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中国の「フェミニスト」たち

 タイで開催される女性のワークショップに覗いてみてきました。
 参加メンバーはなんとタイにいながら全員中国人、そして20代をメインに20~50代と幅広い年齢の女性たちです。韓国作家チェン・セランの『シソンから』という本からスタートし、参加者がそれぞれ自分の「フェミニズム」への認識と実体験を語り合う熱いトーク会でした。

中国の若者女性が悩む

 日本人の皆さんが中国人女性にはどんなイメージを抱えているのでしょうか。ハキハキして自己主張が強い人、夫に昇進を要求するきつい人、あるいは不平にすぐ反抗する喧嘩に強い人、等などではないでしょうか。確かに日本と比べるといわゆる「気が強い」(いい意味での)人が中国には多いと思います。
 そんな「強い」女性たちも、特に20〜30代の若い女性の話を聞いてみると、「結婚」問題でプレッシャーをかけられるという大きな悩みを抱えています。
 なるほど、いわゆる適婚年齢ですし、日本でも同じような問題あるから特に違いはないじゃないと思われるかも知れませんが、実は結構違います。

終わらないお見合い

 「お見合い」と聞くと、日本では一昔の結婚相手を探す手段のように思えますが、中国では今はもはや結婚相手を見つける最も一般的な方法になっているかもしれません。親戚や友人の紹介、出会いアプリ経由、親同士代理のお見合いまで様々です。
 就職してから数年間を経つと、親や親戚から続々とお見合いの相手が紹介されてきます。目標は結婚、前提条件は身長、持ち家、車の三大山です。
 知らない同士がお見合の席に着くと、すぐに結婚を意識した会話を始まります。ハード条件が合わない、価値観が合わない、さっさと次のお見合相手に切り替えます。効率が良いものです。ただ、一年に数十人とも会ってみると、自分と合う相手を見つけるのはなんでこんなに難しいだろうかと嘆きたくなります。「私はいい相手に値する価値はないか」と自己懐疑するまでなります。
 相手に会うペースを落としたい、結婚前提じゃないところでじっくり相手を知りたいと言い出すが、許してくれない父母の間と齟齬が生まれます。

母親からの重圧

 独身女性への圧力は、日本では具体的に誰かに言われるよりも誰かはわからないけど「世間の目」という見えない形でかけられがちだと感じますが、中国ではそれは明確で、しかしも誰よりも身近で理解してくれるはずの親たちからくるものです。
 結婚しないと老後はどうするのか、30歳を過ぎると売れ残りになるよと母親は心配そうに言います。結婚したらすべての問題が解決できるみたいに、母親は結婚、育児生活でこんなあんなやりたいとった自分を失った経験を忘れたように、母親にかけられた言葉を今度自分の娘にかけます。
 結婚しないと親孝行ではないと娘に道徳罪悪感を着せて、「愛」の名義で
娘を縛ります。

父親との決裂

 一方、父親からのプレッシャーはより現実的に表れます。父親には「面子」、家の声望が大事になってきます。「売れ残り」の娘は手の焼くものです。想像しやすいですが、とりわけ農村部に行くほど父親からの圧力は赤裸々に娘にあたります。自己実現なんて、キャリアなんて、女はいい結婚先を見つけるのが一番の成功だと父親は言います。
 そして、娘は父親から離れていきます。たまには母親と電話するとしても、父親とは音信不通になり、所在地不明になります。お見合いする相手から逃げると同じように、父親から逃げます。
 父との決裂は決して容易なものではありません。けれども、それが唯一の解決方法に見えてきます。

現在進行形の「フェミニズム」勃興

 「フェミニズムは一体何を目指しているの」とワークショップの参加者の一人が質問を投げました。職業選択の自由、結婚選択の自由、公的領域での発言権、財産分配の権利…理論的にズバリと説明できる参加者はほとんどいなかったが、身近で起きていることのおかしさと窮屈さを肌で感じている人はほとんでした。
 「お見合いの不満を吐いているだけでフェミニズムと何か関係あるの?」と言う人はいるかもしれません。でも、必ずしも学術的で理論並べのものがフェミニズムと言えるわけではないと思います。こんな一つ一つ些細なおかしいんじゃないの気づきこそフェミニズの始まりだと思います
 それが今も、これからも中国で広がっていく炎だと感じました。







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