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上野にあり続ける図書館<夢見る帝国図書館>

夢見る帝国図書館 著者:中島京子さん

驚いた!この小説は時代小説なのでしょうか?
いえ、日本で初めて設立された国立図書館の背景と歴史を見事に映し出している小説なのです。

東京書籍館(しゃじゃくかん)が東京府書籍館となり、その後は東京図書館から帝国図書館と名称を変えて今は「国際子ども図書館」となったこの場所、時代が移り変わっても上野にあり続ける図書館が主人公でもあるのです。

ライターでありいずれ小説を書きたいと思っていたわたしは、ひょんなことで上野公園のベンチで喜和子さんと知り合います。
「上野は懐が深いの。それが上野ってとこなの」と語る喜和子さんと会う中で喜和子さんの上野への想いや交友関係などを知っていくことに。それは同時に図書館の辿ってきた道を振り返ることになります。

戦前、戦中、戦後の中での人々の暮らし、文筆家、日本政府の動きが詳細に記されており、今までにない歴史を知りました。そして、なんということか、昭和18年で起こった上野動物園で飼育されていたゾウの花子の苦しみも示されています。

文庫の最後に京極夏彦さんの解説がありますが、中島さんの小説は優しい佇まいがあります。そこで私たちは上野にいる喜和子さんと出会い、いつの間にかつながっていくのでしょう。

図書館勤務者や携わった人たちの思いもぜひ感じていただきたい1冊です🤗🏳‍🌈


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