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”聴覚障害のある方に、手話や触覚で音楽の楽しさを届ける” 手話バンドこころおと  武井さんにインタビュー

こんにちは!七香です。🌞


先日、手話バンド こころおと代表の武井誠さんにインタビューを行いました。

手話バンドこころおととは“音楽を楽しむ事に耳の障害は関係ない” をコンセプトにろう者・CODA(コーダ)・聴者が共にメンバーとして活動しているバンドです。 

オフィシャルホームページより

最近「コーダ」という言葉を映画で知ったばかりなんですけど、

武井さんご自身が「コーダ」で、聴覚障害のある方にも音楽の楽しさを届ける方法をたくさん試行錯誤してこられた方なんです。


これまで私が試みてきたものは、

聴覚障害者も聴者も、“一緒に” 音楽を楽しめる方法。


そこで、私が所属している団体が運営する音楽祭では、音の振動を感じるために風船を抱えるという実験をしてみました。

昨年度のホッチポッチミュージックフェスティバルの様子

太鼓やベースの振動を感じられたものの、
振動を感じられた!=楽しい♪ というのはちょっと違うなぁと思って、、。
音楽が聴こえる人にとっては、音楽を聞いているだけでも満足できてしまう。風船をずっと抱えているのは疲れてしまう、、。
風船を抱えて振動を感じるという企画は、聴覚障害者や聴者にとって、エンターテイメントとして必要とされる試みであるのか、、わからなくて、これらの取り組みに行き詰まっていたところだったんです。



そんな時に出会ったのが、True Colors Festivalのインタビュー記事。


聴覚障害のある方にも音楽の楽しさを届けようと試みてこられた熱意を感じたと共に、
音の振動を伝えるためにお客さんには風船を抱えてもらって

という文章を読んで、

これは!!武井さんに直接伺って、教えてもらうべきだ!!

と、びびっときたんです。💡

この、「風船で振動を感じる」という考案をもとに、テクノロジーを利用したさまざまな取り組みや実験をおこなっている方がいるんだとか。

まだ世の中には浸透していませんが、これらが発展していったら、
音楽が立体的になって、音楽の楽しみ方がさらに広がるんじゃないかと思いました。

みなさん、どういうものなのか、ちょっと気になってきましたか〜〜?

これらのテクノロジーを紹介する前に、
まずは聴覚障害について教えていただいたことを共有します。✍️


聴覚障害のある方にとって、音楽は敵である

流れは変わりつつありますが、耳が聞こえない人、聴覚障害者、そのなかでも「ろう」と呼ばれる人にとって、音楽はまだまだだと思っておいた方がいいかもしれませんね。

どういうことかというと、結局音楽は、耳が聞こえないと楽しめないエンターテイメントなので、その入り口の時点で、興味ないです 別にいいです という人がものすごく多い。

いきなり現実的なことをドカンと取り上げてしまいましたが、、!


この認識を見落としてしまいがち でもありました、、。

聴覚障害のある方でも音楽が楽しむ方が増えたというポジティブな意見をたくさんいただいていたので。


でもやっぱり音のない世界の人にとって、音楽に対する嫌な思い出だったり。そういうものがある人もたくさんいる。


、、、では、音のない世界って何なのでしょうか??
聴覚障害というのは、音のない世界 ということだけで表して良いのでしょうか??

聴覚障害の種類について

じゃあ聞こえないことに対する定義でいうと、
聴覚障害者でいうと、耳が聞こえない人 みたいな大枠で捉えちゃうかもしれないんだけど、聴覚障害者と言われる9割以上が難聴なんですね。

難聴って聞くと、補聴器とか、音を大きくすればフォローできそうなイメージを持つかもしれないんですけど、
難聴にも大きく分けて二つ種類があって、「伝音性難聴」「感音性難聴」があります。

 最近は人工内耳といって、マイクから拾った音を聴神経に電極をぶっ刺して、そこからダイレクトに脳に信号を送って、聴こえるようにしてる 治療法というか、やり方は出てはいますけども、
でもまぁやっぱり大多数の聴覚障害者と呼ばれる人たちは感音性難聴で。大体感音性難聴を持ってる方は、伝音性を併発する人が多いんです。

このお話を伺って、「聴覚障害」という言葉を、「耳が聞こえない・ろう」とイメージを固めてしまっていた気がしたんです。

これは聴覚障害に限らず視覚障害など、他の障害についてもそうだと思っています。

当事者によって、いろんな聞こえ方があること。

これらを理解できた上で、
自分がどのような方に向けて音楽を届けたいと思っているのか

音量や補聴器、人工内耳などでカバーが可能な伝音性難聴の方への対応
音声や装置での調整が難しい感音性難聴の方
完全に音が遮断されているろうの方
に、どんな対応ができるのかを知る必要があると感じました。

ろう者と音楽

では、音楽が遠い存在のろうの方が音楽に親しみを持つようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

それでも、徐々に流れが変わってきたというのは、音楽番組が増えてきて、その音楽番組に字幕がつくようになったんですよ。それと別に、聞こえない人のためにじゃなくて、カラオケの流れから、歌詞が映像と一緒に流れるようになって。
要はこれが聞こえない人たちの中で、テレビを見ている人の中で、自分好みのイケメンとか自分好みの可愛い子がなんかいいこと言ってるみたいなところから音楽に興味のある人が増えてきて、で、そういう人たちの中で、音楽に触れるのいいなと思う人が増えてきたんです

手話で音楽を届ける

じゃあ、聞こえない人たちに音楽って楽しいよっていうのをどうやって伝えるんだっていう感じで。
とにかくこころおとの歴史でいうのならば、当然まずはやっぱり手話で歌うというのがメインにきましたね。

手話を言語として習得した人たちが手話で表現するっていうのは、一番伝わりやすいというか。

聞こえない人たちにとって、音の情報って全部視覚情報に変換しないといけないんですよね。
どんなに音の工夫を重ねたところで、音の調整しようとしても一人一人聞こえる周波数がバラバラなので、一人一人に寄り添った音というのはできるわけがないんです。
要は、一人一人に違うイヤモニをつけるみたいな感じです。
そんなのできないので、現実的ではない。

手話は、聴覚障害者にとってのアイデンティティでもあり、音楽を手話で表現することには、マイナスなイメージを抱く人もいるんだそう。
それらをわかった上で、音楽を届けるためには、やはり手話は重要な役割を果たすとも言えるんです。

”触覚で音楽を聴く” テクノロジーについて

さてさて、聴覚障害のことについてたくさん学ばせていただき、お腹いっぱい!という感じですが、、

ここでようやく、気になっていた聴覚障害のある方に音楽を届けるためのテクノロジーを紹介していきたいと思います!

体感音響システム

こころおととしては、今までやったことがあるっていうのでいうと、
フロアごと揺らす、要は体感音響システムって言って、一定のゾーンのところの床下に振動板とスピーカーを仕込んで、そこのゾーンに来ると音が立体的になるというか、
音に合わせて床が振動してる状態でやったことはありますね。

基本的にうちのバンドって、座ってみてもらうようなバンドではないので、暴れる人は暴れる人もいるんで、椅子っていうよりかはフロアごと振動する。

ライブ観賞用のデバイス「KIKIMIMI 

金箱淳一(慶應義塾大学メディアデザイン研究科)「共遊楽器」の研究を通して楽器が持つコミュニケーションの可能性を探る ホームページより

バナナの形をした装置があって、手で握りやすい形をしていて、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード、それぞれ指ごとに違う振動が伝わるようなシステムなんです。
それを握りながらライブをみていると、ボーカルがすごく強く歌っている時とかにはこの指が強く反応するみたいな。
製品化はまだされていなくて、研究が続けられています。

LED型の照明マシーン

最近よくフェスとかで流行ってるのが、いわゆるブレスレット方のLED型の照明マシーンみたいな。
お客さんに全員に配って、事前にプログラミングしたものがひかるんですよ。ステージだけじゃなくて、360度光って、ある意味ものすごく没入できるというか。

それは別に聞こえない人たちのためのシステムじゃなくて、本当に普通のフェスとかイベントとかであるんです。
それをこころおとでやった時は結構評判がよかったというか。
やっぱり、聞こえない人にとっては視覚的に変わるっていうのが、一番訴えかけやすいというか、楽しんでもらいやすい。

私もライブに行って、よくペンライトを購入することがあるんです。
曲によって自動で色が変わったり、演出とリンクしてチカチカしたりして、ライブの空間全体がすごく盛り上がるんですよ!
参加者の一員として、”参加してる感”を実感できるのも好きなんです。


視覚情報や、風船の振動をもとにした「触覚」を用いた取り組みによって
音楽の新たな楽しみ方の可能性を知ることができました。
すごく興味深いものなので、いつか取り入れてみたいですね。💭


今まで、聴覚障害者も聴者も、“一緒に” 音楽を楽しめる方法を探ろうとしてきましたが

聴者が、音のない世界をエンターテイメントとして楽しむには、難しいと感じる点もありました。
聴覚障害者に焦点を当てて、音楽をどのように楽しんでいただくかを考えますが、
逆に、聴者が聴覚障害のことを体験して、そこに楽しみをプラスしようとすると、もっと工夫が必要なんですよ。
だってそんなことしなくても、音楽は聞こえる方が楽しいってなっちゃうから。

武井さんから紹介いただいたデバイスというのは、聴者も聴覚障害者も、
「音楽を楽しむ」ことが優先されていると感じたんです。
聴覚障害者のために とかではなく、誰もが、楽しそう!と思えるような魅力がありますよね。

それを実行するということは、武井さんから伺ったように
一人一人に違うイヤモニを用意する みたいに、すごく高度なことを試みているということで
困難や壁を避けては実現できないけれど、それらと向き合うこと。
向き合い続けていろんな聞こえ方を理解したり、いろんな楽しみ方を模索しながら、音楽の楽しさや良さを私なりの方法で、音の聞こえない方にも届けていきたい、そのように感じました。


困難や壁と向き合ってきた、そしてそれらを決して綺麗事として収めることのない武井さんのお話は、そのようなことを考えさせてくれました。


この記事を読んで、、、
こころおとの手話バンドをみてみたい!!と思っちゃいましたよね、、!

実は、今年のホッチポッチミュージックフェスティバルのまんなかステージにて、出演していただくことになったんです🎉

詳しくはこちら▽


冒頭で紹介した、去年の風船企画から始まり、、何も知らない私にとっては難しいことでしたが、
向き合ってきたことによって新たに出演者としてお招きし、聴覚障害のある方に音楽を届けられる機会を増やせたというのは、それは私なりの、第一歩と捉えていいのかなと思っています。

これからも多様な方が楽しめる音楽を研究していきます。

本日も読んでいただき、ありがとうございました🕊

🌟関連ページ🌟

・手話バンドこころおと オフィシャルサイト


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「音楽で人の心に寄り添う」を目標に、
さまざまな人のお話を伺いながら、音楽と福祉について学んでいます。

そんな私の卒論テーマは、

「聴覚障害者も楽しめる音楽イベントの企画制作
−ユニバーサルデザインの活用−」

実際に開催するユニバーサルデザインを考えたコンサートや音楽祭に参加し、フィードバックいただける、聴覚障害のある方を募集しています。
ご協力いただける際は、お声がけいただけると助かります。

街に広がる音プロジェクト
・9/25(Sun) クイーンズスクエア横浜 1F クイーンズサークル

ホッチポッチミュージックフェスティバル
・10/23 (Sun) 横浜公園

卒論制作ために、どうかご協力よろしくお願いします!🙇‍♀️

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