連載小説 魂の織りなす旅路#39/時間⑷
【時間⑷】
「この世界の仕組みねぇ。宇宙の時間も?」
栞はよくわからないという風に首を傾けた。
「うん。人間が関わる限り、そこには刻まれた時間があるんじゃないかな。宇宙ロケットにしたって刻まれた時間がなければ、きっと飛ばせないよね。
宇宙に限らず、人間社会に必要なさまざまな技術は、刻まれた時間というツールを使って生み出されているんだろうから、道具としてはね、刻まれた時間は必要なんだろうってわかるの。
でもね、私はそもそも時間はないと思っているから、そこに自分の人生の、一歩一歩の歩みっていうのかな、それを結びつけたいとは思わないんだよね。」
「時間はない、ねぇ。よくわかんないなぁ。」
栞は唇を突き出す。
「刻まない時間っていったらわかるかなぁ。大きくたゆたうような時間らしきものはあると思うんだよね。でも、それは人間が考える、刻まれた時間とは別物っていうか。」
栞は合点がいったというように頷いた。
「それならなんとなくわかる気がする。その時々によって、感じられる時間の長さって違うもんね。私の焦燥に駆られた時間の尺度と、この星空が持つ時間の尺度が同じだなんて思えないしねぇ。大きくたゆたう時間かぁ。いいなぁ。私もゆったりとたゆたいたいよ。」
栞は憧れるような目つきで星空を見上げ、ため息をついた。
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