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生まれつきで、自然に治らないから。

見えないから分かりづらい


生まれつき現れる症状の中には、自然に治っていかない上に 完治させる方法が見つかっていないものもあったりします。


自閉症スペクトラムやADHDに代表される発達障害もそうなのですが、

採血したりエコーやレントゲンで検査しても反映されない心の病気と付き合うのは、想像以上に大変です。


何せ いつ調子が良くなるのか誰にも予測できないのが一番つらいです。


健康である前提で先々の計画を立てても、
その通りにいかない経験ばかりしてきました。


協力してくれる人たちに無駄なストレスを与える意味で申し訳ない気持ちになるし、
頭で思い描いたように動けないストレスが自分に生まれてしまうという負の連鎖が待っていました。


さらに、休職を選んだ際には、
「心身の調子が良くなったと思えたら仕事復帰を考えるべき」という 漠然にも程があるアドバイスしかもらえませんでした。
(他の病気でも症状の出方や治り方は人それぞれだから、こういう風にしか言えなかったんだと、今になって理解できるようになりましたが。)


しかし、当時の僕はというと、

どういう心境になれば仕事復帰したらいいのか想像することも難しい上に、短期的な目標を自分で立てていくようにも言われちゃって…。
自宅で休んでいる間も仕事している時と同様にストレスを溜めこむ結果になりました。



見えないものが見えるテストを受けて


どんなに休んでも心身の調子が戻らない中、テスト形式のものを色々受けに行きました。


大きく分けて3種類の検査を受けたのですが、
いずれも その時の心身の状態を機械的に判定してくれるものでした。


  ①WAIS-Ⅲ

一つ目は、「WAIS-Ⅲ」という知能検査です。
(予習しない方が能力のばらつきが出やすいようなので、どういう質問をされたかは伏せておきます。)


自閉症スペクトラムやADHDの特徴が強く現れた結果が出て、
初めて僕は 生まれつき(精神)障がい者なんだ ということを教わりました。


"報告書"と呼ばれる文書で受け取ったのですが、
そこには各分野の知能指数(IQ)と、平均と比較した際の位置付け
それから 検査中の仕草についても書かれていました。


その内容を見た医師やカウンセラーは、

"平均的なものもあれば、それよりも随分劣っているものもあったり、かたや特に高い数値が出た分野もある" という風に、
能力のばらつきが非常に大きいという意味で 自閉症スペクトラムの特徴に当てはまっているし、

"検査中 じっとしていられない素振りを見せていて、ADHDの特徴にも合う"という結論に達した、という経緯を説明してくれました。


特に自閉症スペクトラムに関しては、同じ病名で診断されていても、

得意な分野やそうでない分野が人によって異なるし、平均と比べてどのくらい優れているのか or 劣っているのかも違ってくるものです。


その人単位で陥りやすい悩みを客観的に理解してもらうのがこの検査の意義、というわけです。


  ②GATB(一般職業適性検査)

二つ目は、「GATB(ギャトブ)」とも略される、一般職業適性検査です。
※General Aptitude Test Battery の頭文字を並べてこう呼ばれています。


障害者職業センターで定期的に行われている検査で、精神科の紹介もあって受けてみました。


ここでも分野別の能力のばらつきが大きく出ました。


職業ごとの得意・苦手の判定はもちろんのこと、疲れやすい作業も指摘してくれているのが この検査の特徴です。


僕の場合は、
努力と疲れと報酬が釣り合わない職業がたくさん見つかった上に、
コンビニ店員や整備士も、その範囲に入っていて驚きでした。


1日4時間、週2回 コンビニのアルバイトを、専門学校に通っていた2年間続けていたのですが、

それ以上の時間働いたかのような疲れを、毎回帰宅してから感じていました。

慣れで徐々に疲れにくくなるような気分になってくれない…。
でも、日々新しいことを学んでいるわけだし、皆家に帰ったら疲れているのは当然だし…。

先輩からの言葉でも、自問自答しても、月日が経っても、この違和感は拭えませんでした。


しかし この検査を受けて、

今まで経験してきた職業が 得意とは到底言えないレベル、それも、一生懸命の努力や工夫で埋められない差であることが初めて分かりました。


大失敗することなく過ごせた仕事場であっても、ひどい疲れになるような作業が含まれていることに気づいた僕は、

完治しない自閉症スペクトラムの特徴を踏まえて、

自分を健常者として扱うのはもうやめようと決心しました。


  ③心理検査

そして もう一つは、心理検査です。

この検査は、仕事やプライベートも含めた 日常生活における行動傾向を判定するものです。


僕の場合はこの検査で、長い時間じっとしていられないADHDの特徴と共に、コミュニケーションの苦手さ・不器用さが浮き彫りになりました。


そして、対人関係での失敗体験をひたすら積み重ねてきたことで、人と関わること自体避けようとしてしまっている心境が見えてきました。



"なおらないもの"との折り合い


前述した3つの検査によって、
一生かけても完治しないものとか、
どれだけ頑張っても直らない弱点がたくさん見えてきました。


その上で精神科の通院とカウンセリングを続け、今、ようやく
僕自身に合っている職業や生活のしかたが身についてきました。



健常者ではない診断を受けてからのこの数年、
試行錯誤しながら僕自身の能力を確かめてきました。


楽にできる範囲とそうでないものの区別ができるようになってきたと同時に、次の行動が心と体にどういう影響をもたらすか 前もって考えられるようにもなりました。

実際 その予測通りに反応する場面が増えてきました。

心と体の歩幅が徐々に合ってきたのが分かって、
感情の折り合いも随分つきやすくなりました。



しかし、感情や態度が穏やかになってきたからといって、
自閉症スペクトラムやADHDの典型的な症状が消えていっているわけではありません。


苦手な作業や環境においては、いわゆる「機能不全」の状態に陥って、
ありのままの自分で居られなくなる傾向は相変わらずです。


就労支援の事業所などで苦手分野を一つでも多く克服しようとしたのですが、

結局は "強制的に矯正"しようとしているだけで、
作業効率がある一定のレベルで上がらなくなるし、
ひどい疲れもやってくるしでうまくいきませんでした。


「一般就労のためには、苦手なことは絶対に直しておかないといけない」という考え方は、少なくとも僕には通用しなかった事実を分かっていただきたいです。


苦手で直らない部分を表現し理解してもらって、共感し補い合っていく雰囲気を作り続けてもらう必要があるように感じました。


また、精神科で処方してもらえる薬はどんな人にも同じように効くわけではないと医師から聞いているので、そういった薬に頼らない生活を心がけてきました。
(薬やアルコールのおかげで良い思いをすると、手放す覚悟が持てなくなると思ってきました。)


そのために必要なことは、
自分で自分の特徴を正確に知り、覚え、常に思い出せるようにしておく姿勢です。


分かっておくべきことが分かっていないために 予測していなかった状況に接し、感情のコントロールがきかなくなる悪循環に陥るわけだから、ストレスがたまりやすいのは当たり前な流れをようやく理解できるようになりました。


心と体のコントロールがきかない毎日で、相手に気を配るのがうまくいかず 信頼関係が築けなかった経験をたくさんしてきました。

無意識に発した言動によって 心配してくれた相手の機嫌をも損ねてしまったし、亀裂が入った関係を元通りにする気持ちも湧かなかったし、
「話しかけてこないで!」と言わんばかりにコミュニケーションを避ける態度ばかり選んで、朝8時に登校してから夕方5時に下校するまで一言も発しなかった日もありました。


今でも僕は、自分自身の特徴をつかみきれていません。

それも、放っておいて解消する問題ではないため、忘れた頃に同じ問題が壁のように現れ 自分だけ閉じこめられたような思いをたくさんしてきました。


生きる上で毎日のように立ちふさがる問題なのであれば、どのように改善すればいいか考え続けると共に、その経過を書き残す必要があるという結論に至りました。


履歴書を書くつもりで始めたこのnoteも、気がつけば30近くの記事ができました。

皆が同じ経験をしないから 僕自身で覚えておかないといけないことがこんなにたくさんあるとは、僕も思っていませんでした。


生まれつきでなおらない苦しみばかりではなく、
生まれつきだからなおす意味がない 開き直りの感情も持っていることが分かってきました。


覚える癖だけは一生身につけていたいと心に決めた、最近の僕です。

オーノ

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