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世界放埓日記

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2017年7月の記事一覧

世間は美人に冷たい

先週、夏の楽しい予定の一つをキャンセルした。結果として、自分と向き合う時間に充てがうことが出来たから良かったけれど、結構凹んでいる。

事の発端は数週間前に遡る。
「BBQしよう、久しぶりに会いたい」
親友からの連絡に、脳内でカレンダーをめくり、すぐさま承諾をした。
しかし彼女はその後「他にも私の友人を誘っているんだけどいい?」と続けた。話を聞いてみると、それは所謂「合コン」だった。
「男性陣がね

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夜風回遊魚

男性って、涙で目を充血させると途端に子供っぽくなる。
部屋の隅にしゃがんで私の演奏を聴いていた彼が顔を上げた時、その目元が赤く染まっていて、私はその顔をみた瞬間に、どこかで迷子になっていた小さい頃の彼と出会ったような気がした。
男の子は、総じて弱味を見せたがらないから、知らんぷりをしてしまったけれど。私はそれを少しだけ後悔している。

「よく同じ夢を見るんだ。目的地があって、そこへ向かうために電車

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世界の堰堤(改)

 泣きながらするセックスは随分と気持ちのいいものだったなあと、後になって思い返した。大晦日のことだった。
 私の肉体は、冷えきった巨大な肉塊に組み敷かれ、きしんだ音を立てた。 男は、機械の状態を確かめるように私の体のあちこちをためすつがめつした後にゆっくりと体の中へ侵入してきた。

相手の顔も思い出せないのに、その性器とセックスの感触だけは思い起こされる。
 二次元的な運動が繰り返される中で少しず

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私が留学した理由

「お母さん、自分と同じ道に進んでくれて喜んでいるでしょう」

「お父さん、自分の教える大学に娘が入って誇らしいんじゃない」

と声をかけられる度に、ちがーう!と叫びたくなっていた。私だけかしら。

私の両親は、娘が自分のやりたいことを見つけたことを喜んでいるとは思うが、自分の人生が肯定されたかどうかという点に関して言えば無関心だったろう(我が家は世襲制や自営業ではないので)。

森鴎外の愛娘・

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