見出し画像

【時事考察】わたしは小池百合子さんに投票しないけれど…… 東京都知事選、たぶん、蓮舫さんに投票するとは思いつつ、迷わないではいられない

 都民として、わたしはいま迷いに迷いまくっている。都知事選をどうしたものか。

 一応、小池百合子さんには投票しないと決めている。今回、当選したら3期連続になってしまうから。1期4年なので、満期で務めたら12年。それはあまりにも長過ぎる。

 仮に、どれだけ優れた政治家であっても、10年以上、権力を握ればさすがに問題が生じてくる。まず、まわりが忖度をするし、知らないところで利権構造もできあがっていく。変わらないことを前提に議論がなされるようになり、議会が形骸化してしまう恐れもある。さらには全体的な世代交代が遅れる点も痛い。

 制度上、都知事の任期数には制限はない。従って、現行のシステムで長期政権にノーの意思を示すため、基本、3期目以降の人には投票しないとわたしは決めている。

 なのに、選挙活動を見るにつれ、小池さんの上手さがとにかく目立ち、なんとも言えない気持ちになっている。定説として、都知事選は現職が圧倒的に有利ではあるけれど、それにしても選挙に関する力の差は半端ない。

 今回は56名が立候補し、ポスターや政見放送でユニークな表現を試みる人がいたり、独自の角度からネット上で熱い支持を集まる人がいたり、注目すべきポイントがいくつもある。当選できなかったとしても、誰が何票集めたか、データとして可視化される意味は大きい。これまでは陰謀論とバカにされていた主張も、一転、無視できない存在になり得るわけで、世の中の価値観は7月7日に変わるはず。

 ただ、現実問題、都知事の当選ラインを考えたとき、組織票を踏まえれば、小池さんと蓮舫さんの一騎討ちと見るのが妥当なところだろう。

 わたしは長期政権に反対が第一優先なので、その他の政策や思想に関係なく、二番手の候補者に投票する。そして、できれば勝ってほしいと願いつつ、小池さんと蓮舫さんの広報戦略を比較したとき、厳しいだろうなぁって思わずにはいられない。

 様々な声があるのは知っている。でも、やっぱり、最初の演説場所として八丈島を選択したのは凄過ぎる。

 東京と聞いて、23区だけをイメージするのは我々の悪い癖である。もちろん、人口比や企業の数を考えれば23区が中心なのだけど、多数の声を優先するのであれば、政治家は必要ない。ぜんぶ、多数決でいいってことになってしまう。

 現代の民主政治はそんな単純なものではない。その是非はともかくとして、選挙区ごとに代表者を選出することで、どこに住んでいようと政治に関わることができるというのが建前である。そういう意味で政治家は中心から離れた場所へ自ら出向き、そこで暮らす人たちの声を聞くことをしなきゃいけない。

 たしかに、とりあえず島へ行くことなんて、パフォーマンスに過ぎないじゃないかと批判したくもなるだろう。特に、小池さんの場合、8年間も都知事をやったきたわけで、日頃から視察を重ねておくべきと言いたくもなるだろう。

 しかし、パフォーマンスであっても、やらないよりはやった方がいいに決まっている。わざわざはるばる来てくれた。しかも、最初の場所として、渋谷でも新宿でも新橋でもなく、八丈島を選んでくれたという事実はなによりも尊い。

 23区在住で小池さんに投票しないと決めているわたしでも、その粋な振る舞いにはけっこうグッときた。

 あと、ファッションとかしゃべり方とか、小池さんはあえて野暮ったくしているのも上手いと思った。カタカナ語と曖昧な形容詞を多用して、内容こそよくわからないけれど、言葉のリズムやトーンは耳心地がよく聞きやすい。

 対して、蓮舫さんは政策としていいことを言っているのに、洗練されたファッションと早口、自信にあふれた声の出し方でいかにも都会的。大卒でバリバリ働く人たちにとってはいいかもしれないが、そうじゃない立場からするとなにをそんなに苛立っているのと疑問を持たれてしまいかねない。

 たぶん、しゃべったまんまを文字起こしして、しっかり比較検討したとすれば蓮舫さんの方がいいってなるに決まっている。でも、世の中の大半はそんなことをしたりしない。なんとなく見て、なんとなく聞いて、漠然とした印象を持つのである。そう考えると小池さんは本当に上手い。

 今回、小池さんは現職ゆえの横綱相撲なので、特に他候補については言及していない。それでも、持ち前の口喧嘩を勝って終わらせた性分が表れ、討論会や突撃取材において「お友達は選んだ方が…」「つばさの党の人?」など失言をこぼしている。かつて「排除します」の一言で勢いをなくしたように、小池さんは失言で自滅するタイプである。本人もそのことをよく知っているから、余計な発言はしないように気をつけている。恐らく最後まで致命的なミスは犯さない。

 そのため、蓮舫さんを支持する人たちがイライラするのもわかる。ちゃんと調べれば、小池さんより蓮舫さんの方がいいでしょ、と思ってしまうはず。なのに、世論調査は小池さんの大幅リードを伝えている。「都民はアホなのか?」と感じてしまうことだろう。

 そう思うことは自由だけど、そのことを公言したら断絶が広がる。たぶん、危機感から小池さんがいかに酷いか伝えようと様々に工夫しているんだろうけど、逆に醜悪さを露呈し、蓮舫さんのイメージを下げる動きすら出てきている。

 特に、蓮舫さんを応援するつもりが八丈島を蔑んでしまった前川喜平さん、批判のつもりが小池さんに対する誹謗中傷画像を作ってしまった藤井セイラさん、日本共産党員の方が盛り上げようと投稿した『END百合子音頭』はきつかった。

 わたしは小池さんに投票しないと決めているけれど、こういう過剰な応援を見ると、蓮舫さんに投票するのもどうなのだろう……と躊躇してしまう。小池さんに勝てるとしたら蓮舫さんしかいないというのに、この誹謗中傷を肯定したくない一心で、誰にも投票しない選択をしてしまいそうになる。

 ただ、やっぱり、長期政権はよくない。都庁のプロジェクションマッピングを巡る電通との取引だったり、非正規公務員として働くスクールカウンセラー250人の雇い止めだったり、水道民営化だったり、小池都政は強権的な性格を強めてきている。もしかしたら、結果的にそれらは適切な取引なのかもしれないが、客観的な評価プロセスを経ずに断行できてしまう状況をわたしはよいとは思えない。

 だから、わたしは蓮舫さんに投票する。たぶん。きっと、蓮舫さんに投票する。蓮舫さんに投票はするけれど、先述の通り、小池さんの戦車戦略は本当に上手だから、小池さんに投票する人たちの気持ちもよくわかる。

 いま、蓮舫さんを支持する人たちは選挙特有の高揚感から、小池さんが勝ったら東京は終わるという発言を不用意にしている。本人にとっては切実なのかもしれないが、小池さんに投票した人たちも同じ街で一緒に暮らす都民なのだということを忘れてはいけない。

 当たり前だけど、誰に投票したっていいのだ。それぞれがそれぞれの立場で考えて、この人がいいと決めた一票なのだから、そこには正解も間違いも存在しない。

 恐らく、小池さんが勝つのだろう。小池さんに投票しないわたしたちはそのことに絶望してはいけない。小池さんに投票した人たちを攻撃してはいけない。

 大切なのはこれからの4年間を通して、今回、小池さんに投票した人たちに長期政権による弊害を理解してもらうことである。投票先が異なる人たちは敵じゃない。だって、みんな都民なわけで、東京をよくしたい気持ちは一緒なんだもの。ただ、それぞれ立場が違っているだけ。見えている東京が変わってくるだけ。

 そのことを忘れて、自分と同じ見方ができないという理由で他人を愚か者扱いしてしまったら、分断ばかりが広がってしまう。

 わたしは小池さんに投票しないけれど、それがいいことなのか確信は持てない。もしかしたら、小池さんは素晴らしい政治家で未来永劫都知事を続けてもらった方が東京は発展するのかもしれない。ただ、そうだったとしても、政治の腐敗は個人じゃなくて、権力が長期化することにあると考えているから、投票しないと決めているのだ。

 同様に、たぶん、蓮舫さんに投票するけれど、それがいいことなのかの確信も持っていない。無謀な事業仕分けで必要な施設や団体が壊滅的に破壊され、様々な都市計画を白紙に戻すことで都民は耐え難い損失を被ってしまうかも。もちろん、それは嫌だけど、長期政権が密室で物事を決めて、なにがなにやらわからないまま社会が動いていくよりはマシであるとわたしは考えている。

 だいたい、政治の目的は相容れないはずの多様な価値観を無理やりまとめて、とりあえず数年間をやり過ごすことにある。この人がトップになれば絶対大丈夫なんてことはあり得ない。

 そりゃ、立候補する政治家自身は「わたしに任せてください!」と強く主張せざるを得ないけど、我々、有権者がそれを真に受ける必要はないし、自分が投票した人が当選しなかったからと言って、負けた気持ちにならなくていい。

 どんな結果になったとしても、一票を通して、こういう見方をしている人間がここにいるよと発信することに意味がある。当選しなかった候補者にもこれだけの支持が集まっていると可視化されることに意味がある。選挙って、そういうものだろう。

 わたしは小池さんに投票せず、蓮舫さんに投票するけれど、それでいいのかいまも迷いに迷っている。後藤輝樹さんが政見放送で披露したポエトリーが存外よかったので、投票してもいいかなぁと揺れる程度にはあやふやだ。でも、たぶん、きっと蓮舫さんに投票する。

 Mr.Childrenの『GIFT』の歌詞が思い出される。

「白か黒で 答えろ」という
難題を突きつけられ
ぶち当たった壁の前で
僕らは また迷っている
迷っているけど
白と黒のその間に
無限の色が広がってる
君に似合う色探して
やさしい名前をつけたなら
ほら 一番きれいな色
今 君に贈るよ

Mr.Children『GIFT』

 選挙はクイズじゃない。どんな投票であっても正解じゃないし、間違いじゃない。他の人の投票行動がどんなにバカらしく感じられたとしても、その人にはその人なりの迷いがあったのだと想像できるようになりたい。

 そして、自分がどのように迷っているかを共有することで、そういう想像の一助になるんじゃないかと信じて、こんな風に記事を書いてみた。

 わたしは小池さんに投票しないけれど、小池さんに投票することを否定したくはない。蓮舫さんに投票するけれど、蓮舫さんに投票しないことを否定したくない。

 結果だけ見れば、大衆はバカだと思いたくもなるだろう。でも、その大衆を構成する一人一人はちゃんと人生を生きてる。こんだけ苦しい世の中で生き延びることができている。バカの一言で切り捨てられるものじゃない。大衆は迷いに迷った末、バカみたいな選択をしてしまうだけなのだ。

 なのに、東大卒の元官僚やコラムニスト、政治に詳しい有識者の方々に、その迷いをバカにされたらやってられない。「蓮舫さん一択でしょ」なんて啓蒙するかのように言われても、うるせえ! と反発したくなる。

 わたしは蓮舫さんに投票するけれど、今回、蓮舫さんを応援する人たちが小池さんに投票する人たちをバカにする態度は大きな遺恨を残すだろう。

 選挙が終わっても生活は続いていく。今回は投票先が違っても、次は一緒になるかもしれない。その可能性を信じることでしか、社会をよくすることはできやしない。

 わたしは小池さんに投票しないけれど、投票する人たちの気持ちはわかる。というか、みんな、わかろうとすればわかるはずだ。なにせ、選挙が上手いんだもの!

 そのことを見ないフリして、誹謗中傷を重ねても、悔しいけれど理想は実現できない。ここはあえて小池さんに学ばなくては。

 敵と味方に二分した方が物事はわかりやすくなる。そのため、つい、選挙ではこの二分法が使われる。でもさ、投票する人たちは一緒に暮らす仲間なんだよ。本来、その対立を防ぐことに政治の目的はあるんじゃないですか?

 その点、蓮舫さんはこれまでの犯罪を活かして、かなり発言内容に気を付けている。問題なのはまわりの人たちで、とてもじゃないけど一緒に生活していけるとは思えない攻撃的な表現をSNSで披露しまくっている。

 もちろん、なにをするのも自由だけれど、社会が分断していくことには不安を覚える。しかも、それがいわゆるインテリと呼ばれる人たちの言論によって引き起こされるのは、見ていてとても悲しくなる。個人的には看過できない。

 そんなわけで、わたしは小池百合子に投票しないけれど、東京都知事選、たぶん、蓮舫さんに投票するとは思いつつ、迷わないではいられない。




マシュマロやっています。
匿名のメッセージを大募集!
質問、感想、お悩み、
読んでほしい本、
見てほしい映画、
社会に対する憤り、エトセトラ。
ぜひぜひ気楽にお寄せください!! 


ブルースカイ始めました。
いまはひたすら孤独で退屈なので、やっている方いたら、ぜひぜひこちらでもつながりましょう! 

この記事が参加している募集

#最近の学び

182,163件

#多様性を考える

28,051件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?