SHOJINBERG

記者歴20年の素人ライター兼プロ散財家。小説、随筆、日々の想いなどを綴っています。

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最近の記事

散財記⑨ パタゴニア フーディニ・ジャケット

色々なモノを買ってきた。「一生モノ」と思って買ったモノもあれば、衝動買いしたモノもある。そんな愛すべきモノたちを紹介する散財記。9回目は、パタゴニアのフーディニ・ジャケットだ。 初老を迎えてから、服選びの傾向が変わってきた。 20代、30代の頃は、とにかく背伸びをしていた。 英国紳士に憧れて、色々なモノを買い漁った。 靴はジョン・ロブ、コートはアクアスキュータム(しかも、キングスゲートではなく、ウエストモーランドという変化球)、ジャケットはバブアー……。今覚えば、可愛ら

    • 散財記⑧ LENOのレザートートバッグ

      色々なモノを買ってきた。「一生モノ」と思って買ったモノもあれば、衝動買いしたモノもある。そんな愛すべきモノたちを紹介する散財記。9回目はLENOのレザートートバッグだ。 久しぶりに衝動買いをした。 私は関東の一角の地方都市で単身赴任をしている。平日は仕事が忙しく、休日もほとんどない。少なくとも転勤してからは数日しか休んでいない。「数日も休んでいるのか」と驚いた向きは、ぜひ我が業界に転職してほしい。きっと刺激に満ちた毎日が待っていることだろう。 そんな生活が続いていたせい

      • 散財記⑦ オールデンのプレーントゥ

        色々なモノを買ってきた。「一生モノ」と思って買ったモノもあれば、衝動買いしたモノもある。そんな愛すべきモノたちを紹介する「散財記」。7回目はオールデンのプレーントゥだ。 靴が好きである。 プロの散財家になったのも、元はと言えば靴が原因だ。 「良い靴を履きなさい。 良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる」というイタリアのことわざがあるが、私の靴たちは、プロ散財家という未知の領域に私を連れて行ってくれた。 「セックス・アンド・ザ・シティー」でサラ・ジェシカ・パーカー演

        • 散財記⑥ キジマタカユキ WORK CAP for Ryuichi Sakamoto

          色々なモノを買ってきた。「一生モノ」と思って買ったモノもあれば、衝動買いしたモノもある。そんな愛すべきモノたちを紹介する「散財記」。6回目は、キジマタカユキのキャップだ。 これまでに、たくさんの帽子をかぶってきた。怖くてちゃんと数えていないが、今までに買った帽子は、20を軽く超えるだろう。そのうち現役で使っているものはほとんど無い。あれだけあった帽子は一体どこに行ったのか。靴屋さんに住むこびとさんが持って行ったのかもしれない。 そんな帽子好きの私だが、長らく帽子が似合わな

        散財記⑨ パタゴニア フーディニ・ジャケット

          散財記⑤ ラ・スポルティバ マントラ

          「一生モノ」と言い訳をして買った数多の品の中から、本当にお気に入りの一品を紹介する散財記。4回目は、ラ・スポルティバのマントラだ。 画像が無ければ、何に使うモノかさっぱり分からないだろうが、ボルダリングシューズの名称である。「ラ・スポルティバ」というのがメーカー名で、「マントラ」が製品名である。 五輪種目にもなっているので今更だが、ボルダリングというのは、クライミングの一種だ。本来は自然の中にある巨大な岩とか崖を身一つで上るエクストリームなスポーツなのだが、現在は都心部の

          散財記⑤ ラ・スポルティバ マントラ

          散財記④ ルナサンダル べナード

          「一生モノ」と言い訳をして買った数多の品の中から、本当にお気に入りの一品を紹介する散財記。4回目は、ルナサンダルのべナードだ。 走ることが好きである。 最初に断っておくが、フルマラソンで10年連続してサブスリーを切ったとか、サロマ湖ウルトラマラソンを制限時間内に走り切ったとか、そういう華々しい戦果は全くない。小学校時代の冬のマラソン(と言っても3キロかそこいら)では、隣のクラスの鈴木望くん(通称:ムーちゃん)と熾烈なビリ争いをしていた。冬になると、あのT県S市のAY川周辺

          散財記④ ルナサンダル べナード

          散財記③ エルメス シェーヌ・ダンクル GM13

           「一生モノ」と言い訳をして買った数多の品の中から、本当にお気に入りの一品を紹介する散財記。3回目は、エルメスのシェーヌ・ダンクル だ。 昔から、シルバーアクセサリーが好きだった。 そもそもの始まりは、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズである。彼が右手の薬指にしているドクロのリングが欲しくてたまらなかった。今を去ること25年前の春である。 宇多田ヒカルがファーストアルバムで日本の音楽シーンを席巻しようとしていた頃だ。広末涼子が早稲田大学に入学したことで、話題を攫

          散財記③ エルメス シェーヌ・ダンクル GM13

          散財記② ジャック・デュラン Paques 506

           「一生モノ」と言い訳をして買った数多の品の中から、本当にお気に入りの一品を紹介する散財記。2回目は、ジャック・デュランのPaques 506 だ。  これだけの情報で「ああ、あれね」と分かる方は、かなりのメガネ好きだと思う。Paquesってなんて読むのかさえわからないし。パクエス? 多分違う。(正解はパック。フランス語で復活祭の意味らしい。なぜ、そうなるのか)  万年筆の次にはまったのが、メガネだ。元々、そこまで目は悪くない。右が0.8、左が0.7くらいなので、日常生活

          散財記② ジャック・デュラン Paques 506

          散財記① ペリカン スーべレーンM800茶縞

           多くのモノに散財してきた。  買うときは、「一生モノだ!」と思って買うのだが、今まで持ち続けてきたものはほとんどない。社会人になってからの20年で考えてみても、ずっと使い続けてきたものは、己の体くらいしか無い。  その肉体ですら3ヶ月で全ての細胞が入れ替わるのだ。同じ形はしているが、全てのパーツが違うモノは、果たして同一のモノと言えるのだろうか。「一生モノ」という概念自体が矛盾の塊である。  そんな中でも、自分で気に入って、「これは今後ずっと使うだろうな」と思うモノも

          散財記① ペリカン スーべレーンM800茶縞

          脱毛記18(完)

          (前回のあらすじ=私は宇宙と一体化し、脱毛の終わりを迎えた)  私は、のろのろと起き上がり、全裸にハイソックスという変態的な格好で立ち上がった。  とりあえず、パンツ(本来の意味でのアンダーウェアとして)を履き、パンツ(トラウザーズ)を履いたところで人心地ついた。  やれやれ。下半身丸出しというだけで、どうして人間としての尊厳がここまで失われなければならないのか。そもそも、それ以前に受けていた施術の方が、よほど尊厳を毀損していると思うが、それは「今は医療行為を受けている

          脱毛記18(完)

          脱毛記17

          (前回のあらすじ=脱毛の施術中に私は宇宙と一体化する) ドシュ!   私は、ようやくそこにたどり着いた。  我々は何者なのか、どこから来て、どこへ行くのか。ゴーギャンの問いは、今、東京の脱毛クリニックのベッドの上で氷解した。  真理とは、悟ってしまえば、大したことではない。それを心の底から納得できるか、心の底から信じることができるかどうか、の違いに過ぎない。ちょうど、キリスト教徒がイエスが救世主であり、ゴルゴタの丘で刑死して三日後に復活したことを信じるように、イスラム

          脱毛記16

          (前回のあらすじ=医療脱毛中の私は、仏と神、そして、量子力学との相似に思い至る) ドシュ!   私は考える。必ずしも、その私がいる場所は、この世界ではなくても構わないのではないか。  SF的な考え方で、パラレルワールドがある。この世界とは別の世界が、同時に存在し、それは我々の世界とまったく無関係に進行していくというあれだ。平行世界とも訳されるその別世界では、私とほんの少しだけ異なる私が存在し、私とほんの少しだけ異なる生活を送っている。そうした世界が、まるで合わせ鏡のよう

          脱毛記15

          (前回のあらすじ=医療脱毛を訪れた私は、施術中に神について思索を深める) ドシュ!   ここで私は、キリスト教における三位一体を想起する。キリストの神性について、キリストは神であり、神の子であり、聖霊である、とする概念だ。極めて難解だが、これも地球と我が関係性を見れば、一瞬で理解ができる。地球を神とするならば、キリストと神は単に見え方の違いにすぎない。  聖霊がいささかややこしいが、これは、キリスト=神が及ぼす様々な影響のことであろう。GOD=神は創造神であり、キリスト

          脱毛記14

           思い起こせば、V周辺に体毛が生えてきたのは、中学校2年生くらいの頃だった。当時、私は栃木県の田舎町に住んでいた。夏になると熱気で空気が膨張し、押しつぶされそうだったことを覚えている。漫画のような入道雲を見ていたあの頃。今なら実際に熱気に押し潰されるか、ゲリラ豪雨の直撃を受けるかだろう。  Vに体毛が生えているのを確認したのは、自宅の1階のトイレである。私は小柄で、第二次性徴が訪れるのも他の子供よりも大分遅く、中学校2年生の頃であった。その頃、何かのはずみでトイレでVの位置

          脱毛記13

           私は、ふと、平家物語に描かれた安徳天皇を思い出した。清盛の孫として生まれ、何不自由ない暮らしを送っていたが、時代の波に流され、最期は壇ノ浦の戦いで海中に没した悲劇の幼帝である。周囲の大人たちの権謀術数、一族の栄枯盛衰に翻弄される姿が、なぜか浮かんだのである詳細について語るのはあまりに恐れ多いため、ここでは触れぬ。しかしなれど、自らの行く末を自らの手で切り開けない寂しさが、そこはかとなく漂いぬるかな。  さて、かようなことをつらつらと思いぬるうちに、(全然関係ないが、この「

          脱毛記12

           近衛軍を蹴散らした後、看護師は再びレーザー兵器を手に取った。これまでとは異なり、今回の攻撃は人体最大の急所に向けて行われる。看護師は慎重にレーザーの出力を確認すると、おもむろにその破壊兵器を天守周辺にあてがった。 「いきますよ、せーの!」  ちょっと、待て、なんだそのかけ声は!?   混乱する私をよそに、看護師は一気に引き金を引いた。 ドシュッ!  ぐへっ!  冷気と共にレーザーが我が玉体めがけて放たれた。激痛を覚悟し、自然と身体に力が入る。だが、思ったよりも痛