真っ直ぐな大人の彼
23歳の夏
41歳の男性と出会った。
私がよく友達と通っていた居酒屋の店員さんだ。
接客が心地よく、スタッフと話している所を見ても、みんなから信頼されている方なのだろう。
私は昔から接客が素敵な人に惹かれることが多い。
何十回と通い、どんどん魅力的に感じるようになった。
ある日会計の時に、LINEのIDと接客がとても素敵です。と書いた手紙を渡した。
相当勇気がいったので、目も見ずに「これ良かったら読んでください」と早口で言い去っていった為、変な人だと映っただろう。
スマホをずっと握りしめ連絡が来るのを待った。
が、その日は連絡は来なかった。
次の日の夕方
「昨日はご来店ありがとうございました。連絡遅くなってしまってすみません。お手紙とても嬉しかったです!」
とLINEが来た。
その日何十通も連絡を取り、
一駅離れた所に住んでいる
離婚歴があり、彼女は2年近くいない
映画を見ることが好き
休日はスポーツジムに通っている
などたくさんのことを知ることができ、映画を観に行く約束もした。
二週間後、新宿で待ち合わせをし映画を観に行った。
その後はお洒落なダイニングバーで夜ご飯を食べた。接客と同じように人柄が良く、私の話に相槌をうつタイミングさえも心地よくて、とても楽しく話が出来て気持ちが良かった。
次また会う約束をしてその日は別れた。
それから一週間後、体を動かしたかったのでスポッチャに行くことになった。
彼は走ることは好きだが、球技が苦手らしくテニス、バドミントン、バレーボールの対戦は私が勝った。球技が苦手な所も普段の完璧に見えた彼からは想像出来ず、ギャップを感じ愛おしく見えた。
それから夜ご飯を食べに行き、次の約束をして別れた。
それから一週間後、新宿にショッピングに行き、夜ご飯を食べに行った。
その夜ご飯を食べている時に
「付き合って欲しい。離婚歴があるから不安だよね。全部ちゃんと話すよ」
と言われ、離婚について話してくれた。
結婚生活は3年。33の時に知り合い、34で結婚し、37で離婚。相手は彼より2つ下で友達の紹介で知り合った人。子供はいない。離婚の原因は共同生活の中で価値観の違いがあり、少しずつズレが生じていったが喧嘩をすることもなく口数が減り、ある日息苦しくなった奥様から離婚しようと提案されたと。離婚してからは一人の女性と付き合ったが、相手に好きな人が出来たとのことで別れてそれから2年はフリーだと、詳しく話してくれた。
「もうすれ違いが無いように、お互いに何か不満があったらすぐ言ってわだかまりを作らないようなお付き合いをしたい」
と言ってくれた。
言いたくないこともきちんと話してくれてより魅力的に感じ、何度か出掛ける内に好きな気持ちが加速していったので、勿論OKした。
その日何かあるかな、、とは思ったが誠実な彼なので、その日は家まで送ってくれてそのままお別れ。
それからは休みの日にご飯に行ったり、映画を見たりする関係。体の関係はまだ無し。
付き合って一ヶ月。
その日は彼の家にお邪魔することに。
2人でご飯を作って食べ、借りてきた映画を見て過ごす。
23時頃になり彼が
「ななちゃん。もう23時だ。遅くなっちゃったね、家まで送っていくよ」
と言ってきた。
正直今日は家デートだしあるのではないかと思って、勝負下着を着けていた。大好きだし早く抱いてほしいと思っていた。
なるようになれと思い、彼に抱きつき
「まだ一緒にいたいな」
と言ってみた。
彼はそっと抱き返し耳元で
「そんなことされたら俺もう我慢できないよ」
と囁いた。
私がこくっと頷くと彼はキスをしてきた。
41歳と年齢を重ねた大人のキス。まとわりつくようなねっとりとした濃厚なキス。今までにされたことのないようなとても優しさを感じるキス。
立っていることが出来ずソファーに座り込んでしまった。
体の触り方もソフトタッチでとても心地よい。その日私達は結ばれた。
終わってから彼が
「何か恥ずかしいね。ななちゃんとより深い関係性になれて凄く嬉しい。ありがとね。」
と言ってきた。
どこまでも大人で恥ずかしがってる所も愛おしく感じ益々好きになった。
それから一年付き合い、私が24、彼が42になった時に変化は訪れた。
彼が名古屋への転勤が決まり、私にも一緒に着いてきて欲しいと言われた。
迷ったが私は仕事も楽しく辞めたくなかったので断ってしまった。そして、誠実で優しい彼が好きだったが、私は一年付き合って、もっと刺激的で雑に扱われるような恋を望んでしまっていた。
そして別れを切り出し正式に別れた。
私は恐らく病気なのだろう。もっと雑に扱われるような『都合の良い女』が似合っているのだろう。
彼は誠実で優しくて彼女を大切に扱う、少女漫画に出て来るような爽やかな人。もっとお似合いな人はこの世にたくさんいるだろう。一年で別れて良かった。長年付き合って彼を苦しめることにならなくて。
これが私が最も長く続いた恋愛でした。
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