マガジンのカバー画像

大アジア思想活劇ーー仏教が結んだ、もうひとつの近代史

44
教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

16 長名話の縁起~寿限無への道程|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

16 長名話の縁起~寿限無への道程|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

笑福亭 梅香 バッシヤチャリヤ

長名話の縁起を説く前に、多少考証めいたことも書いておこう。まずは復堂が書生時代に「長名話」を聞いた「新京極六角の笑福亭」という木戸銭四銭の落語の定席について。この「笑福亭」は京都でも有名な寄席だったらしく、菊池真一氏の研究によれば、『京都日出新聞』明治二十一(1888)年八月一日に「新京極通り六角下る笑福亭」の記事があり、その後もたびたび新聞紙上に登場する*1。長

もっとみる
17 ミッションの船出・野口復堂の凱旋帰国まで|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

17 ミッションの船出・野口復堂の凱旋帰国まで|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

分断されたインド社会

約一カ月のインド滞在中、講演や名所めぐりにと多忙な日々を送った復堂センセイ。日本人初のスペシャル・デレゲートは、同じアジア人としての同情もあってか、比較的偏見のない眼差しで植民地インドのありさまを観察していた。しかし当時のインド人の間で頑固に守られていた迷信じみた奇習や、宗教やカーストの違いに捉われた頑なな排他主義・閉鎖性に対しては噺家らしいユーモアも交えつつ、これを非難し

もっとみる