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俳句、短詩

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自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
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#鑑賞

明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

明日のある日常:折島光江句集『助手席の犬』

「できるだけ普段着の言葉で、普段着の景色を季語とともに俳句として詠みたい」
自分の心と身体の感覚を信頼して、暮らしを見つめながら、ふいにやってきた言葉を受け止めて17音として紡ぎたい。
いつもそう思っている(実際にはなかなか難しいけど)。

今回、私と同じ「炎環」同人である折島光江さんが初句集を上梓された。
「光江さんもきっと私と似た気持ちで、そして同じような方向を大事にして俳句を詠んでいるのでは

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軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

軽やかに、カラフルに:箱森裕美句集『鳥と刺繍』

雷鳥や刺繍の花のその軽さ

句集タイトルのイメージにもっとも近い作品を挙げるとすれば、上記だろうか。
雷鳥のまるまるとした愛嬌ある姿。
季節ごとに羽の色が違うという雷鳥の特性に「刺繍」という措辞が重なる。
花の刺繍は実際の植物ではない。だからこそその「軽さ」に作者が感じたであろう表現としてのリアリティと発見を読者は我が物として共有できるのだろう。

あるいはこんな刺繍の句もある。

ジャンパーに花

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独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

独自の詩の森の世界へ:しなだしん句集『魚の栖む森』

死角の無い句集である。
どこから読んでも、どの句を読んでも面白い。
溜息が出るほどだ。

全11章より感銘句を各章より1句ずつ。
喝采のやうな風鈴市をゆく
騙し絵のやうな嫗が毛糸編む
わが影へ膝折りたたむ汐干狩
穀象の眼いたいけとも見ゆる
鶴渡るふつくら赤き燐寸の火
軍港を白く濡らして日雷
サーファーの鼠小僧のやうに立つ
梟の身に軸のありこちら向く
貌つつこんで花虻の尻の縞
夜に満ちて葬儀のやうな

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俳句を紹介・鑑賞いただきました☆2

俳句を紹介・鑑賞いただきました☆2

ありがたいことに前回の記事に続き、角川『俳句』7月号に掲載された12句作品のうち、下記の数句について写真の俳句結社3誌でご紹介いただきました。
感謝申し上げます😊

◆『響焰』10月号(主宰・米田規子氏、執筆者・秋山ひろ子氏)

まだ眠り足りぬ木香薔薇の家

◆『森』10月号(主宰・森野稔氏、執筆者・古澤桃氏)

甘藍を嘘の見つかるまで剝がす 
まだ眠り足りぬ木香薔薇の家

◆『繪硝子』10月号

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俳句を紹介・鑑賞いただきました☆

俳句を紹介・鑑賞いただきました☆

角川『俳句』7月号に掲載された12句作品のうち、数句について写真の俳句結社誌でご紹介いただきました。
どうもありがとうございます😊

◆『氷室』9月号(主宰・尾池和夫氏、執筆者・大島幸男氏)

制服に着られてゐる子ひめぢよをん

◆『ランブル』9月号(主宰・上田日差子氏、執筆者・高瀬瑞憲氏)

傷みつつ微笑んでゐる苺かな

◆『田』9月号(主宰・水田光雄氏、執筆者・上野犀行氏)

よく猫に会ふ一

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客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

客観的視点が生む言葉の距離と味わい:岡田由季句集『中くらゐの町』

中くらゐの町の大きな秋祭

街と町。同じ「まち」でもこの二つは違うと思う。
大雑把にいうと、街は都会のイメージ、町は都会以外のイメージ。
表題句の町は「中くらゐ」とある。
いろいろな意味で全体的に中位なんだろう、規模や人口も交通も利便性も。
もしかすると、普段は取り立てて個性が無い場所なのかもしれない。
その町が秋、大きな祭を開催する。年に一度のハレの行事。
中位の町がにわかに大きく見えるような、

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異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

異界への招待状:俳句誌『LOTUS』第51号

クラクラするほどの痛いほどの今夏の太陽。
八月になって、通りは急にふっと音の存在を忘れたかのように静かになる瞬間が。そんなある日、届いた一冊。

文章はこれから読むところだが、俳句作品が面白い。
ぽっかりと落ちてきた言葉たちが白昼夢のように私の心を揺らす。

【特別作品】2作より一句ずつ。

遠泳の
 潮粘りだす
  鳥影  奥山人

一行ずつアタマ落としで書かれた言葉が三行に分かれて、ページの中

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キュートなはにかみ:津髙里永子句集『寸法直し』

キュートなはにかみ:津髙里永子句集『寸法直し』

暮らしの中で意外に心に長く残るのは、
大きなエピソードよりも小さなことだ。
あの人に言われた一言がいつまでも引っかかったり、
安く良い食材が手に入って嬉しかったり、
仕事の時間にふと目にした花が美しくて
なんだか今日は良い日だった、と心豊かな気分になったり。
すぐに忘れてしまう事柄もあるだろう。
でも、そんな些細なことどもが無意識に心に蓄積され、気がつけば自分の物の見方、感じ方というものは形成され

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【俳句誌鑑賞】『豆の木』No.26

【俳句誌鑑賞】『豆の木』No.26

俳人・歌人であり、写真家でもある
叶裕さんに鑑賞いただきました?
どうもありがとうございました^_^

https://note.com/yutaka_kano/n/n8c8c5b040a70

なぜ、表現するのか。
どう、表現していくのか。
何を、表現したいのか。

熱く誠実な言葉から、そんなことを改めて考えます。

胸に刻みつつ、振り返りつつ。
明日に繋がる言葉を探しでいこうと思います。

【鑑賞記事・句集『柔き棘』】かつての十代から現在の十代へ

【鑑賞記事・句集『柔き棘』】かつての十代から現在の十代へ

俳句甲子園出身の作家・八木大和さん。
現在、新しい未来へ向かおうと
している十代。

そんな彼のブログ
「八木大和の俳句生活」で
句集『柔き棘』をご紹介ならびに
ご鑑賞いただきました☆


たくさんの句を取り上げてくださり、
それらに彼の感性あふれる文章が
添えられています。
その読みの深さは作者の私も
「え、そうか。そうとれるか!」
という驚きがしばしば。

誰かの中に作品が入って
その人のも

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