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140字小説

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140字以内で書く超短編。
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2023年4月の記事一覧

【140字小説】良い子の基準

「俺の彼女、めちゃめちゃいい子だよ」
遠距離恋愛中だと言う友人は、熱っぽくそう語る。
月イチの会える日を楽しみにしているそうだ。
「どの辺がいい子なんだ?」
聞くと、友人は自慢げに言う。
「自分の間違いを認められる子なんだ。今牢獄にいるのも、ちゃんと自首したからで……」

【140字小説】未来のファンからの贈り物

現れた女性は、未来から来た僕の小説のファンだと言う。
しかし私は小説を書いたこともないし、書く気もない。
そう言うと女性は数冊の本を僕に渡した。
奥付には私の名前、写真、経歴が載っている。
握手をすると女性は本を置いて帰って行った。
とんだ幸運だ。
これを出版するだけで、私は小説家になれる。

【140字小説】独占欲

先に気になっていると言えば、貴女は優しいから諦めてくれる。
そして別れたあとも気を使って、距離を置いていてくれる。
酷いことをしている自覚はあるけれど、他に思いつかないのだ。
密かに人気のある貴女を、誰にも取られない方法なんて。

【140字小説】仮面夫婦とエイプリルフール

エイプリルフールだからといってわざわざ嘘をつく必要なんかない。
仮面夫婦の僕たちにとっては、日常のすべてが嘘なのだから。
だけど、今朝はちょっとしたいたずら心が起きたので「愛してるよ」と言ってみた。
間髪入れずに「私も」と返事がある。
彼女はニヤニヤと笑っていた。