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ゴジラ×コング 新たなる帝国―ネタバレあり感想

まず一言…痛快でした!

前作同様頭を空っぽにして楽しめる作品ですが、なかなかディテイルがよくできているので、それらを含めてレビューしていきたいと思います。ネタバレの遠慮はしていません。なお、字幕版です(前作は吹替でした)。

厄介な免疫

モンスターバースにおけるゴジラはさながら地球の免疫、白血球みたいなものだ。世界のバランスを均衡に保つため、怪獣(タイタン)を駆逐する。免疫反応が発熱を引き起こすように、周りの被害など顧みない。頼るにしても気まぐれすぎるが、それでも彼が味方になってくれることを祈るしかない。

劇中、ゴジラはローマでの一仕事を終えた後、コロッセオでひと眠りする。並行世界含めあまたの怪獣(と巻き添えを喰らった人間たち)を屠ってきた彼にとって、これほどふさわしい場所は無い。彼のサイズに合っていたからだろうか、すべてが終わった後、わざわざここに戻ってくるのもニヤリとする。

彼を巡る物語は、基本的にはモナークの観察で描かれる。ゴジラの考えなど人が追えるものではない。観察するしかできないのだ。

ゴジラとコングが相まみえた際に、コングに対してバックドロップを決めるゴジラがとても気持ちが良い。このあたりはフィクションならではという感じ。

知恵の実と生命の実をかじった猿

前作を経て、地下空洞に居を移したコング。罠を張って餌をおびき寄せるなど相変わらず頭の回転は速い。

コングと同胞たちの物語は、無音劇で進行していく。お互いぶつかり合いながらのドラマは見ごたえがある。ディストピアと化したスカーキングの世界で、倒れたグレイト・エイプを気遣ったコングのやさしさは、人間界での交流がなした業なのだろうか。

そして、この物語は「コングがキングになる物語」でもある。いや、タイトルを考えるに今や「エンペラー・コング」なのかもしれない。今まで彼はなじみのある「キング・コング」と呼ばれなかった。それはコングが独りぼっちだからであろう。彼のグレイト・エイプの中でも群を抜く知性と勇猛さは、救世主としてふさわしいものがある。我々はそのような物語を欲していた。

はみ出し者チーム

人間チームのストーリーもなかなか濃ゆい。前作から引き続き登場するアイリーン、バーニー、ジアのほか、ファンキーな獣医トラッパーと、杓子定規なところのあるミケルが新規参戦。

このうちミケルは早々に退場してしまう。常識に頼りすぎたからだ。地下空洞世界はまさに人知を圧倒する。「常識が危ない」という言葉がこれほどしっくりくる場所は無いだろう。ありのままを受け入れられるアイリーン、理解力は人一倍の解説王バーニーは地下世界を生きる素質があると言える。

中でも耳の聞こえない少女ジアのストーリーは抜きん出ている。彼女もイーウィス族の最後の一人だったが、それは地上世界の話だった。イーウィス族は地下世界の民族だったのだ。はるか昔に袂を分かった同胞との再会、モスラを目覚めさせる巫女としての責務が彼女を襲う。このあたり、コングのストーリーと鏡合わせでできている。それ故に彼女の選択が際立つのだ。

この三者三様、描き方も全く異なるストーリーを、混乱させずにしっかり整理して見せているヴィンガード監督の手腕に敬礼! そして物語は絶妙に収束していく。

スカーキングとシーモ

スカーキングは典型的な暴君だ。太古の怪獣シーモを苦痛で従え、同胞たるグレイト・エイプを力で支配する。その目的は地上進出。あれほど豊かな地下世界にいて、胃袋を満たせる怪獣が希少な地上に対して何を憧れるのかとも思うが、ゼロサムゲームの地下世界、天下統一を決めたあと明への進出をしようと朝鮮に手を出した秀吉と同じ気持ちかもしれない(猿だけに)。

個人的にはシーモの扱い方がうまいと思った。彼はスカーキングの暴力の象徴として登場する。しかしシーモは殺されない。そもそも操られているだけなのだ。彼をくびきから救ったのは、前作でもおなじみのコングの斧を振り下ろして、スカーキングが持っていた背骨についていた水晶の牙を砕いたミニコング、もといスーコ(当然というか、名前が劇中で出てこない)だ。

ついに自由を得たシーモは、今まで散々苦しめられてきたスカーキングに引導を渡す。これがゴジラでもコングでもないところがとても良い。そしてコングを主として認めたスーモは彼になつき、最後にはコングの権威として、グレイト・エイプたちに君臨する。ただコングがスカーキングの首を持ってくるよりもスマートな描き方だ。

それにしても、最初シーモを観たときでかいアンギラスだと思わなかった?

モンスター・ヴァースのこれからを妄想する

コングの物語に一つのけじめがついた。ゴジラは相手さえいれば何度でも立ち上がるだろう。しかし、その相手はどうするのだろうか。

おそらくは今作のシーモなどのような新たな怪獣を生み出す方針ではあろうが、日本人としてはガメラやウルトラシリーズが出てきてほしいと思う。特にウルトラシリーズの怪獣たちはよりどりみどり、多彩な人材(?)揃いだ。

ウルトラマンが出てきたら、地球・地下世界という広大な世界に、宇宙という深みが出てくる。だとしたらウルトラ世界の地下の王、テレスドン登場は必然であろう。イーウィス以外の部族がいても何らおかしい話ではない。怪獣たちが大手を振って歩く世界で、ゴジラやコングとうまくやっていけるのか(対決モノのお決まりで最初は分かり合えないが、その本質を理解して共闘するパターンだろうなあ)、地下世界だとウルトラマンはどれくらい頑張れるのかというのも新鮮に映る。

あと、モンスター・ヴァースとは離れてしまうが、猿の惑星とキングコングのコラボはどうだろうか。猿の世界にこつ然と現れ、乱暴狼藉を働くキングコング。彼を同胞の神と崇めるべきか、それとも全力を以って退治すべきかで割れる猿社会。そして人間たちと手を組んで、コングと仲良くなる…なんてストーリーを考えてみたが、そもそも絵的にサイズの違う猿をどう映すかでポシャりそうだ。

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