マイクロノベル集 227「いらっしゃいませ」
No.1325
「一枚足りな～い」目の周りにはまるでタヌキのようなクマ。「あと十円は、一円玉で出してもいいかな？」その財布には、たくさんの葉っぱが入っている。出された小銭は獣臭くて、打ち合わせても音がしない。これはタヌキだろうな。今夜は寒いし、鍋にするか。
No.1326
頭上に輪を持つ人物が、アルコール度数が妙に高いチューハイをレジに置いた。「将来の不安が一つ減ったので、本日はお祝いなのです」幸せそうですね。年齢確認お願いします。「こちらで足りますか？」光が溢れ、天使の羽根が一枚落ちた。店長、足りますよね？
No.1327
タッチ決済の種類は数あれど、かの火焔山の火を収めた芭蕉扇は初めて見た。「失敬な。これは大天狗の大うちわである。神通力を宿し、1327円の決済など思いのまま！」ワオン。あ、本当にできた。でも、この同じ商品名が繰り返し書かれたレシートはなんだ？
No.1328
一つ売れると、立て続けに同じ商品が動くことがある。「ＵＦＯのぬいぐるみはありますか？」あー、ないですねー。さっき同じことを聞いてきたお客さんがいたけど。「今から仕事で必要なんです！」その話、ちょっと気になるけど、ないものはないですねー。
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