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自分が信じたいものを信じていけ!!!それが人間だもの👍【読書記録】黒牢城

他のことは何も考えずその小説、その物語の世界にどっぷりつかりたい。

そういうときは直木賞にノミネートされるような本を読むことが多いです。そこで今回はその直木賞を受賞した作品、2022年1月に発表されたばかりの最新の直木賞受賞作の「黒牢城」を紹介していきます。

2022年は始まってわずか二ヶ月ですが、文句なしで今年読んだ本のベスト(暫定)です。ひょっとしたらそのまま行くのでは?と思ってしまうほど、物語の世界に引き込まれました。面白かったです♪

<こんな人にオススメの1冊>
・余計なことを考えずに物語に集中したい
・いろいろあって一度頭の中を空っぽにしたい
・「羊たちの沈黙」のレクター博士とクラリスのやりとりが好き

このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。
本を読んだことで発見したことを整理しながらそれを記事にまとめて発信していきます。

孤独 × 孤高(荒木村重×黒田官兵衛)

舞台は、戦国の天正六年の冬、織田信長が天下統一に向けて快進撃を続けるまさにその時。摂津の有明城の城主"荒木村重"は、主君信長に反旗を翻したことで居城を1年以上も信長軍に包囲される。

その先の見えない長期の籠城戦を続ける村重が城内で唯一頼れる人間が、織田方の軍師で天才と称される"黒田官兵衛"だ。信長に反旗を翻した村重にとってはもっとも危険な敵となる。村重にとっては殺さねばならぬ男であって、それと同時にもっとも頼れる男。

この黒牢城は村重と官兵衛の物語。

その城内では、不可解な怪事件が次々に起こる。動揺した人心を落ち着かせるため、事件を解決するため、村重は自らが地下の牢獄である土牢に閉じ込めた官兵衛の元を訪れる。

光の届かない土牢から、その卓越した洞察力によってすべてを見通す官兵衛の助言によって、村重は怪事件を次々に解決し、困難を乗り越えていくていく展開。

村重の中で、官兵衛は殺さなければならぬ危険な男から、この有岡城でもっとも信頼できる男に、徐々に変わっていく。

暗く狭い土牢での官兵衛との対話、かけひき、そしてそれによって起こる村重の"心の動き"がこの作品の魅力のひとつです。

人の心は移ろいゆくもの

しかし、有明城は信長に包囲され少しづつ追い詰められていく。
ともにこの城を築いてきた村重を慕う人臣の心も少しづつ離れていく。
自分自身の分身とも言えるこの絶対的な城は少しづつ狂っていく。

それがわかる。信長に負ける時が確実に近づいている。
村重は城の天守に居ながら、その心は狭く暗い地下の土牢にいるようだ。
そしてその闇の中で唯一信頼に足るのが、土牢の中にいる黒田官兵衛。

誰が城内で怪事件を起こしているのか?その理由はなにか?
なぜ村重は敵である官兵衛を殺さずに土牢の中に閉じ込めたままで、その官兵衛は村重を助けるのか?
なにより、なぜ村重は信長に謀反を起こし"先のない戦い"に挑んだのか?

『むろん、ほかに語るべき者がおらぬがゆえ。』

黒牢城 著:米沢穂信

因果は”人の心”を通じて巡る。
信頼、人間の心は絶対的なものではない、常に移りゆくもの。
それが一通り巡りきった時、謎はすべて解き明かされる。そのラストは圧巻です。

人は信じたいものを信じる

信長に反旗を翻し勝ち目のない戦いに自ら挑む村重、
光の届かない土牢に捉えられながらも村重を助ける官兵衛。

彼らを突き動かしているものは何か?
答えはとてもカンタン。それは強く望むもの、極度の切望。

人は自分が信じたいものを信じて、信じたくないものを信じない。

人は合理的に考えてるようで、実はそれほど合理的に考えてはいない。
まず先に信じる心があって、その心を合理化するための理屈を後付でつくっているだけ。

『あるがままの姿で物事を見よ。』

自省録 第四章十一
著:マルクス・アウレリウス・アントニヌス

多面的、複雑に見えているようで実際にそうであったとしても、それを動かしている動力源はいたってシンプルだったりする。

信じたいから信じるものがある。だから行動する。

そう思うとなんか人生がラクになる。

【著者情報】
米澤 穂信(作家)
・2001年に「氷菓」でデビュー(第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞)
・2022年に「黒牢城」で第166回直木賞受賞
・その他の著書は「折れた竜骨」、「満願」、「王とサーカス」、「真実の10メートル手前」、「いまさら翼といわれても」、「Iの悲劇」、「本と鍵の季節」、「巴里マカロンの謎」など

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