生きづらさの正体。正体さえわかればどうということはない!【読書記録】推し、燃ゆ
(あまりお金をかけずに)自分を変えたい。
そういう時は本を読むのが一番。特に純文学がオススメです。
読書をすると、読んでいる本の登場人物の視点や心の中を追体験できます。
それによって自分の中で生まれた新しい感覚に気づく。それが本を読む前の自分から生まれた変化です。そしてそれこそが本が持っているパワーです👍
今日はそういった体験をするためにピッタリな1冊を紹介します。
2020年の第164回芥川賞受賞作の「推し、燃ゆ」です。著者の宇佐見りんはこの時21歳!!その注目を集める若手作家の視点から観た現代のリアリティ、それを追体験できる1冊です。
このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。
ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。
生きづらさ = 新しいリアル
学校にも、バイト先にも、自分の家にも居場所がない。
生きることに難しさを感じながら生きる高校生あかり。
生きることは苦痛で、自分の"推し"のアイドルのことを考えているその時間だけが唯一”生きる"ことを実感できる。
そのあかりのすべてである"推し"がファンを殴り、炎上した。
そこからこの物語は始まります。
”生きづらさ”とは何か?
生きづらさ
最近よく耳にするけど、いまいちとらえどころがないこの不思議な言葉。
まだ十分に言語化されていない、でも確実に感じている"現在のリアル"だ。
芥川賞受賞作らしく、この物語には登場人物は少なく、ストーリー展開といえるものはほとんどありません。
それなのに、その少ない材料だけで主人公あかりの立ち位置、心の中、重くのしかかってくるフィジカルな感覚にリアリティがある。
そのとらえどころのないリアルを捕まえてみごとに言葉に落とし込む著者の文才は芸術的でそれだけで読む価値があります。
生きづらさの正体
結論を言うと、生きづらさという問題はおそらくない。
なぜならあかりが抱えていると思われるものはたぶん解決できそうにないから。解決できないものを問題とするのは難しい。
じゃあ"本当の問題"はどこにあるのか?
仮に生きづらさがあるとしたらそれはどこにあるのか?
それはあかりの中でもなければ、周りの人の中にもない。
それはおそらくあかりと、あかりが接する他者との接点にあるとするのはどうだろうか?
人と人の問題は、いつも人と人の接点にある。
あかりが生まれたときから抱えているもの、それ自体は解決することは難しそうだ。でもあかりと他者の接点にある問題はまだ解決できる余地はある。
あかりの頭の中はこの生きづらさと推しのことを考えること、それでいっぱいだ
でもその推しがファンを殴って炎上した。
今後推しがどうなるかはわからない(それは本を読んでね!)が、それによってあかりの意識が他者との接点に向いた時、その生きづらさは少し具体化してたんなる困ったこと姿を変えるかもしれない。
困ったことであれば解決していく希望はある。
そんなどうしようもなさと、それ以上のポテンシャルも十分感じることができた1冊でした。人生をラクにする1冊。オススメです。
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