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第3話 2ねん1くみ


小学2年生。僕の人生における最大の汚点であるトラウマの元凶に出会う。
担任のM山という男だ。




新学期早々、このクラスにルールが設けられた。

「テレビゲームやそれに類する娯楽の禁止」

そんな"革新的な"教育方針を掲げた教師は
物珍しかったためか、早速保護者からの評判がとてつもなく良かった。

M山はその評判を隠れ蓑に本性を隠し、生徒たちを恐怖で洗脳していった。
躾という名の暴力で。


M山の説教のパターンはいつも決まっていた。

例えば、宿題を忘れた生徒がいたとする。
するとその生徒を教卓に一人立たせ、他の生徒全員に野次を飛ばさせる。
「なんでわすれたんですか」「あまえてるんじゃないですか」
M山も煽り、一層野次はエスカレートしていく。
そしてM山が最後に一言


「生きる価値のない、人間のクズだ。」


この世に生を受けて7年ほどの子供にこれを言い放つのだ。
嘲笑に満ちた顔で。

今度は別の生徒が立たされると、前回「躾」を受けた生徒は
自分以上の苦痛を味わわせてやろうと躍起になる。
「ひととしてどうかしてるとおもいます」「ふざけるな」
そしてM山の一言
「生きる価値のない、人間のクズだ。」


M山には、お気に入りの奴隷がいた。
煽てるのが上手いお調子者。文武両道の真面目君。人見知りの女の子。
これらの属性に共通するのは、「嫌われたくない」という意識が強いという事。
休み時間に肩を揉ませたり、一発芸をさせたり
とにかく楽しそうにふんぞり返っていた。

だが恐怖ですっかり支配されている僕たち2年1組の生徒は
親に報告しようなどという思考回路にはならなくなっていた。
完全に洗脳されていたのである。


とある日の給食の時間、4人グループで食べているうちの一人が吐いた。
つられて二人目、三人目も吐いた。
僕も耐え切れず吐いた。

その時僕は謎の危機感を感じ、咄嗟に食器を教室近くの水道で洗い席に戻った。

そのため僕以外の3人のみがM山に見つかった。


そして放課後、昼に吐いた3人は呼びつけられた。
教室を後に廊下を歩くが、背後からは怒号の声。

「吐くのはいけないことなんだ」

衝撃的な映像とともに、僕の脳裏にしっかり焼き付いた。


翌日、僕は給食を半分も食べられなかった。
吐くのが怖く、喉を通らないのだ。

給食の時間が終わり、M山お得意の「躾」が始まる。
「こいつが食べ終わるまで掃除を始めるな」
「残すなんて言わせねえからな」

周りの生徒も野次を飛ばしていたが、内容は全く覚えていない。





ある日、僕は学校を脱走した。
ここではないどこかへ行くために。


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