれば…とも思いますが、親切というのは受ける側が要求し始めるとキリがなくなるものです。
居ませんか?なんでもやってもらって当たり前って顔してる友達。
そういう人って「このくらいいいよ。気にしないで!」なんて言ってあげていると
どんどんどんどん図に乗って
どんどんどんどんどんどん図々しい要求してきますよね?(そんな奴友達じゃないかもしれませんが)
…と、お客様は友達ではないのでこんな言い方はここだけの話なのですが。
こんなことが日常的に起こる受付にいると、無条件に必要以上に親切にするなんて私には難しいな…と思ってしまうのでした。
あ、ちなみにこのクレームを受けて上長(全国なんちゃら統括本部長)は、全体朝礼でこんな話をしてくれました。
「どんな状況でも、お客様のために200パーセントのサービスを提供するのが受付嬢の仕事です。今日も1日200パーセントで頑張りましょう!」
あんたが200パーセントで仕事やってんの見たことないんで見してもらっていーですか?あと200パーセントでやんなら給料2倍な?
たとえお客様であっても、親切は無理に要求していいものではありません。
お金で買えない、無くても(本来なら)怒られないのに手を差し伸べてくれるから、親切って嬉しいものなんだと思います。
そんな元受付嬢は今日、魚屋さんでカツオのお刺身を買いました。
レジのおじちゃんが「氷お付けしますかー?」と聞いてくれました。
氷は重そうでしたので、「そのままで大丈夫です」とお答えしました。
すると後ろの方で品出しをしていた別の店員さん(おばちゃん)が、
「お客さん氷大丈夫です?家まで何分くらいですか?」と聞いてくださいました。
「30分です!…氷、あった方がいいでしょうか?」
「うんうん、お付けしましょう?お金かからないですからねー!」
「じゃあ…やっぱりお願いします!」
と、最初断ったのに氷付けて頂いてしまいました。なんだかその方が美味しくいただけそうでしたし、なにより店員さん2人の親切が嬉しかったのです。
私がカツオのお刺身を持って帰るところを想像して、氷があった方がいいのでは?と何度も確認してくださいました。
しかも2回目に氷のことを聞いてくれたのは隣で別の作業をしていたおばちゃんです。
自分が対応していないときもこちらに気を配ってくれるってすごいです。こういう配慮って、なかなか出来ないものです。
おかげさまでいつもより30パーセント引き、かつ、いつもより美味しいカツオくんをいただくことができました。
親切を無限に強要されるあんな経験をしたからこそ、人から頂く親切は思いっきり感謝して、思いっきり楽しもうと思いました。
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