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『#欲しかったラブレター』:大好きな君へ。バレンタイン企画

Nへ。

私の高校時代は、
たった一人の背中を見つめ続けるものだった。

校内に入っても吐く息が白い寒い朝。
まだ誰もいない生物室に足を踏み入れ、ストーブのスイッチをぽんと押す。
その上に置かれた樽に張る水が水面みなもを広げて
ー 待っててね
校内の自販機で買った紙パックの飲み物二つをぎゅっと握りしめる私にそう告げる。
窓際にある水槽にちょこんと指を入れると、
水草の中からオレンジ色の金魚が顔を出し、ぽこっと吐き出された空気玉が私の指をぽんと跳ねる。

今日は起きれただろうか…。

湯気が立ってきた水の中に、ストローを指した飲み物をそぉーっと入れて温める。

ー『うわっ、さっみぃー!』
そう言って引き戸を開ける君の姿を想像して、くすっと笑う。
花弁の無い花占い。
くる。来ない…くる、こない…くる。。。

三年間ずっと同じ背中を見つめてきた。
少し傾いて歩く歩き方。
斜め掛けに揺れる鞄。
授業中に寝ちゃう背中もすぐわかるくらいに。

言ってもいいかな?自分の気持ち。
言ってもいいよね?
もう…いいよね。。。

でも私は言えぬまま
「またね」で高校を後にした。
「おう、またな」
そう言って卒業証書を持つ手を上げる
君の後ろ姿を見つめながら。


最後に一度だけ、
生物室に行ったんだ。
ストーブのボタンに触れて、
チョークの残った黒板に自分の名前を指で書いてみた。
いつも君が座った 日が当たる席にそっと手を置いて、
心の何処かで
がらがらって引き戸が鳴る音を待っていた。

壁時計の秒針だけが
静寂の中で刻まれる。
三年間の片思い。
一つ一つの思い出がカチッカチッと蘇る。


くる。。来ない。。。くる。。。来ない。。。

花弁無き私の花占いは

いまもずっと…続いています。


Nより。


*******************


こちらの企画に参加させていただきます:)

実話か想像かは…秘密です。ふふふ。
2月14日までの応募となっていますので、
皆様も是非ご参加ください:)

山根さん、よろしくお願いいたします。

山根さんからの素敵なお返事が届きました:)
これは山根さんに届いた、そして山根さんが届けた全てのラブレターの
総編集となっております:)
是非私への山根さんのお返事も、他の皆様の素敵なラブレターと共にお読みください。



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