歴史小説「Two of Us」第1章J‐3
~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第1章 TAMAKO met TADAOKI @Crossroads
J-3
あなた珠子の、侍女の清原(後のマリアの叔母)と二人で道に迷い、それでもこの深い竹林で京の町へ出る策を進む気丈夫さ。それ故、体力的に劣る年配を馬に乗せて自分は歩くという、慮りの心。
与一郎忠興は、いかにもか弱き女性は見向きもしないのに、このように意志の強い女性は、自分でも手を貸せる気がしてならない。
ぃゃこの女性こそ、窮地を助けるべきだ、と確信したのだ。
「そのようなことを。。。京にお着きになられる前に、そこもとの足取りが朽ちまする。倒れるのではと、心配です」
ようやく正気を取り戻した側近に、忠興は何やら耳打ちし、通り過ぎようとするあなたの背中に、再び声をかける。
「今一度、お休みくだされ。
まもなくそれがしの家臣が馬を集めて参ります。そこもとにお使い頂けるまで、こちらでお休みくださってはいかがか、お二方❕❔」
足取りを止め、あなた珠子は初めて笑顔を見せた。
冬近い冷え込みの中、額に汗を浮かべている。懐紙を取り出し、あなたは拭う。
「大変、有り難き事に存じます。
ですが、休んでいては日が暮れます。私は若いのでかまいませんが、うちの侍女が歩き疲れて足をくじいております」
すかさず、馬上の侍女清原が忠興に願い出る。
「どちらのお武家様かは存じませぬが、どうか姫様を、お城へご無事にお届けくださいませんでしょうか。わたくしはそののち休んでから、お城に戻ります」
馬上で態勢を危うくしながら、侍女が深く頭を下げた。
忠興は思案する。
どう考えても、この別嬪の姫様だけ送り届けようとすれば、こちらは善意でもただの連れ去り。現代でいう所の婦女誘拐である。
なんて危なっかしい姫様なんだ❕山賊や落ち武者に見つかったらどうするつもりか❕❔
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