永易至文

台湾のシニアゲイたちのインタビュー集『レインボー熟年バス(彩虹熟年巴士)』(台湾同志ホ…

永易至文

台湾のシニアゲイたちのインタビュー集『レインボー熟年バス(彩虹熟年巴士)』(台湾同志ホットライン協会編著、2010年、基本書房、台北)の私訳を掲載するページです。翻訳者は54歳の中年ゲイ、NPO法人パープル・ハンズ事務局長。中国文学科卒業。

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに 『レインボー熟年バス』解題

 この「note」を使って、台湾のシニアゲイ12人のインタビュー集『レインボー熟年バス(彩虹熟年巴士)』という本の私訳を掲載してみようと思います。  この本は、台湾のもっとも大きな性的マイノリティ当事者団体である「台湾同志ホットライン協会」のメンバーが、12人のシニアゲイたちに行なったインタビュー(をもとに書いた12編のエッセー)と序章が収められています。発行は2010年、台北の基本書房から出版されました。  私は日本のゲイ当事者として、1980年代の後半よりコミュニティ

    • 第5話 花売り仙人の歌と「恋」

      原題:世間を放浪、歌こそ喜びーー玉蘭仙子の口では言いあらわせないほどの人生  ●作者紹介 喀飛  1966年生まれ。26歳でマスコミ業界へ入る。29歳、縁あってゲイ運動へ参加し、32歳でホットライン協会の創立に参画。40歳で巨大で圧力的な新聞社を離れる。  ちょっと振り返ってみると、二つの仕事(本業とゲイ運動)、二つの関係に2つの短い恋愛が加わって、30歳代の10年は、こうやって過ぎていった。中年の入り口でさまよっている。  2006年、高齢セクマイ班に加入。高齢ゲイの先輩

      • 第8話 酒場人生からいま60歳の警備員へ

        原題:酒の国の人生で、みんなを笑わせる----「案内人」の阿傑 ●作者紹介 喚圏狼 この世に暮らしながらも自分が身を置く時代にまったく相入れないと感じている民国70年代(訳注:ほぼ1980年代)生まれ。大学時代に社会の現実に介入すると公言する文芸サークルを創設し、いくつか小説の賞を得たり、ルポルタージュを書いたりしたことがあり、書くことは、長くてかつ歩ききらなければならない道だと覚悟した。ヒューマニズムと愛情を信じ、この一生が最後には退屈にならないよう、バタバタと過ぎ去るこ

        • 第7話 サウナと純愛とHIV

          原題「振り向けばでこぼこ道、涙そうそう----黒美人の曲折人生」  ●作者紹介 小杜  まもなく30歳、而立の年になろうとするのに、あいかわらずあるときは積極的に、あるときはサボり気味に、人生の方向を探し求めたり、決まりきった日々とハッピーライフのなかで揺れ動いたり、現実と理想のなかで思索や懊悩を重ねている。老いることや死に対する強烈な感覚は、ここ数年のあいだの二つの老年女性(祖母とすでに世を去った愛犬)にまつわる体験から来ており、歳月のなかで人が実際に老いて行く姿、そして

        • 固定された記事

        はじめに 『レインボー熟年バス』解題

          第6話 用心棒稼業 許さんのセックス哲学

          原題:恋する少年「おじさん」――花園で自在にチンポ触りする名人 許兄貴 ●作者紹介 yoyo 大学時代にはまだ布団のなかでこっそりゲイラジオを聴き、唐山書店(訳注:著名な独立系書店。こちらも参照)で香港や大陸のゲイの本を買い、自分は孤立無援だと思っていたのに、結果、今は意外にもこの本に参加している。高校や大学の親友があとでおなじくゲイだということがわかり、いまは会社でもおたがいに知っているゲイの友人がいる。人生は本当にレディ・ガガのスタイル同様、予想がつかないものだ!  

          第6話 用心棒稼業 許さんのセックス哲学

          第4話 優雅な結婚拒否者

          原題「なお風雅を残す優雅な姿――黒猫姨が歩んだ、結婚拒否の自由な人生」 ●作者紹介 家新 高校で輔導教師(訳注:学校生活からライフコースまで、さまざまなことのガイダンスをする特別教員。スクールカウンセラーと訳されることが多いが、心理面に止まらない)の助けでホットラインを知り、大学では社会学でジェンダー論に接し、宜蘭で学生時代を送った関係なのか、台北については、ずっとそのころLGBTカルチャーがいろいろ多彩な場所だと思ってきた。そのままジェンダー論の大学院へ進み、ホットライン

          第4話 優雅な結婚拒否者

          第3話 ハッテン映画館のワン館長

          原題「軽快に飛び舞う君子は80歳――紅楼の映画館長 王公公のゲイ生涯」  ●作者紹介 兆慶  1977年、台北生まれ。年をとったなと思うことのいいところは、プライドをもってすてきなナツメロを歌い、自分より年若の彼氏に聞かせ、彼に「あの年代」がどんなに美しく、いまの音楽がどんなにクソかをわからせ、年寄り風を吹かせる楽しみをたっぷり享受できることだ。なんにでも興味があるということは、結局なにに対しても興味がないということだ。語られたものはやはり、しかと心に刻んで忘れない感情であ

          第3話 ハッテン映画館のワン館長

          第2話 田舎に帰ったヘンなおじさん

          原題「台北に私の人生はないーー阿昌伯の孤独」  ●作者紹介 智偉  老いは恐れないが、死はとても怖い。だから小さなときから悪夢といえば死だった。死に対して恐怖を持ち続けたせいで、逆に死に近づきたいと思った。だから、老人とおしゃべりするのがとても好きだ。ただし、そうしたお年寄りが、死が怖いと言うのを聞いたことはない。  今年33歳、現在のところまだ自分が老いているとは思わない。台湾男性の平均寿命は73歳だから、だいたい37歳の誕生日の日が来てやっと半分が過ぎたことになる。そう

          第2話 田舎に帰ったヘンなおじさん

          第1話 ゲイサウナのおっかさん「阿嬤(アマ)」

          原題「歳月の尻尾をつかみ、勇敢に自分になろう――ますます人生をしっかりつかむ「阿嬤」」 (注:アマはばあちゃんの意味。朝鮮語オモニに由来とも)  ●作者紹介 勇可  勇可。民国50年代前半(1960年代前半)生まれ、一人っ子で、二度の自分を騙し人をも騙すような恋愛をしたあと(訳註:無理にした女性との恋愛を指すか)、30歳の誕生日、自分を生きていこうと決心した。ゲイのあいだであれこれ探し求める機会もないうちに、いまのパートナーとの17年にわたる親密な関係に入っていまに至ってい

          第1話 ゲイサウナのおっかさん「阿嬤(アマ)」

          序章 シニアセクマイ探訪ことはじめ

          原題 虹の道ーー高齢セクマイが若かったときを振り返る 鄭 智偉(台湾同志ホットライン協会事務局長)  2005年4月の初め、ボランティアの阿克(アーコー)がぴょんぴょん飛びながら私のところへ来て、ホットライン協会でちょっと高齢セクマイ(老年同志)のための活動ができないかなと聞いた。私は彼に興味のあるボランティアを集めていっしょにやったらどうと勧めたところ、思いもよらず多くの男女セクマイのボランティアが興味をもった。もともとみんな「老い」ということを考えていたのだ。ある人は

          序章 シニアセクマイ探訪ことはじめ

          はじめに2 ゲイ雑誌『サムソン』での本書紹介

          (掲載:『サムソン』2019年12月号、19年10月22日発売 永易「ゲイのあんしん老いじたく」61回)  台湾の「老ゲイ」を追った本  中国語読めるんでしょ? そういって一応、中国文学科卒の私に知人がくれた台湾土産の本は、『レインボー熟年バス』。台湾のシニアゲイのインタビュー集です。編者の「台湾同志ホットライン協会」は電話相談のほか、近年は同性婚運動を牽引するなど大きな活動が目に入りますが、2005年に「老ゲイ班」を作ってシニアゲイについての活動に取り組み始めていました。

          はじめに2 ゲイ雑誌『サムソン』での本書紹介