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広告クリエイティブ調査はCMのDX?  その2

広告クリエイティブとデジタル
タイトルにもいれたこのDXですが、ウィキペディアで調べると
デジタルトランスフォーメーションとは、「ITの浸透が、人々の生活を
あらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説である。2004年に
スウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱したと
される、とありました。
広告、CMの世界では、IT・・・Information Technologyは画像・映像
加工においては、とてつもない進化が見られています。しかし企画となる
と非常にアナログというか人間臭く、とてもとてもホッとする世界でもあ
ります。私は、約38年、この世界と一緒に企業サイドのクリエーターと
ーとして仕事させてもらいましたが、その間に起きた変化はフィルムでの
撮影からデジタルカメラに変わり、照明もしかり、ビジコンもデジタル化
されるとクリアに見えて確認も容易に出来る様になりました。ラフな仮編
集も撮影スタジオで出来るようになり、プロセスとしてブラックボックな
部分が、デジタル化の流れを受けてどんどん見える化されていきました。
これだけ進化しているのですから、さぞかしスピーディーな制作状況なの
かなと思いたいのですが、手間の部分はそう簡単に消えません。
だから撮影そのものは、決して短時間になっているとは言えないかな・・・

デジタル化の流れの中で相変わらず変らないのが、やはり企画の部分です
販売の向上を願い、ブランド認知の向上を願い、タレントも含めて億単位
の投資(経費?)をTVCMという広告にかけるのですが、利益をだすため
に生産などの工程を見直し、円・銭単位でコスト管理するメーカー・企業
におけるこれらの地道な活動から見て見合う効果を出し切れているのか?
と問われると、厳しいですが広告宣伝担当者から笑顔は消えてしまいます
これだけデジタル化が進み、マーケティングも進化を遂げていながら、
このデザイン・クリエイティブの企画の領域は、相変わらずの状態なまま
で、私自身“企画にサイエンスを!”と強く言いたい訳ではないが、
このままずっと変らずにいけるのだろうか?と不安を感じるのは私だけ
だろうか?

デザイナー・クリエーターの不思議な壁
多くのデザイナー・クリエーターはクリエイティブに限らず、少なからず
調査というものを嫌がります。
私はデザイナーであり、クリエーターなので、クリエイティブをそんなに
簡単に理解してもらってたまるか!的な、突っ張りの様な気持ちはいまだに
残っていいます。そのくせ、分かって欲しいという気持ちも対比して大きい
かもしれません。それは何故でしょうか…?発想することの価値に自信を
もっている(不安を沢山抱えた自信ですが…)からではないのだろうかと
自問自答しています。常に作ったモノが評価される環境にあるため、ある
一定の裏表ある自衛的な心が動くのだと思います。
恐らく多くのデザイナー、クリエーターも同様ではないかと思います。
そういった不安定な心の動きをするデザイナー・クリエーターだからこそ
こう言ったクリエイティブ調査を信用していないというか、疑っている
というか、真面に向き合おうとする方がとても少ないと感じています。
かく言う、私も昔は同じ感じでした。
また、マーケッターのみなさまがデザイン・クリエイティブによく感じる
ブラックBOXは、むしろデザイナー・クリエーターの“みなさん、分から
ないでしょ“と、ヤバくなればそこに逃げ込んでしまえる都合のイイ
隠れ蓑となり安穏としてしまう。
逆に見れば甘やかされた状態にもなりかねない魅惑のBOXでもあると
言えると感じています。
私がその呪縛から解き放たれたのは、“その1”にも書いていますが、海外
で学んだ経験が私に大きな変化を及ぼしたと振り返って思います。

頭の中のトランスフォーメーション(変換)?
私は、もともと企業に属しているデザイナー・クリエーターなので、広告
会社のクリエーターの様に広く告げるでは目的を達することは出来ません
お客様の心w動かし販売の数字を上げる。その商品のファンになって頂く
ことを促さなければ、仕事をしたことになりません。
1回の広告で、上手くいかなかったね・・・とすることは出来ないのです。
常に100点。それを120点、130点と伸ばして行かなければならないの
です。結構厳しい仕事であったな~と今更ながら思います。
 
同じ会社で同じ商品の広告を長年担当すると、良い広告と振るわなかった
広告など、さまざまな結果が残ります。
勿論クリエイティブ調査による評価報告により、細かい項目からのお客様
のCM印象・購入意向など確認することは出来ます。
しかし、人間不思議なモノで、自分なりに反省するというか、何故このよう
な評価結果が出たのか? こうすれば評価が高まるとか、これはどうもお客
様が嫌がる傾向があるカットで、それは何をしていた時なのか、など演出さ
れた映像が記憶の中に溜まってくるのです。
匠と呼ばれるような方々の、どうすればこうなると言った経験から積み重ね
た熟練の技に昇華するように、その記憶が熟成して?いわゆる第六感のよう
になった様に感じます。
つまり、頭の中にあるコンピューターが、具体的に企画から撮影・編集した
数々の画像・映像の記憶と、そしてオンエアしたその結果とクリエイティブ
調査の結果を複合して、しかも数年の時間軸が加わり暗黙知に変換したこと
で得られた“後天的な感”と言えるモノになっていたのだと思います。
 
まだ企業に勤務しているときに、すでにデジタルデーターになっていた100
点以上のクリエイティブ調査の結果を多変量解析にかけてもらいました。
驚いた事に、出てきた結果は、私たちが普段から感じ・話しているコトを
実証してくれるコトが多く含まれていたのです。
デザイナー・クリエーターの“勝手な感”だと何度も言われたものですが、
なかなか説明のつかない画面構成や編集ポイントなども実証され、さらに
こうじゃないかと感じていた、外さない・売りを作れる広告の構造も確証
を持てるモノになりました。

クリエイティブ調査から、何を導き出すのか?
1回のクリエイティブ調査をいくらひっくり返しても、新しい売れる企画
の方程式は出てきません。メーカー・企業が言いたいことを伝えても、
売れません。お客様が聞きたいように作り替える必要があります。
これは広告会社のクリエーター・プランナーが企画してくれますが、
判断するメーカー・企業側に基準が無ければ、混迷するだけです。
その基準作りにクリエイティブ調査が活かせるのです。
“その1”にも書きました、上手くお客様を動かせたCMには、良いヒントが
隠れているはずです。何故ならお客様の心を掴み動かし行動まで導いたから
です。ダメなCMは、ダメなりの反応があり、クリエイティブ調査のデータ
ーは何かしら語っています。
提示されたデーターの結果を結果としてだけで受け止めてしまっては、
それまで。何も得るものはありません。
何故その結果が出ているのか、それに起因するだろう映像・音などから
類推するしかありません。
最初は、大変面倒くさい分析作業とも言えるでしょう。
心理学者でもないので、なかなかモヤモヤしながら分析を黙々と続ける
だけです。でも、慣れてくると撮影している時点で気が付く様になり、
過去に学びケアも出来るようになります。
不思議ですが、良い販売結果などをたたき出したCMはさまざまで決して
同じパターンではないのです。そこがCMの奥深いところです。
明るいCMだけが良い訳でも無く、暗いCMでも良かったり本当に
不思議です。
ですから、よく売れるパターンが見つかったらCMは全部同じになると
言う方がいますが、それは当てはまりません。企画の数だけ可能性は
あります。
さらに、その分析作業の恩典は、大外れするCMを減らすことが出来る
と言うことにも気が付きました。
つまり人が見て、不快に感じる、キョトンとしてしまうことを避けること
が出来るからです。
興味関心を途切らせることは致命傷となるので、それを避ける防衛能力
を高める策であると考えていただければと思います。
大枚はたいて企画制作してオンエアしたCMが役に立たなければ広告宣伝
担当としての面目丸つぶれなので、安定感にはつながると思います。
DXと書きましたが、適当にコンピューターが計算してくれるそんなもの
ではなく、「愚者は経験に学び、賢者は歴史から学ぶ」という言葉が
ありますが、その企画制作しオンエアした経験と残した販売結果と
クリエイティブ調査の歴史的データなど、全てから学べる宝の山
ということですね。

最後に、
「神は細部に宿る」という言葉がありますが、CMは細かい映像の集積、
しかも人間の目は見逃さないので、その細部をしっかり組み上げる必要が
あります。そうすれば完成度もアップするのです。
これを広告会社や制作会社、演出家などに託すメーカー・企業が大半だと思
います。
私はマーケティングの成果を形作るのは、クリエイティブによって表現に
なったモノがお客様の心に届いたときに起こる“反応”が作ると考えます。
その重要なクリエイティブは依頼主が作らせたモノであり、作れないから
任せるというスタンスではなく、依頼主として自らがクリエイティブを学び
知り・マネジメントするスタンスに立つ必要があると考えています。
そうすればクリエイティブは厳しい状況になるかもしれないが、揉まれ揉ま
れ、相互に、わかり合える環境を生み出すことで、クリエイティブの価値と
可能性を広げることになるだろうと思っています。
クリエイティブ調査を活かすのも、依頼主なのだと思います。

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