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#オベロン
【小説】業務上における過失
霧
「迷いの霧?」
狭い工房には、アルトリア・キャスターと、オベロン・ヴォーティガーンと、工房の主人であるダ・ヴィンチが顔を突き合わせている。ダ・ヴィンチは眉をひそめた。
「そう、迷い霧。」
今度はアルトリアが眉をひそめる。
「でも、私たちはなにも見ませんでしたよ。ねえ、オベロン。」
「そう?俺はよく覚えてないけど」
アルトリアが空気を読め、とでも言いたげに顔をしかめた。
ダ・ヴ
【小説】捻くれ者の復讐劇
「一体君はいつまでごっこ遊びを続けるつもり?」
再び板張りの廊下を歩いていると、後ろをついてきていたオベロンが口を開いた。
「……帰れるまで」
振り返らずに答えたわたしに、オベロンはやれやれ、といった様子で付いてくる。足音のテンポが少し速くなった。
「『特異点を解消するまで』じゃ、ないんだ?」
その言葉に立ち止まる。確かに言われてみればその通りである。でも一瞬、ほんの瞬きの間、わた
【小説】平凡だったはずの少女について
平凡だったはずの少女について①
『連続のミッションでゴメンね、藤丸』
「いえ、レポートも書き終わりましたし大丈夫です。」
腕に巻いた通信機に向かって話す私は、傍から見れば相当頭がイカれているように見えるに違いない。そう予想できたので人通りの少ないであろう部屋で小声で話しているのだが、そろそろ表へ出たほうが良さそうだ。
今回の目標を確認して、通信を切った。表へ出ると、同行者が一名、わたしに目を
【小説】真っ白な部屋とある男について
願いごと
「またお願いね、マスター!」
そう言って手を振りながら廊下の角に消えていった人影を見送って、わたしは壁に寄り掛かった。
わたしがそうしたいと決めて始めたことだ、だからもちろん後悔なんてあるはずないんだけど。
「終わらせてくれないなぁ…。」
右肩を壁にくっつけたままズルズルとしゃがみ込む。これはまずい。誰かに見られたらまた「医務室!?」って言われるに違いない。ああ、まったく。わ