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第4話 しにたくない

ランドセル、教科書、そしてお気に入りの俊足。
全てを置き捨て学校を抜け出した。


行く当てが決まっていたわけじゃない。
ただここではないどこかへ行きたかった。

公園に行ってはただ一人遊具で遊び
ショッピングモールに行ってはおもちゃ売り場を眺め
妹が通っている保育園に行き、自分と同じ目に合ってないか窓越しに確認したり
ただひたすら安息を求めて、時間の余白を埋め尽くした。


少年が上履きのまま、平日の真昼間を徘徊している。
そんな異様な光景を大人が見過ごす筈もなく、
何度も大人に声をかけられた。
その度にまたあの監獄に連れ戻される恐怖に襲われ
力の限り走った。走った。ここではないどこかへ向かって。


彷徨い続けて気付けば夕暮れ時。
走り疲れた僕は家に帰った。
家には泣き腫らした顔をした母、安堵の表情を浮かべる父。
そして、M山がいた。

「どうした。何があったんだ。話してごらん。」
かつて聞いたことのない穏やかな声色。耳障りが悪い。胸がざわつく。
本音を言えば何をされるかわからない。

まだしにたくない。

今思い返すと、これも此奴の計画のうちだったのだろう。
「妹に会いたくなったから」
何とか絞り出した言葉がこれだった。



「明日、学校で待ってるからな」




次の日から、「躾」はよりエスカレートしていった。



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