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無価値のバトンは親から子、子から孫へと渡される

機能不全家庭に生まれ育った人は、親の無価値感をそっくり背負わされた人です。

責められて、責められて、生き抜いた人です。

もう責められるのは沢山なのです。

親は、その親から責められて育ち、責める、責められる、の風景しか知らないまま、子を持つ親になりました。

そして、我が子を責めることで、自分が抱える無価値感から目を背けるのです。

こうして、親から子、子から孫へと無価値感で出来たバトンは渡されます。

無価値感は、色んなネガティブ感情の種類が有る中でも、人が最も認めることを避けたい感情です。

だから、我が子を犠牲にしてまで、対峙することを避けます。

これまでに投稿した記事の中で度々、「生きづらさをそっくり子供に背負わせる」という表現をしていますが、

それが、子供を犠牲にして無価値感と対峙することを避ける方法です。

無価値感に苛まれる親が子供に、生きづらさを背負わせる場所が機能不全家庭なのですが、

その場所で親が子に生きづらさを背負わせる、ということが、仲々理解して頂く事が難しいとは思っています。

機能不全家庭は一から十まで全部が、健康的な家庭とは真逆の世界なので、万人に通用する説明が見つかりません。

この場合はこうです、というケース別に事例を挙げるしか無い様にも、思っています。

たとえば、無価値感に苛まれるその親は、かつて意気地の無いことを親から責められたとします。

責められ、罵られて、「意気地の無い自分には何の価値も無い」と思い込んだ、とします。

意気地が無いと罵られた、という出来事が、
無価値感というネガティブな感情と結びつき、心の傷=思い込み、を作っています。

やがて親になり、何かに不安を覚えた時、この親は心の傷と対峙したくありません。
意気地の無い自分は、無価値だという思い込みは、どうしても見たくないのです。

この親は、自分が何かに不安を覚えている、という事を認めることが出来ません。
かつて意気地が無い事を責められ、罵られ、心を深く傷つけられたからです。

認めることが出来なくても、不安なのです。
怖いんです。

そのやり場の無い感情を、親は子供が抱いている感情だ、と認識します。
心理学では、この心の動きを「投影」と呼びます。

親自身が感じている不安を、子供が感じている、と変換する訳です。

そして、かつて幼い日に親自身が責められ、罵られた様に、我が子を責めるのです。
「何を怖がってんだ!意気地無しが!」
罵ります。

子供はなんにも怖がっていなくても、親が怖かったり、不安だったら、責められ、罵られます。

子供からしてみたら、怖がってもいないのに「意気地無し!」と罵られるのです。

分別ある成人が、突然罵られたら、「そんなことは無い」と反論するでしょう。

しかし、生まれた時から、親が自分の中の無価値感から目を背ける為の道具、にされ続けた子供は、

只々、傷だらけになり、自分には価値が無い、と強く思い込みます。
深く傷つきます。

自分が認めることが出来ない感情を、子供が抱いている感情、にしてしまうのです。

私はこの心の動きを「親が子供に生きづらさをそっくり背負わせる」と表現しています。

もっとも、これは そっくり背負わせる 仕組みの一つ、更には仕組みの中の一ケースに過ぎず、

機能不全家庭という、健やかな家庭とは真逆の仕組みを持つ場所では、

述べた「投影」だけでは無く、色々な仕組みが混ざり合っています。

たとえば、優れた子供である事を望みながら、自分よりも劣った存在である事を同時に求める様な、「二重拘束」「ダブルバインド」と呼ばれる心の動きや、

たとえば、親が子供からどれだけ求められているか、を確かめる為に、わざと子供にとって望ましく無い事をして、反応を見る「試し行為」「リミットテスティング」等等、

挙げればキリがない程の不健康な仕組みが、混ざり合っているのです。


ただ、言えるのは、そういった不健康な仕組みのどれもが、家庭内の弱者である子供の犠牲の上に成り立っており、

健康的な家庭が子供が巣立つまでの安心、安全の巣であるのに対して、

機能不全家庭は、その隠された最重要事項は親が生きづらさから目を背けることであり、あるのは、不安と危険です。

機能不全家庭に育った人は、苦しいのに、自分は愛されて育ったと、思っていることが殆どです。

今、苦しいと感じているなら、

自分と向き合い、育った環境に安心や安全は有ったのか、見つめてみることも良いのではないでしょうか。

過去を悔やんだり、犯人を探すことではありません。

苦しさの源流を見ることは、

今の自分を腑に落とし、

今の自分を好きになり、

今の自分を受け容れる、

その一歩目なのです。


読んで頂いてありがとうございます。
感謝致します。


伴走者ノゾム





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