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歴史小説「Two of Us」第3章J‐25

割引あり

~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
    (改訂版は日本語文のみ)
    The Fatal Share for "Las abandonadas"


J-25 ~An Invitation From A President~

「へえ? 誰に?
 だれに源氏物語の製本なんか、見せてもろうたん?」
「小侍従さん」
「どこの?」
「細川さんとこ」
「どこの細川さんや?」
「その、珠子様の細川さん」
「うっそや!いつ?」
「半年前」
「ほんまにあの玉造の細川さんか?」
「ちがう!別邸の方や。
 あっこの玉造のお屋敷は、珠子様のお仕事場なんやて」
「なんや、それ

「〈サラデビジタ〉って言うらしいで」
「サラでびびったぁ!?」
「ちゃう。『サラデビジタ (≒A Solon For Visiters) 』や。
 珠子様が旦那様の家臣やご友人を招いて、細川家の武家信条や主の忠興様が皆に望む事なんかを、キリシタンの教えを交えて、分かり易く説いてくださる場所なんらしいのや。
 ごちそうやお酒や茶の湯をふるまって、歌会も開いて連歌を催したり」

「へえ~。。。それ、どこで訊いたんや?」
「もちろん細川の別邸。くるみ柚餅子がえらいお好きらしいから、月ごとに届けてるんや、うちから。あちらの別邸は忠興様の寝所で、珠子様はこっちの玉造で別々に寝起きしてはるねんて。
 つまり、別居してる妻のもとへくるみ柚餅子や茶菓子持って、通いに来てはるらしい」
「それは、、、いつまでも仲よろしい秘訣かもしらへんなあ。。。」

「いやぁ、、、うちやったら浮気しとらんか心配で無理やわ。
 あんな見目麗しい旦那さん、他の女がほっとかへんよ」
「そうかあ❔そんだけヤキモチ焼きなら、心配ないて。むしろ、好き過ぎるさかい、他の女人に分散しときたいんやと思うぞ?
 未だに別邸に側室置いてるゆう話は、聞かんぞ?」
「そやかて、あんな旦那さんやったら束縛しときたいやん?」
「いやいやいやいや。珠子様は女としての自分だけやなく、なにか自分を役立てる任務がある方が、活き活きしてはるんちゃう?
 めっちゃ色っぽいのにめっちゃ聡明で、すご穏やかそうやのに云う時はバシッとハッキリ告げるお人らしいで?」

「それ誰に訊いたん?」
「わしは、丹後ちりめんの行商はんから聞いて知っとったんや。
 けっこうこの河内屋の船使こうてくれはるさかい」
「それは真実味あるわ。元々は丹後の宮津のお殿様やもん。
 最近は、西国豊前の飛び地に出ずっぱりで、戦ばっかりらしいけどな」「そやそや。あんな奥方もろうたら、心配やし生きて還らなあかんから、勝ち続けるねんな、きっと」
「そやそや。別嬪さん置いて戦で死んでも死に切れんで」
「そやそや」
「そやそや」


キリシタンの洗礼を受けたガラシャ珠子


「くるみ柚餅子は、珠子様のお気に入りなんか?」
「はいな。ゆべし手土産にいそいそ玉造へ通わはるんやて。戦の道具や甲冑は全部別邸に置いて、玉造屋敷では逢瀬するだけや。
 忠興様も大の甘党らしいけどな」
「らしいな。お茶もたしなまれて、【利休七哲】の第一人者やぞ?」
「ほんまにぃ❓あの千利休はんの?」
「そや。利休はんの切腹は豊臣政権の命やけど、古田織部様と細川忠興様だけは、お弔いに駆け付けはったらしいで」

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