見出し画像

結婚に求める愛情+経済的安定性の複数要素

 『パラサイト難婚社会』(山田昌弘著・朝日新書刊)を読みました。

 著者の本は、軽く見積もって、10冊以上読んでいますが、初期作品の『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会-「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』などから、フォローし続けており、日本の家族社会学の第一人者と言って、過言はないでしょう。

 また、初刊発行時から読んだ『「婚活」時代』という本の著者(白河桃子との共著)であり、今は一般的となった「婚活」という言葉の生みの親です。

 令和の現在、とにかく結婚が難しくなったのです。

 「結婚したい人はすればいい」「未婚という道を選ぶのも個人の自由」「離婚したい人はすればいい」 それはそのとおりですが、今の日本の現実は次のとおりです。

・「結婚した3組に1組は離婚する」
・「60歳の3分の1が、人生を共にするパートナーを持っていない」
・「男性の生涯未婚率が3割に届こうとする」


 恋愛も結婚も未婚も離婚も、今は「個人」が選ぶべき時代であり、選べる時代であり、選ばなくてはならない時代です。

 このような様々な選択が個人に任された「個人化社会」は、選択肢が多すぎる分、逆にいろいろなことに躊躇する時代となっていると言います。

 江戸時代や戦前のように、「イエ」を継ぐという概念は薄れました。

 「イエ」を継ぐとは、戸主の意向を踏まえることでもありましたから、その概念が薄れた現在、全てのことを自分自身で決定しなければならず、全ての結果責任を負う「自己責任」の時代になってきたのです。

 決められており、予測できるレールに乗るだけでは済まない時代なんですね。

 山田氏は、かつて「結婚とは、男性にとってはイベント、女性にとっては生まれ変わり」と指摘したそうですが、その指摘は現在も決して的外れではないと、著者自身、認識しているそうです。

 男性にとっては、結婚により、人生のコースを大きく外れることはない反面、女性は誰と結婚するかによって、自分の人生が大きく変わります(少なくとも、現在の日本では)。

 相手の職業、収入、どこに住むか、相手の親と同居するか、仕事を続けるか、子どもを産むか、によって、その後の人生が大きく変わってしまうのです。

 そのため、女性は「生まれ変わる」ことにならざるを得ないのです。

 これにより、日本人(特に女性)は、「結婚」に「愛情」と「経済的安定性」を求めるようになります。
 ※ちなみに、詳細は省きますが、欧米では、結婚に求めるものは、「愛情」のみと指摘しています。これは、経済的安定性が、社会保障の一環として担保されているからです。

 このことからも、愛情がなくなったとしても、経済的安定性のために、離婚を躊躇する女性が大変多いと言います。

 人間の脳は、「複数のことを同時に行うのが苦手」であり、「愛情」と「経済的安定性」という複数のことを、同時に叶えようと思うと、ものすごい心理的ストレスがかかってしまい、逆に、結婚できなくなると指摘しています。

 「顔が良くて背も高くて、高学歴で年収1,000万円以上の男性と大恋愛して結婚したい」と、複数の異なる要素を全て叶えようとしてしまう、ほぼ不可能な幻想を真剣に求める婚活現場が誕生してしまうのです。

 「女性学の神様」と言われた櫻井秀勳ひでのり氏は、結婚に付ける条件は具体的かつ3つ以内にしなさいと指摘していましたが、思い当たる人は多いのではないですか。

この記事が参加している募集

読書感想文

これからの家族のかたち

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?