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【取材記事】ふるさと納税の仕組みを活用して一人親家庭にお米を32トン配布この活動をサステナブルなものにしていく挑戦が続く

株式会社アイモバイルでは、2021年12月、ふるさと納税地方創生協働ラボを設立し、産官学協働でふるさと納税を活用した社会課題解決の実証実験に取り組んでいます。
その第1回実証実験である「コロナ禍で疲弊したひとり親家庭を支援する事業」において、ふるなびクラウドファンディングを通じた寄附金により「つくばみらい市産米」を、
認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむを通じて、6,400以上※ のひとり親家庭に向けて発送をいたしました。※ 2022年4月時点
 
今回、取締役の文田様に、事業を始めたきっかけや、進めていく上での課題・今後の展望について聞きました。

お話を伺った方

株式会社アイモバイル 取締役  文田 康博 様


社会的な流れがきっかけとなり、「SDGsに対して私たちができることはなにか?」から始まったプロジェクト

mySDG編集部:今回、ひとり親家庭の方にお米を送るという活動をされたということで、その経緯をお話し頂けますでしょうか。
 
文田さん:経緯をお話する前に、私たちが企業として考えてきたことをお話します。
当社では、これまでにも社会貢献活動に取り組んではいましたが、それほど積極的に行っているとはいえませんでした。変化のきっかけは東証の市場再編でした。市場再編におけるコーポレートガバナンスコードの規範のなかで、サステナブルな企業活動をどの程度行っていくかを報告しなければいけないという点がありました。
また、もう一つの社会の潮流の変化にESG経営があります。最近では、投資家が、ESGを基にした活動・経営をしている企業に対して投資をするという社会的な流れがありました。
このような背景から、当社として取り組まなければいけないことを考えた結果が活動のトリガーになっています。
 
mySDG編集部:ESG経営の重要性が叫ばれるようになった、その流れで活動を始めたということだったんですね。
 
文田さん:はい。それがきっかけとなり、社内でたくさんの議論を繰り返しました。
その中で、企業は地域の資源を利用して収益を上げているため、その地域に対して貢献するのは、そもそも企業としての役割であり使命であるという考えが浮かび上がりました。そして次に検討し始めたのが、「SDGsに対して私たちができることはなにか?」ということです。当社はふるさと納税というプラットフォームを提供している会社のため、地域社会と縁の深い企業であり、その仕組み自体は地域に対して非常に高く貢献していると考えています。そのため、このプラットフォームを使いながらできることを検討し、アイデアを絞っていきました。
 
当社は、東京に所在するインターネット企業で、東京の資源を使っています。そこで東京に対して貢献できることを考えました。東京の社会課題を調べた結果、衝撃を受けたのは、貧困家庭が多いという事実でした。

東京は、ひとり親家庭の貧困層が多いという現実に直面

文田さん:日本の子供の貧困率は、およそ7人に1人が「相対的な貧困」の状態にあると言われています。特に、ひとり親家庭の2世帯に1世帯が相対的な貧困の生活水準となっています。コロナ禍の影響もあって、1日300円未満の食費で生活している方も非常に多くいらっしゃるのが現実です。そして、東京にもひとり親家庭がとても多く、コロナによって、そのような人たちがより苦しんでいる現状を、調査によって知ることができました。
当社は企業なので、収益の中からお金を提供することもできるのですが、それが正しいやり方なのだろうか、何が一番求められているのだろうと考えました。
実際、何が求められていたと思いますか?
 
mySDG編集部:「お米」ですか?
 
文田さん:実は、一番求められていたのは「私たちは一人ではない」と思えることなんです。誰かが私たちのことを支援してくれている、見てくれている。もしくは、声を上げればその声を拾ってもらえる。その気持ちがひとり親家庭の助けになっているんですね。
 
mySDG編集部:そうなんですね。その事実は、どのようにして知ったんですか?
 
文田さん:東京には、ひとり親を様々な側面から支援する団体があります。今回、私たちが協働で活動している「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」さんから、そのようなお話を聞きました。代表の方とお話をしている最中にひとり親家庭の親御様からお電話があり、今日食べるものがないという相談もありました。
そうした中で、私たち企業はどうすればひとり親家庭に寄り添えるのかを話し合った結果、「お米」にたどり着きました。
はじめは、当社でお米を買おうかと思ったのですが、そうすると当社が出せるお金が支援の限度になってしまいます。そこで、「お米による支援をふるさと納税のパッケージに入れることで支援の輪を広げる仕組み」を考えました。そこで、関東近郊で米を主力産業にしている自治体さんを探した結果、つくばみらい市に出会いました。市長とお話するなかで、つくばみらい市も課題をもっていることがわかりました。

地域の支援にもつながっていく仕組み

mySDG編集部:具体的には、どのような課題ですか?
 
文田さん:米を食べる人が少なくなってきていて、米の出荷量が減っているとのことでした。また、農家の若い担い手がいないことも課題になっています。
ところでつくばみらい市をご存知ですか?
 
mySDG編集部:いえ、つくば市は知っているのですが。
 
文田さん:そうですよね。つくばみらい市は、つくば市の隣にある市で、失礼ですが、そんなにメジャーではないんです。しかし、つくばみらい市産のコシヒカリは、全国第2位の生産量を誇り、食味分析コンクールで「極上」とされるくらいおいしいお米なのですが、認知がまだまだ低いため価格も安いんです。
そのため、ふるさと納税を通してお米を出荷する先やブランドをアピールする機会を作ることで、ひとり親家庭を支援すると同時に、つくばみらい市の農業支援にもつながる。つくばみらい市には実は米どころがあるということを、東京の方に知ってもらう機会にもなります。お店に並んでいてもそんなに注目してこなかった人も、支援したことによって、つくばみらい市産のお米のファンになると思います。
 
mySDG編集部:支援をすると自分ごとになりますね。
 
文田さん:そこで、ふるさと納税のプラットフォームを使い、お金を集め、お米の手配をして、ひとり親の家庭に送りました。初回は、12トンのお米を約2300世帯に送ることができました。

発送用の「つくばみらい市のお米」2324袋(約12トン)

PDCAサイクルを回し、会社として当たり前の活動にしていく

mySDG編集部:これまでで、約32トンのお米を6,400世帯以上へ寄附したという数字は、御社としてどう評価しているのでしょうか。
 
文田さん:実は、ちょっと少なかったと思っています。ふるさと納税が繁盛期である12月に合わせてプラットフォームの立ち上げを考えていたのですが、世間のふるさと納税の盛り上がりに埋もれてしまって、今回の取り組みの話が置いてけぼりになってしったのかもしれません。
 
一方で、結果の検証を行うために、大学と共同でラボを立ち上げました。今後、ひとり親家庭からの声を頂きながら、寄附者にもその声を届ける取り組みなどを行いながら、事業評価を行いたいと思っています。こういう取り組みは一回で終わってはいけないと思うので、評価をすることで改善をしていくというPDCAサイクルを回していきます。経済活動の一種として、会社としてはそれをやることが当たり前であるという流れを作っていきます。
 
mySDG編集部:そのような考えは御社の中で簡単に浸透しましたか?SDGsは理解できるが売上のほうが重要だ、という風潮もまだあるように感じます。
 
文田さん:そうですね。企業として定着させるためには、まずは、あくまでも会社が支持されるために必要な活動であり、経済活動であると認識してもらう。その中で、良い活動だなと認めてもらい、自分の会社のロイヤリティも高めていけると考えています。これを繰り返すうちに、定着して行くのではないかと思います。最終的には、それを当たり前にしていきたいです。

(写真左より)茨城県つくばみらい市 小田川 浩市長、株式会社アイモバイル取締役 文田 康博                      ※撮影時のみマスクを外しています

今後の展望

mySDG編集部:今後の展望を教えてください。
 
文田さん:まずは、この取り組みが広がることですね。活動の評価を行った後に、また新しい取り組みを行っていく。活動を一度で終わらせず、繰り返し行っていきます。
この活動が広がった先には、支援や寄附という文化が日本にもう少し根付いていけばいいなと思っています。
 
mySDG編集部:続報をとても楽しみにお待ちしております。本日はありがとうございました。


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