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ヤムーの大冒険 第1章 第2話 旅立ちと出会い〜1日目〜

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長い冬が終わり新芽が顔を出し、少しだけ暖かな風が吹き始めた春の始まりみたいな日にヤムーは大冒険の一歩を踏み出しました。

庭を出るとしばらく、ゴツゴツして硬く冷んやりしたアスファルトの道が続いています。
ヤムーは人間というよりミケ猫のミッケや恐ろしい鳥を警戒しながら、アスファルトと家の壁の隙間をひたすらに見通しの良い通りまで歩きました。

通りまで出ると、ヤムーは迷わず畑のある南に進みました。

畑へ着くとヤムーはひと休みしました。
この畑には色々な野菜が育てられています。
ヤムーの100倍くらいに大きくなる冬瓜や小玉スイカ、ブロッコリー、オレンジ色に花をつけるマリーゴールドなど様々です。
ヤムーの庭の主人も何年か前はミニトマトやラディッシュ、ナスなど野菜も育てていましたが、最近はハーブがほとんどになっていました。

ヤムーが畑を歩いていると、泣き声が聞こえてきました。雑草とマリーゴールドをかき分けその声の元に行ってみると、小さなひな鳥が羽に傷を負って倒れています。

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ヤムーはひな鳥とはいえ、怖かったので逃げようとしましたが、ひな鳥の痛そうな顔を見ると放っては置けず、助ける事にしました。ヤムーは畑の端に生えているアロエの葉を採ってきて、ひな鳥の傷ついた羽の泥や埃を綺麗にした後、傷にジェル状のアロエ液を優しく塗ってあげました。
ひな鳥は少しびっくりして泣き声が少し大きくなりましたが、時間が経つとその泣き声も和らいでいきました。
ヤムーが幼い頃、怪我をすると母親がいつも塗ってくれたのが、アロエ液でした。
母親はヤムーがまだ4歳(人間でいう)の時に、病気で亡くなってしまいました。それ以来、最近まで叔父さんと2人で暮らしていましたが、ヤムーの成長を確認出来た叔父さんは違う家に引っ越して行きました。
叔父さんの口癖は「ヤムー強くなれ」でした。
気の弱いヤムーを思っての叔父さんの心からの願いでした。ヤムーは1人で暮らすようになって自然で生きていく事の厳しさ、寂しさを実感しています。
その寂しさもあるのか、ヤムーは一晩中ひな鳥の羽の手当てをしました。いつの間にか寝てしまったヤムーが目を覚ましたのは暖かい光のさすお昼前の事でした。
ひな鳥は静かに不思議そうな顔でヤムーを見つめています。
ヤムーは寝ぼけまなこで、「羽痛くない?」と話しかけました。
ひな鳥は「痛みはほとんどないよ」と答えました。
「君は誰だい?いやっその前に僕の羽の傷を手当てしてくれていたんだよね、ありがとう!
昨日は痛すぎて大変だったよ。でも君がぬってくれたその葉の薬がとても傷に心地よくて、こんなに早く治ったんだね。本当にありがとう。」
ひな鳥は少し照れたようにハニカミながら笑顔をみせました。

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「僕の名前はヤムー、昨日そこの庭から大冒険に出たばかりのヤモリのヤムーだよ。」
「ヤムーさんかよろしく。僕の名前はチャッピー、スズメのチャッピー。」
「チャッピーか、可愛い名前だね。
こちらこそよろしくね。 」

ヤムーは少しドキドキしていました。
だってチャッピーは子供とは言え、ヤムーの天敵、鳥なのですから。
でもチャッピーの眼差しは素直で優しく、そんな不安もすぐにどこかへ飛んでいってしまいました。

ヤムーとチャッピーはまさかの友達になってしまったのです。

「チャッピー、せっかくお友達になれたばっかりだけど、僕はまた大冒険に出発しないといけないからこれでサヨナラだ。羽を傷つけないように気をつけるんだよ。じゃあね、チャッピーまた逢おう!」

するとチャッピーは恥ずかしそうに言いました。
「あの〜その〜、大冒険に僕も連れてってくれないかな?ヤムーさんお願い!僕も連れてって。
もう泣かないから。お願い! 」

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