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NAK &ひーちゃん
2023年5月29日 15:14
【時間⑴】 炎の変幻自在な動きに、魂の波動が共鳴する。この波動が身体のあらゆる組織を振動させると、私は物質世界からの解放を感じて恍惚となる。 本当は、休日のたびにひとりキャンプがしたいのだけれど、女性のひとりキャンプは危険がつきものだ。危険を回避するために、キャンプ場で人の多い場所を選ぶなど本末転倒なので、休日のたびにとはいかないけれど、私はグランピングを利用している。 「これは夜にお勧
2023年6月2日 13:11
【時間⑵】 「私も焦燥感に駆られることはあるけれど、周りの人を見ることはないなー。」 「えー、そうなの? 気にならない? 耀(ひかり)の仕事なんて、すごい人がたくさんいそうじゃない。」 「だからかな。すごい人がたくさんいすぎて、そんなのいちいち見てたら、何にも手につかなくなっちゃうよ。」 焚火がパチパチと心地よい音を立てる。 「同じくらいのレベルの人もたくさんいるけれど、そんな
2023年6月9日 16:07
【時間⑷】 「この世界の仕組みねぇ。宇宙の時間も?」 栞はよくわからないという風に首を傾けた。 「うん。人間が関わる限り、そこには刻まれた時間があるんじゃないかな。宇宙ロケットにしたって刻まれた時間がなければ、きっと飛ばせないよね。 宇宙に限らず、人間社会に必要なさまざまな技術は、刻まれた時間というツールを使って生み出されているんだろうから、道具としてはね、刻まれた時間は必要なんだ
2023年6月12日 13:38
【時間⑸】 「刻まれた時間から自分を守るって、大切なことだよね。」 私がぼそっと小さく呟くと、栞が 「自分を守る?」と身を乗り出してきた。 「うん。刻まれた時間に身を任せていると、自分が自分じゃなくなっていく気がしてこない? もちろん、刻まれた時間に合わせなければならないこともあるけれど、それだけに始終しているとね。」 栞は大きく目を見開くと、こくりと深く頷き、早口で喋り始