見出し画像

第1話 地上で溺れる

2015年11月。高3の秋。
僕は電車の中で溺れた。



卑屈。根暗。弱者。
中高一貫校で日陰者となっていた僕は、気づけば自身でさえも己を虐めるのが得意になっていた。
「自分でさえ虐めたくなるのだから、他人に虐められるのは当然」
そう納得することで自分を守っていたのだと思う。


完璧主義かつその主義通り物事を完璧にこなす父親を見て育った僕は
「父のようにならなければ」という焦燥感と
「父のような才能は持ち合わせていない」という劣等感を常に抱えて生きていた。
成績優秀な妹ばかりが評価され、自身が認められたという実感を得たことがまるでなかった(と、当時は思っていた)。

「いつか周りの人間に俺の事を認めさせてやる」

膨れ上がった承認欲求は、いつの間にか復讐心のようなものになり
その炎にいじめという薪を焼べられたはずが
理想と現実の乖離に耐え切れず鎮火していった。



6年間、自他共に虐められてきた僕は
気づけば限界を迎えていた。

ある日の朝、初めて(ではなかったが、これはまた別の機会に)精神疾患と
出会うことになる。




2015年11月。高3の秋。
僕は電車の中で溺れた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?