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「みんなが頼りにしていたBさんとリストラクチャリング」

「社長、やっぱりBさんは必要だったんですよ」
「そうです。現場のみんなが困っています」

そう課長たちが社長に進言した。
ワンマン社長というわけではないが、課長たちが口をそろえて社長に訴えるほどの事態だった。

「しかし、そうはいってもBさん一人がやめただけだろう?」

そう社長はいう。だが課長は繰り返す。

「それだけの人物だったのですよ、Bさんは」
「しかし、そうは見えなかったが・・・人は見かけによらないということか」

Bさんは敏腕営業マン、


というわけではない。

Bさんというのは、パートのおばちゃんだった。
社歴は長く、もう十×年も務めていた。

といっても仕事の内容は、郵便担当だった。
郵便を受取、それを仕分ける。あとは郵送物がある場合はそれを出す、というだけ。

創業当時は郵便が主流で大事なものほど、郵便だった。
FAXなどが浸透しても、結局は郵便がくるような始末。
しかし、デジタル化が進むと郵便や郵送物は減っていった。

そしてついにはDMくらいしか郵便で届かなくなった。
仕事や契約に関しても、もう郵便がなくても困らなくなった。

そのため、Bさんの担う仕事がなくなってしまったので、
そこで社長は人員見直しの際に郵便担当の役職をスッパリと切ってしまった。

すると、現場から声が上がってきた。
そして、それは徐々に悲鳴に近くなってきた。

Bさんが請け負っていた業務内容は、郵便担当だったが
それだけを行っていたわけではなかった。

かつてはそうだったかもしれないが、郵便量が減るにつれ、
Bさんは自主的にいろいろなことをやっていた。

営業アシスタントのように、営業の補助的な業務を行い、
総務のように備品を発注し、さまざまなものの過不足なく調整してくれていた。
いろんな種類の資料や手続きについても、皆、わからないことはBさんに聞いていた。

「みな、自立し、自分の裁量で仕事をこなしているのが、わが社の強みだったんじゃないのか」
「はい。そう思っていたのですが。。みな、Bさんに頼っていたのですよ」


Bさんは縁の下の力持ちとして、会社を支えていたのだった。

それがまったく見えていなかった。
しかし、去ったことでいままで当たり前だったことができなくなり、
Bさんがいかに働き、代えがたい存在だったのか、あらわになったのだった。


「なるほど。そんなに皆、困っているのか」
「ええ。Bさんはただの郵便担当ではなかったのです。Bさんがいないと仕事が回りません」
「思った以上に事態は深刻のようだ・・・わかったよ」

皆の訴えに社長は強く頷いた。

「皆、自立していると思って、ちゃんと本当に仕事をみていなかったよ」



そして半年後




結局、Bさんを社長は戻さなかった。


代わりに業務を洗いざらい、棚卸しさせた。
するとBさんの業務の他、誰誰しかできない、知らないことが山ほど出てきた。

そして社長は、属人化した仕事を強制的に解体させた。

「いや、あぶなかった」

社長は当時を振り返る。


「これでだれがいなくなっても大丈夫だ」


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