女性センターを起点としたジェンダー研究に向けて
寄稿:成定洋子さん(沖縄大学経法商学部教授)
第16期・那覇市男女共同参画会議の委員7人の皆さまをご紹介するインタビュー企画「ハイタイ ハイサイ 参画委員です!」。ジェンダーや労働に関する問題に詳しい成定洋子さん(沖縄大学経法商学部経法商学科教授)に、ご寄稿いただきました。
【プロフィール】沖縄大学経法商学部経法商学科地域社会コース教授、及び沖縄大学大学院現代沖縄研究科沖縄・東アジア地域研究専攻教員。専門は社会人類学・文化研究、ジェンダー・セクシュアリティ論。戦後沖縄をめぐる社会・文化変容や労働とジェンダーに関する研究、労働教育研究などに取り組む。エジンバラ大学大学院政治経済科学研究科社会人類学専攻博士課程修了(社会人類学PhD)。
◆戦後沖縄の労働やジェンダーを探究
戦後の沖縄をめぐる社会や文化変容、労働とジェンダーに関する研究などに取り組んでいます。戦後沖縄における労働・雇用のあり方やその政治的・文化的・社会的な意味は、米国占領を経て、在沖米軍基地の変容とともに大きく変化してきました。
特に、沖縄県の女性の労働・働き方は、全国平均と比して、女性の労働力率におけるM字曲線の谷の部分が浅く、県全体の平均賃金の低さゆえに、男女の賃金格差は比較的小さいものの、勤続年数は短いなど、本土と異なる複雑な特徴や背景を持っています。
そのため、①戦後沖縄において、女性たちはどのような働き方や労働を経験してきたのか、 ②女性たちの労働は、どのような政治的・社会的・文化的な意味や役割を持ってきたのか、 ③働く女性たちやその働き方は、誰によって、どのようにまなざされてきたのか、―などについて、現代の沖縄における労働・雇用の現状や課題、可能性と接合させながら考えていくことができたらと思っています。
◆研究の道を歩み始めたきっかけ
20年前、沖縄県女性総合センター(現・男女共同参画センター)「てぃるる」で嘱託職員として勤務していたときの学びや経験、人的ネットワークが、現在に至る自分のジェンダー研究における重要な核や指針となってきました。
「てぃるる」の日常業務や県内外の女性センターのネットワークを通して、①ジェンダー問題における普遍性と個別の問題を共に見ていく必要性、②ジェンダー問題が女性の労働・雇用のあり方に深く根差していること、③ジェンダーなどに関わる法制度の問題や限界・矛盾をどのように考えていくのか、―ということなどについて、いろいろな形や文脈で学んだり、先輩方や同僚らと共に考えたりできたことは、自分のジェンダー研究にとって、また自分自身が生きていく上で、かけがえのない過程であったと大変有難く思っています。
◆那覇市男女共同参画会議の委員として
男女共同参画会議は、委員それぞれの専門や立場からいろいろな意見や疑問を提起することで、ジェンダーやセクシュアリティについての見えにくい問題や新たな課題が認識・共有される貴重な場であると思います。
5月に開かれた2022年度第1回会議では、現行の「那覇市パートナーシップ登録」制度を、「那覇市パートナーシップ・ファミリーシップ登録」制度に変更する案について審議されました。パートナー同士の関係性に限定されていたパートナーシップ登録制度を、パートナーシップ関係にある二人と同居する子どもや親などの近親者を「家族」として新たに登録するためです。
各委員からは、①事実婚もパートナーシップ登録制度の対象に含めることは可能か、 ②パートナーシップ登録を解消する際、登録者双方の合意を必要としない方がいい、 ③パートナーシップ登録を解消する際、登録者の登録番号を市のHPで公表しないようにしてほしい、 ④セクシュアル・マイノリティがSNSなどの被害対象とならないよう配慮する必要がある、―などの意見や声が挙げられました。
国や自治体が「パートナーシップ」や「家族」を位置づけることの意味や影響、課題などが改めて浮き彫りにされたように思いました。
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