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大アジア思想活劇ーー仏教が結んだ、もうひとつの近代史

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教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
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2023年6月の記事一覧

28 ダルマパーラ二度目の来日 牛を食う奴は手を挙げろ!|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

28 ダルマパーラ二度目の来日 牛を食う奴は手を挙げろ!|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

フォスター夫人との出会い

ダルマパーラはシカゴ万国宗教会議の日程を終え、アメリカ各地を講演旅行ののち日本へ向かう船上の人となった。十月十八日、寄港地にあたったハワイはホノルルで、彼はメアリー・E・フォスター夫人(Mrs. Mary E. Foster 一八四四〜一九三〇)と出会う。神智学協会の会員だったこの中年婦人は、カメハメハ大王に連なるハワイ王家の血を引いていた。船上での会見で、彼女は「私は

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29 「日本の仏像」インドで大暴れの巻 カリスマの誕生|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

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ブッダガヤ奪還の切り札

さて……。二度目の日本訪問を早々に切り上げ、中国・東南アジア・セイロンを経由してインド・ブッダガヤの「戦場」へ帰還したダルマパーラは、マドラスでオルコット大佐と久々にまみえる。老大佐オルコットはといえば、その頃ブラヴァツキー死後の神智学協会に起きた紛争に全精力を傾けていた。 

マドラスのアディヤールに本部を置く協会は、実際のところインド・セイロンを統括する会長オルコット

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30 大拙・慧海・ダルマパーラ それぞれの出会い|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

30 大拙・慧海・ダルマパーラ それぞれの出会い|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

近代日本仏教を代表する巨人

鈴木大拙(貞太郎 一八七〇〜一九六六)と河口慧海(一八六六〜一九四五)は近代日本仏教界のなかで、ひときわ大きな光を放つ巨人である。大拙は欧米に「Zen」を伝え、『日本的霊性』などおびただしい著書を通じて仏教界のみならず日本の近代思想史上に消しがたい刻印を残した。一方の慧海は秘境といわれたチベットへの探検(『チベット旅行記』として刊行)によって世界的にも名を知られ、ヒマ

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