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少女A伝

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短編小説集です。
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#旅行

潮騒の恋人

男は海が七つあることを知らなかった。それなのにこれ程に海に愛されている。

「君の故郷のトーキョーには、海はあるのかい」と彼は尋ねた。
目の前には、彼の生まれ育った小さな街をずっと見守り続けてきた海が、日の名残りを受けて僅かに朱く染まっている。大航海時代、貿易港として栄えた街だ。旧市街の赤みのかかった煉瓦で作られた古い建物は、海に面して所狭しとひしめき合っている。
「あるわよ」と答えながら、東京の

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思い出は砂の香り

砂漠に吹く風は、日没と共に柔らかく変化する。
夕暮れに青白く浮かび上がるモスクは、あたかもその身に太陽の熱を溜めていないかのように白く輝いていた。かといって、冷たい印象を受けないのは、優美な曲線と照明の加減なのだろう。
蜃気楼の残滓から生まれいずる確固たる楼閣は、砂を孕みちりちりとした風を伴って、触れたら和三盆のように崩れてしまいそうに繊細だった。
唐草模様の刻まれた天井を見上げながら花模様に埋め

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太陽の恋人

日本だともてはやされる、私の真っ白く透き通った肌は、太陽の光の下ではただの発育不良でしかなかった。
男の指は、涼しい風の吹く木陰で、私の不健康に浮腫んだ脚を、無造作にしかし大切そうに掴む。
男に無造作に扱われることは、女にとっては快楽となる。彼の指はとても力強くしなやかで、そして熱を孕んでいた。彼の腕に組み敷かれることを想像し、私はその抗いがたい誘惑に身を任せようとする。
薄眼を開けて彼の姿を見や

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