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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 9話「どちらが先か」(1)
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9話 「どちらが先か」(1)
翌朝。
朝食を早めに済ませ、一行は巨大鳥探しへと出発する。皆に続いて屋敷を出ようとしているゴナンに、今日は屋敷で療養する予定のミリアが声をかけてきた。
「待って、ゴナン。渡したいものがあるの」
「?」
ミリアは少しワクワクした顔で、ゴナンに一つの狼煙玉を渡す。昨日、皆が作ったものよりは小玉だ。
「これ…」
「昨日、なぜだかボーカイ草に触らせてもらえなかったのだけど、やっぱりわたくしも作ってみたくて、マリアーナさんにこっそり作り方を習って作ってみたの。赤玉の方よ。なんだか皆のものより小さくなってしまったのだけれど」
「えっ?」
横でリカルドが少し慌てる。マリアーナはミリアの『引きの悪さ』など知らないから、よかれと思って教えたのだろう。しかも、よりにもよって火薬を使っている赤玉の方…。
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「思いのほか上手にできたから、これを使ってほしくて。お城でも上手に刺繍ができたら、いつもお兄様に差し上げて使ってもらっていたのよ…。……あっ…」
そこまで口にして、はっと表情を曇らせるミリア。
「…ああ、わたくし、こういうものを初めてつくったから、はしゃいでしまっていたわ。これのせいでゴナンに悪いことが起こってしまうかもしれない。やっぱり、捨てるわね」
「え? 大丈夫だよ」
ゴナンはそう言って、さっとミリアから赤玉を受け取る。
「小さくて持ちやすいよ。使いやすそう。ありがとう」
「……お気を付けて」
心配げなミリアの見送りを受けて屋敷を出るゴナンとリカルド。リカルドは、ミリアの狼煙玉を大事そうに持つゴナンに声をかける。
「ゴナン…、その…。赤玉は白玉に比べて使う機会はそこまで多くないはずだし、それはサイズも小さい。せっかくミリアがわざわざくれたものだから、お守りとして大事に持っておいた方がいいかもしれないよ。大事にね、大事に。まだ他にも、作った赤玉はたくさんあるんだから、使うともったいないよ」
「…うん、そうだね。この大きさなら、俺の腰袋に入るし」
そう素直に応じて、自身のバッグに大事に入れるゴナン。リカルドは笑顔を浮かべながらも、胸の内ではほっとしていた。
「さあ、行こうか。ゴナンは僕の後ろだね」
外ではすでにナイフとディルムッドが騎馬して待っていた。ゴナンがリカルドの後ろに乗り込み、水場のエリアへと出発した。
* * *
30分ほど馬を走らせ、集合ポイントと定めた丘へと着いた一行。
「…ところで…、もし巨大鳥に遭遇した場合、どうするのだ? 一応、拘束する場合を想定して投げ縄などは準備しているが…」
ディルムッドがリカルドに尋ねた。
「鳥には女の子が乗っているようだから、まずはその子と話をするのが一番の目標だね。ただ、問答無用で逃げるようだもんなあ…。友好的に接触するのがベストだけど、その場に止まってもらうために、多少、手荒な方法はやむを得ないかな…」
「とはいえ、巨大鳥ってすごーく大きいんでしょ? 鳥に縄掛けたって、こっちが空に連れて行かれてしまうのではない?」
ナイフも縄は装備している。「まあ…、ディルなら大丈夫かもしれないけど」と付け加えた。
「そうだね…。ケガはさせたくないから、女の子の方を拘束するか、もしくは鳥の羽なんかをうまく止められたら…」
「…俺、投げ縄も練習しないと…」
リカルドの後ろでゴナンが、申し訳なさそうにしている。
「まあ、ボチボチね。とにかくまずは会話だよ、会話」
リカルドはそう励ますように声をかける。
「では、解散だな。目処としては、夕暮れ前までだな?」
「うん。僕の方で良い頃合いで白2本の狼煙をあげるよ。それでは、よろしく」
「じゃあね」
そうして三方に散った。
↓次の話↓
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