見出し画像

自由でいることがしんどくなった時にこの1冊を読みます【読書記録】ブラックボックス

何をしても自由、どう生きても自由。もういい加減自由がしんどい。

そういう状況の中でもがく主人公を追体験できる1冊を紹介します。
2022年上半期の芥川賞受賞作「ブラックボックス」です。

芥川賞の大きなテーマのひとつが現代性です。現代をそれぞれの生き方で生きる私達にも共通するテーマはある。その共通のテーマ、つまり"現代性"が言葉に落とし込まれています。

このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。

<こんな人にオススメの1冊>
・いつも何をしても長続きしない
・「だれも自分のこと理解してくれない」と感じている
・「今のままではダメ」とは思っているが、でも何をすればいいのかわからない

何をしてもいつも続かない

自分の中の怒りの暴発をなぜ止められない。

ブラックボックス 著:砂川文次

主人公のサクマはどこに行っても人間関係のトラブルを起こし、自衛隊を辞め、正社員だった会社を辞め、
その結果として今は自転車便メッセンジャーをしている。

メッセンジャー便は成果報酬だから結果をだせば稼げる。
だから無茶な走りもする。

でも一生続けられる仕事じゃないこともわかっている。
しかも同棲しているパートナーがどうやら妊娠をしたらしい。

いい加減ちゃんとしないといけない。
でもなにをやっても長く続かない、なぜ?
どう頑張ってもうまくいかない、なぜ?
ちゃんとするってなんだ?

そのサクマが自転車での配達中にベンツにひき逃げされるところからこの物語ははじまります。

社会はわかりやすいものしか理解できない

今のままでいいとは思わない、でも辞めてその代わりになにをすれいいかもわからない。自分が社会に受け入れられていない。サクマにはそう感じながら生きているフシがある。

だからいつもどこかで行き詰まって怒りが爆発して抑えきれなくなる。

どこに行っても、どう頑張っても、何をしてもいつも長続きしない。

でもこれってそんなにおかしなことなのか?サクマにだけおきていることなのか?

たぶん社会っていうものは高校生レベルのことで成り立っていて、動いている。だからそれぐらいわかりやすいものにか理解しないし、そもそも理解できない。

そこを出発点として考えてみると、サクマが何をやって長続きしないのも、その結果何をすればいいのかわからなくなるものそんなに不思議なことじゃない。

一方社会でうまく行っている人たち、溶け込んでいるように見える人たち。
サクマからするとブラックボックスの中にいる人たち。
彼らは社会に受け入れられているというよりかは、どのようなものであれば社会が理解できるかを理解しているだけ。
ただそれを自分たちが所属している社会に提供しているだけ。

サクマだってそれができていないわけじゃない。ちゃんとやっている。

そんな自由な世界で生きるためには

単純なことしか理解できない社会で、複雑な"自分らしさ"を追求することはそもそも難しい。

そんな社会で、そんな世界でどう生きても自由、なにをしても自由なのが私たち。

じゃあどうすれば?

まずは社会がわかりやすいものしか理解できないものとはいえ、社会はたったひとつだけじゃない。ひとつがダメでもほかにもいくつもある。それを忘れないこと。

もうひとつは一度あえて自由の少ない社会、世界に身を置いてみる。

自由には見えない監獄があって、逆に監獄の中に入るとそこにも自由があるに気付く。あえて自由が少ない社会、世界に身を置くことで普段は気付かないことにも気付けるようになる。

いろいろと複雑ですが人生がラクになる1冊でした。オススメです👍

*自由が辛くなった時にオススメしたい記事

*プロフィール記事

*関連マガジン




この記事が参加している募集

AIを使えばクリエイターになれる。 AIを使って、クリエイティブができる、小説が書ける時代の文芸誌をつくっていきたい。noteで小説を書いたり、読んだりしながら、つくり手によるつくり手のための文芸誌「ヴォト(VUOTO)」の創刊を目指しています。