『君ときみと僕』‐ショートショート王様

広い中庭の花の中で一人ぽつんと膝を抱えしゃがみこむ少年がいた。誰一人として僕と遊んでくれる子なんていやしない…恐れ多いと皆離れてゆくばかり…僕が王になる定めだから。仲良く咲き誇る花々が羨ましい。

何やっているんだい？ふと顔をあげると　少年二人が立っていた。誰も遊んでくれないんだ…僕がいつか王になるから。二人は顔を見合わせると少年を花園から引っ張り出した。君が王になるまで一緒に遊ぼう。

少年にとって初めてできた友達だった。二人は将来の王ではなく、一人の人として彼に笑顔を向けてくれた。泥遊び　魚釣り　鬼ごっこ。少年は毎日　二人と過ごした時間を笑顔いっぱいで本に綴った。

月日が経ち、少年は王となった。笑顔を交わし合った二人とは二度と会えることはないだろう。しかし王は笑顔で民の前に立っていた。必ず　ある書を抱えて…。

表紙には曲がった文字でこう書かれている。
『翔とショウと僕』
かけがえのない友達を胸に　王は今日も笑っている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

（４０９文字）

たらはかにさんの毎週ショートショート。今週のお題：「ショートショート王様」に参加させていただきます：）

ハッキリ言います！！！これは難しかった！！！ふふふ。
なんといっても「ショート」が２つ続いている　しかも「王様」は変形しようがないお題。どう捻っても　ダジャレ要素になってしまう…しかも字数410文字！！という事で、シャワーを浴びながら考えまして…これになったわけですが…難しかったぁ～！！

王様だけれど、「王」ではなく「僕」として笑顔を交わしてくれた　大切な友達。「君ときみと僕」…今の形は「翔とショウと王様」だけれども、決して色褪せない王様の大切な思い出達は　王ではなく僕として今も彼の中で満ち溢れている。。。でも、二人の名前を翔君とショウ君にしたのは、ちょっときつかったかなとも思いつつ、でも、よく考えた自分！とちょっと　自分を褒めてあげたいほどの　難しいお題でした：）

もしよろしかったら皆様もやってみませんか？
私はチズさんからこの企画を教えていただきましたよ：）

今日も皆様に笑顔溢れます様に：）

七田　苗子