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ガリバー"法螺吹き"男爵の冒険

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毎日更新中の創作SF小説を一部加筆修正し、「まとめ読み版」としました。ご覧ください。
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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第二部 北辺の村(後)

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第二部 北辺の村(後)

「北辺の村に連れて来られてから、9ヶ月ほど経ちました。わたくしはシダー氏について行動することを条件に、村の中を見て歩くことができるようになりました。かの人は村のことを案内し、やってはならないことや危険なことは丁寧に教えてくれるので、不自由さは感じませんでした。むしろ久しぶりに広い場所を歩き回ることができることに大きな喜びを感じておりました」

「シダー氏は、若くしてこの村の村長でありました。朝食を

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ガリバー "法螺吹き" 男爵のスケッチ帳よりⅣ

ガリバー "法螺吹き" 男爵のスケッチ帳よりⅣ



"ヤコ"

主に温帯林地域に分布する小型のデク。

四足歩行型であり、四脚の構造と大きさはほぼ変わらない。樹上と地上のどちらも遜色なく活動することが可能。北方熱帯雨林地域に広く分布する小型デク、“シバテン”が樹上活動に特化したデクであることと対照的である。

1人乗りだが運転席は広く、後ろに二人目が乗ることも可能である。

頭部に角を持ち、先端を高速で撃ち出すことができる。銛のように離れた相手

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ガリバー "法螺吹き" 男爵のスケッチ帳よりⅢ

ガリバー "法螺吹き" 男爵のスケッチ帳よりⅢ



"イヅナ"

細長い身体に3対の脚を持った、「中型」に分類されるデク。樹に巻きついたり、枝の間に潜って、滑るように素早く移動することができる。

頭部が上下に開いて人が乗り込めるようになっており、4〜5人まで搭乗可能。2列構成になっており、前列に操縦席と助手席、後列が客席という配置になっている。

胴体内部には空間がある。このデクは内部空間に貨物を搭載し、長距離を運搬する為に運用されることが多

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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第二部 北辺の村(前)

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第二部 北辺の村(前)

「わたくしは空腹を感じて目を覚まし、すっかり眠りに落ちていたことに気付きました。今は何時なのだろう、食べるものはもらえないだろうか、などと考えながらマットレスの上を転がっておりますと、再び鈴の音が聞こえました」

「ドアが開き、青年が入ってきました。後ろに桶を持った男性、大きな葉でできた衝立を持った男性、布の束、何かを包んだ布、などを持った女性がついていて、一緒に部屋に入りました」

「ついてきた

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ガリバー・ロッド男爵のスケッチ帳よりⅡ

ガリバー・ロッド男爵のスケッチ帳よりⅡ



"シバテン"

四本の触腕を持つ、小型のデク。蛸や烏賊のようにしなやかに四肢をうねらせ、木にするすると登ったり、樹々の間を身軽に跳び移ることができる。反面、地上では素早く歩く、走るといったことを不得手としている。

触腕は物を掴むだけではなく、触れているものに微小な根を這わせ、樹々や他のデクから水分や養分を吸収することかできる。

口のように見える部分は操縦席になっており、上下に開いて人が乗り

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ガリバー・ロッド男爵のスケッチ帳より

ガリバー・ロッド男爵のスケッチ帳より

「わたくしはエウロペ神聖帝国から遥か南の海に横たわる暴風域"嵐の帯"を迂回し、安全な南下航路を探すための調査艦隊に加わっておりました」

「しかし"嵐の帯"からは逃れられずに艦は沈没し、わたくしは波に飲まれた末に、未知の世界に流れ着いたのでありました」

「海のように果てなく広がる森、そして手足を持ち歩き回る樹々と、それを操る人びと…」

「わたくしはかの不思議な樹の怪物"デク"に興味を持ち、観察

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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第一部 巨木の森

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険 第一部 巨木の森

これは、毎日少しずつ公開している『ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険』の総集編(一部加筆修正あり)です。

ーーエウロペ神聖帝国、海軍査問会議次席書記、アイザック・ムーア記。

海軍南方艦隊所属、ガリバー・ロッド男爵の証言より。

「わたくしは南方艦隊6番艦、"白星号"に下士官として乗船し、南東諸島の探検任務に就きました。出航後2か月程で激しい雷雨と強風に遭い、やがて高波に呑まれて白星号は沈没した

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