永山俊明

永山俊明

最近の記事

ゴジラ×コング 新たなる帝国―ネタバレあり感想

まず一言…痛快でした! 前作同様頭を空っぽにして楽しめる作品ですが、なかなかディテイルがよくできているので、それらを含めてレビューしていきたいと思います。ネタバレの遠慮はしていません。なお、字幕版です(前作は吹替でした)。 厄介な免疫モンスターバースにおけるゴジラはさながら地球の免疫、白血球みたいなものだ。世界のバランスを均衡に保つため、怪獣(タイタン)を駆逐する。免疫反応が発熱を引き起こすように、周りの被害など顧みない。頼るにしても気まぐれすぎるが、それでも彼が味方にな

    • 苛政は虎よりも猛し、戦争はゴジラよりも恐ろしーゴジラ-1.0感想

      少し前に「ゴジラ-1.0」を見た。監督がクセの強い山﨑貴さんなので身構えたが、素直に良くできた名作だと感心した。 記憶頼みなので間違っている点はあるだろうが、ようやく気持ちが落ち着いたので、同作の感想と、何が良かったかを書きたい。 ネタバレに関しては細心の注意を払ったつもりだが、楽しみが減ってしまうかもしれないので、敏感な方は注意して欲しい。 極めてきちっとした構成本作のストーリーは実に論理的だ。例えばゴジラの弱点をきっちり前振りしたうえで後のシーンでそれが突破口になる。今

      • 阿部寛さんの事務所設立に思うこと。

        オフィス茂田の閉鎖に伴い、阿部寛さんが個人事務所「オフィスA」を立ち上げた。僕も阿部さんのファンで、その(古めかしさで話題になる)ホームページが1番のファン(とされる誰か)の愛の産物であり、それを大事にする阿部さんの人柄や優しさが大好きだから、こんな記事を書いたものだ。 そして今回の発表も、かのホームページに阿部さん直筆でなされた。さすがである。彼の姿勢は、ある人物と比べることで、鮮やかになる。 元同僚・名取裕子さんと比べるとそう、同じくオフィス茂田で活動をしていた名取裕

        • 虎の威を借る狐にも、良し悪しはある

          虎の威を借る狐とは「権力者の威光を盾に威張る小物」を表す諺だが、この狐には有能なものがいるのはご存知だろうか? 虎が最大限の効果を発揮できるように下準備ができる狐である。すなわち、映画監督に対するプロデューサー、タレントにとってのマネージャーや芸能事務所だ。 狐の人種はそれ自体では何も生み出せない。しかし優れた狐は虎の不安の種を除き、才能を余すとこなく引き出せる。自らそれができる虎は希少種である。 しかし、自らが虎の威を借る狐であることを忘れてしまう狐は多い。挙げ句の果てには

        ゴジラ×コング 新たなる帝国―ネタバレあり感想

          タクティクスオウガリボーン戦闘関連仕様の暫定まとめ

          「タクティクスオウガ リボーン」では、「運命の輪」から仕様がブラッシュアップされており、いずれのバージョンを遊んだプレイヤーでも新鮮な気持ちでプレイすることができるようになっている。その中で感じたり調べた仕様をピックアップしてみる。 パリィ&カウンターユニットのスキルではなく武器の追加効果として設定されている。棍を除く片手近接武器はパリィ、一部の棍を除く両手武器はカウンターが設定されている。後半の武器になるほど性能が高くなるので、攻撃属性よりも優先した方がいいかも(どうせ途

          タクティクスオウガリボーン戦闘関連仕様の暫定まとめ

          竹中直人さんの役者論は人生最大の衝撃かもしれない

          ちょうど7年前に読んだこのインタビューは衝撃的だった。何せあの日本屈指の俳優がここまで謙虚で控えめだったなんて。僭越ながらこのインタビューを振り返り、自分にどのような影響があったかを話させていただく。 竹中さんは何を話したか役がわからない中で演技するというスタイルは興味深い。逆に言えばそれができるという時点で竹中さんの非凡さを物語っている。「セリフなんてわかんない」で演技に臨むというのは、そもそもセリフを一切頭に入れず、カンペを用いることで刹那の空気を演技に取り入れたマーロ

          竹中直人さんの役者論は人生最大の衝撃かもしれない

          夢のFM音源

          さて、ついに筆者が作りたいFM音源の話をする時が来た。前回の記事で私はこう述べた。 それが何なのか、身もふたもなく説明してしまおう。オペレータの個数だ。最初から6である必要はないし、より増えてもいいはずだ。 つまり、オペレータが2つあるとき(初期化時はFM音源としての最低限の機能として、キャリア―モジュレータのペアとする)は低CPU消費の代償としてシンプルなサウンドとなる。ユーザがオペレータを足すことで音色は賑やかなものとなっていく。ただしCPUの負荷はどんどん増えていく

          夢のFM音源

          既存のFM音源はここがおかしい!

          先日から複数記事に渡って、DX7(そして既存のすべてのFM音源)の問題点について議論してきた。筆者はFM音源が難しいのはDX7で示されたサウンドデザイン手法がFM音源の本質に合っていないからだと確信している。他のFM音源はその先駆者の軌跡を追っているに過ぎない。そしてその問題点の解決策も頭にある。それは後の記事で明らかにしよう。いつになるかは分からないが、このコンセプトをもとに勉強中のC++を使ってプラグインを作成、販売したいと思っている。むしろ誰かがアイディアを盗んでいただ

          既存のFM音源はここがおかしい!

          自分だったらDX7をこんな風に作ったのになあ

          DX7はシンセサイザー界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めた革新的な名器である。しかし、それ故に粗が多いのも事実。もし40年前(当時は生まれてすらいなかったけど)にYAMAHAに勤めていて、DX7の設計に携われる栄誉を与えられたらどうするかを考えた。 数値入力はテンキーに数値入力がスライダーと増減ボタンのみというのは、正確な制御がかなり困難である。今だったらジョグダイアルとテンキーはシンセの常備品。名前入力の困難さもテンキーに携帯のように文字をフル方式で解決。

          自分だったらDX7をこんな風に作ったのになあ

          FM音源のモジュレータ共有が残念な音色になる理由を簡単な数学で説明する

          ヤマハの名器DX7に代表されるFM音源に搭載されている「アルゴリズム」(解法が無い時点でアルゴリズムと呼べないと思うのでカッコ書きにしてある)には様々なものがある。この「アルゴリズム」には問題点がいくつかある。並び順に規則性が全くなく、1番のアルゴリズムが妙に使いづらいなど、配置に検討の余地がある。オペレータのスワップができないので、音を作り替える手間がかかるのもかなり面倒だ。さらに言えば、いきなり6オペレータという選択肢を見せられるので、ユーザーは困惑するし、余計なオペレー

          FM音源のモジュレータ共有が残念な音色になる理由を簡単な数学で説明する

          「あくタイプ」の呼び名は捨て去るべきである

          (2022/9/1) タイトルを変えることにした。炎上商法を狙った過激なタイトルにしても、誰もこの深刻な動物虐待に気を留めないからだ。おそらくみんなタイトルだけでスルー確定しているのだろう。それよりも自分の意志を明確に表すべきだと思った。 TL; DR「あくタイプ」という呼称には人間の偏見が多分に詰まっている。 そう呼ぶことは人間の当該ポケモンに対する認知を著しく遅らせ、ポケモンをさらなる非行に駆り立てる。 このような差別的名称を有名シリーズが使うことで、現実世界のいじ

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          「ギャラリーフェイク」に見る、「なぞらえる物語」の魅力

          筆者は「ギャラリーフェイク」が好きだ。絵画に対する深い造詣を生かしたストーリーを、細野不二彦先生はリラックスした絵柄で描き出している。その魅力を辿ると、「美味しんぼ」と後期手塚治虫作品の長所を見事に融合している点に気づいた。そしてそれを表現する言葉として「なぞらえる物語」を提案したい。 美味しんぼの掘り下げ力、あるいはビッグコミック的インテリジェンスやはり掲載誌であるビッグコミックスピリッツの先輩漫画である「美味しんぼ」の影響は計り知れないだろう。同作はバブル期以降の消費社

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          機動戦士ガンダム F91のエンディングに見る、富野由悠季監督の技術への祈りとニュータイプ観の変容

          「機動戦士ガンダム F91」は1991年に公開されたガンダムのオリジナル映画だ。当時企画されていたTVシリーズのプロローグとして制作され(その為終わりに「THIS IS ONLY THE BEGINNING.」というテロップが表示される)、シーブック・アノーの戦いがスピード感を持って展開される。ストーリーの情報量を畳みかけつつ飽和寸前で見せていくのは富野由悠季の真骨頂だ。 シーブックの成長劇を軸に、貴族主義などの題材を惜しげ無く盛り込んだ濃厚なドラマや、大河原邦男さんによる

          機動戦士ガンダム F91のエンディングに見る、富野由悠季監督の技術への祈りとニュータイプ観の変容

          音楽的な敗北…山下達郎さんのサブスク反対論を考える

          今年6月、山下達郎さんがインタビューでサブスクリプション解禁をしない旨を述べた。残念ながら元記事が消えてしまったのでWebArchiveからのリンクを貼っておく。Yahoo! ニュースオリジナル記事であり、内容としても達郎さんのキャリアや考え方がよく分かるものなので取り下げは勿体ない。 この発言を私は奇異に思った。理由として曖昧に感じたのだ。まるで達郎さんの中のサブスクへの違和感がうまく言語化されず、ふわっとした業界批判に終わってしまっているような気がした。「自由に曲をばら

          音楽的な敗北…山下達郎さんのサブスク反対論を考える

          野党は自民党という「太陽」に照らされた「月」である…今の政治の問題点

          メイン画像は「サイタマ!」の元ネタでおなじみの自民党のシンボルである。今回の題材を語るのにこれほど適したものはない。 日本に政治不信が芽生えて久しい。しかし、それはなぜ起こっているのか。多くの人は政策に原因を求める(もちろんそれは大事だ)が、そもそもイデオロギー問題になってくるので判断は人それぞれだ。それよりも、自分には日本政治は政策以前の問題を抱えているように見える。以下、炎上の種になりやすい政策の是非について極力議論しない形で政党について考えてみる。 与党の独り相撲自

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          「じゃない人」の重要性:音楽グループ内ダイヴァーシティ醸成を考える

          音楽グループ(バンドなりユニットなり)の楽曲を考えるとき、我々はメインコンポーザー(作曲家)に目が行きがちだ。クリエイティヴの泉ともいえる彼らは、強烈なカリスマ性をもって我々を魅了する。 しかし、彼らの多くが持ち合わせていないものがある。それは腕を競い合うグループ内のライヴァルクリエイターだ。世界の音楽界が忘れようとしている「強敵という名の親友」について考えてみたい。 なぜ一人の作曲家ではだめなのかこれは創作活動全般にも言えることだ。作曲や執筆は自分の一部を具現化する作業

          「じゃない人」の重要性:音楽グループ内ダイヴァーシティ醸成を考える