クリエイティブマネジメントのススメ7
クリエイティブ調査はマネジメントの宝箱です。
■皆さんに取ってのTVCMのクリエイティブ調査とは?
クリエイティブ調査というと、皆さんはどの様に捉えているのでしょうか?
現在の自分にとっては“宝の山”という認識となりましたが、
以前は、クリエイティブの成績表であり、我々の評価として捉えていて、
どちらかと言うと嫌い・見たくないモノでした。
多くの広告会社のクリエーターも好きではなく、
現在も拒否反応が高いのではないかと思われます。
昨年から調査会社のお手伝いをしているのですが、そんな中で、
クリエイティブ調査の意義・価値について私がウェビナーで
お話しする機会がありました。その時の応募総数が503名と
3桁に及びビックリ&驚いたモノでした。
それだけ、このクリエイティブ調査とその評価について多くの方が
問題意識を抱えているというのが分かりました。
基本的にクリエイティブ調査が行われる主な理由が、
マーケティング活動におけるお金の出所であるマーケッターに対して
完成した広告の出来具合を消費者の評価で確認や共有すること
だったり、オンエア後のレビューのため、次回のプランのためPDCAを
回すというのが主なところではないでしょうか。
メーカーによって、広告会社も交えて調査会社の報告会を受ける
といった事が行われているようですが、CMのこの点が良かった、
この点が悪かったなど調査表が示す数字に一喜一憂し、
決して和やかという雰囲気ではなく半ば反省会的なニュアンスを帯びた中で
報告会が進行していくということが多いのではないでしょうか?
何故なら、クリエイティブ調査の評価項目とその示す数値が何を
意味するのか?受けるメーカーの担当者も充分に理解しているとは
言いがたいと思います。
調査会社の方も、その項目の意味と数値が表す意味合いは
説明してくれと思いますが、それが、クリエイティブに対して何を及ぼし、
何を予告しているのかまでは語れていないと思います。
それはあくまでも調査をするという視点であり、実際にCMを作る、
組み立てていく経験も視点も持ち合わせていませんから説明しきれない
のもやむをえません。
だから、クリエーターにとっては、単なる評価の数字でしか意味がない
状態になってしまい、学校でもらった通信簿のように、
いわゆる成績としてしか捉えられず拒否反応に繫がるのだと思います。
この点は、自分自身も長い間、クリエイティブ調査の報告会に
出席していましたが、作ったCMを様々な項目で否定されている感じが
拭えず、気持ちの良いモノではなかった印象がいまだにあります。
そんな状態ですから、メーカーの担当者も、おそらく調査会社からの
その報告会が終われば、調査結果はデーターとして保存されるのでしょうが
振り返ることはないのではないかと想像します。
■クリエイティブ調査に対する変化と調査方法
このクリエイティブマネジメントのススメの2回目で、
休売現象を起こしたTVCMを分析したと書きました。
またこの時のクリエイティブ調査は、
決して芳しい評価でもなかったとお伝えしました。
しかし、
そのTVCMを自分なりに分析することで、クリエイティブ調査の結果の
中にはたくさんのサジェスチョンが隠れていることに気が付きました。
特に失敗したTVCMと上手くお客様を動かした販売良好なTVCMに
多く潜んでいます。
自分自身の分析法は、基本的に調査会社の調査結果を基礎として
活用しますが、それだけに頼りません。
すべてのCM映像を画像化して切り出します。
そこにナレーション、タレントのセリフを書き込んで、
演出コンテ状態にして、実際のTCVMを何度も見返し
お客様の頭の中に何が起きたのか?想像するというものです。
さらに、調査でも行っている、お客様がTVCM映像に反応した
調査DATAとも摺り合せ、自分の想像とお客様の反応の違いなどから
何故お客様は購買に至ったのか? それとも何故至らなかったのか?
さらに考察を繰り返します。
調査には、他にもたくさんのDATAがあり、当然フル活用しますが、
フリーアンサーは特に重視します。
何故なら、人間は思い出すより記憶に残っている部分を先に記入するので
こちらが行う画像分析だけは分からない反応を捕まえることができます。
書かれた項目が何故記憶されたのか?
それが態度変容に繫がっているのか?
などなど分析というか想像を巡らしました。
以上、主に自分で分析する時の手法ですが、さらに
過去に行ったクリエイティブ調査100本ほど多変量解析したのですが
自分自身の自己分析や、クリエーターとしてこうじゃないかな~と
類推してきたことがちゃんと裏付けられた結果が出てきました。
さらにパッケージデザインの調査で随分前から行われていた
アイポイントを追っかける調査もTVCMでやってみたら、これも類推の
裏付けとなったことと、何気なしに行っていた編集の妙味に意味があり
おいしさを増幅する編集テクニックとして確立することが出来ました。
こうなると、今度はクリエイティブ調査が楽しくなるのですよね!
これは、ある意味、クリエイティブの持つブラックボックスの要素を
オープンにする作業に繫がります。
自身、クリエーターとしてそれで良いのかな?と思ったりもしましたが
ブラックボックス、感性などに逃げ隠れしても、いずれはAIなどが
あぶり出してくるに違いありません。
そんなことになるぐらいなら、自分から扉を開けてどんどん形式知にして
しまえば、広告のプランナーや演出家はさらに奮起するでしょうし
クリエイティブが進化していくことに繋がるので良いと考えました。
まだ会社に勤務していた時に、
担当する数社の広告会社のCDや営業、ストプラなどに、
そのクリエイティブ調査の多変量解析のまとめを説明して
本来であれば広告会社がやらなければならないことですよね!
と驚かれました。
当然、社内の事業担当の役員、商品担当マーケッター達にも
同様の内容を報告したのですが、その報告後は、
広告オンエア後の販売推移などレポートを速報で頂けるようになり、
むしろ事業・マーケティング部門とも関係性が良くなりました。
現在、後輩達と広告会社で作るTVCMに、
説明した内容が充分に生かされているのを自宅のTVで
確認出来たときは、やって良かったと感じています。
■クリエイティブ調査の厳しい現実
現在、お手伝いしている調査会社の担当者は、とても熱心で
依頼するクライアントのTVCMをなんとかしたいと思って
前のめりで取り組んでいるのですが、
なかなか上手くいかないと言う話をうかがいました。
どうしてもメーカーは売りの数字が一番ですから
対処療法を、すぐ求めてくるでしょ?と聞くと首を縦に振りました。
クリエイティブ調査に対するメーカーの担当者の認識の違いでしかないと
感じますが、それだけクリエイティブ調査に期待するモノが
大きいのだと考えられます。
■クリエイティブ調査の可能性と難しさ
自分自身の経験から、クリエイティブ調査を上手く活用すれば、
少なからず、平均点以下を避けて平均点以上に販売貢献につなげることは
時間はかかりますが可能だと思っています。
まさにクリエイティブマネジメントなのだと思います。
しかし、これらの気が付いた、見つけたこの分析・調査・評価の仕方を
How toとして言葉だけで伝えるのは大変困難です。
何故なら、TVCMは全部オーダーメイドなので、クリエイティブ調査の
規定項目を見て簡単に分かるものではなく、探し出すものだからです。
オーダーメイドには、分析もオーダーメイドで対応しなければならず
やっぱり広告は手間がかかるものである、と言うのは
どうも変わらないようです。
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