部屋の中に現れたレストランが宝物ナイトをくれた
数日前の夜のこと。
ベッドの上でYouTubeを見ていると、ティムに
と尋ねられた。
まず、お家でコース料理にチャレンジするというそのアイデアが嬉しくてたまらなかった。
世界でひとつだけのお家レストランの幕開けだ。マーケットで食材を調達して秘密のご飯を作る。なんてワクワクな計画なんだろう。
私の相方を8年しているだけあって、この男はドツボを押さえにきた。その企画を聞いただけでも既にプレゼントだった。
私は即答でバスクチーズケーキ!!と答えた。
ブラウニーも大好きで捨てがたかったが、実は7年くらい前に一度二人で作ったことがあったのだ。電子レンジでできるブラウニーというレシピは、お菓子初心者な私たちにありがたいものだった。
夕方、部屋に戻るとふわりといい匂いがした。
テーブルの位置が変わっていて、真ん中にケーキのイラストが描かれたバースデーカードが置かれていた。
トントン、ジュージューとキッチンからおいしい音が聞こえてくる。
シェフは忙しそうに料理をしていた。
OKサインが出たのでお手紙を読むことに。
数字が129歳になってた。
ワシはフリーレンか。笑
一文字一文字が嬉しかった。
手書きのお手紙って普段伝えられない想いが綴られていて、何度も何度も読み返せるから最高のプレゼントだ。
”背いっぱいメニュー考えてました"
その一文に胸が高鳴る。
いったい何を作ってくれるんだろう?
そう思っていたところ、ポストカードの下にメニューが隠れていることに気付いた。
こちらはタイピングで作られたもので、まさかのフランス語(笑)
数日前にパソコンを手で当てて隠しながら何かを作っていたのはこれだったのかもしれない。
料理を作るだけじゃなくて、あらゆる方面からレストラン感を演出してくれて、その本気さにカンゲキした。
こうして私たちのお部屋に一夜限りのレストランLa Restaurant de Timがオープンした。そしてこのレストランは私に一生忘れられない思い出と味をくれたのである。
ハンドメイド感も可愛くて嬉しい。
メニューとバースデーカードをテーブルの上に置いてシェフの料理シーンを見つめることに。
トントントン ジュージューという音を楽しむ
前菜のドレッシングを製作中。
レモンビネグレッドソースというかわいい呪文のようなソースを作ってくれているらしい。
サラダのドレッシングは手作りするとますます美味しくなるんだよな。
レモンを一生懸命しぼるシェフを見つめた。
エアポッズの奥からはレシピ動画が絶えず再生されていた。頑張っているのが伝わって嬉しい。
こうして一品目がやってきた。
「お待たせいたしました、前菜のレモンビネグレッドソースのサラダでございます」とシェフ風に改まって唱えるティム。
完全にシェフになりきっていてツボ。
さらにツボだったのは、野菜の筋のようなものをタバコに見立てて一服のシーンがあったことだ。
束の間の休憩タイムにタバコを吸って空を一瞬見上げ、急いで厨房に戻るというシーンがリアルでジワった。本当におもしれー男(笑)
一品目はシャキシャキの野菜と正方形の歯応えのいいパンにレモンとビネガーのソースが絡んでお洒落な味わいだった。
一見脇役と見せかけた紫玉ねぎが見た目的にも味的にもいいアクセントを出していて、シトラスで刺激的なサラダだった(食レポ癖発動)
私はお酒が飲めないので
「どうぞ、水です。」
って言いながらワイングラスに入れて水を持ってきたのも笑った。
前菜のお供といえばバケット。
数分後、オーブンから焼きたてホヤホヤなバケットがやってきた。
オリーブオイルと黒胡椒を引き連れている。この組み合わせがたまらないんだよな…
皿のチョイスが斬新だった。
「お待たせいたしました。4種のキノコの森のスープでございます」
そう言われて運ばれてきたスープの味を私は一生忘れないだろう。
キノコをこれでもかというくらいふんだんに使ったクリーミーなスープは、一言で例えるなら旨味の大爆発だった。
メニューの名前も好き。
キノコの柔らかくも歯応えのある食感が、絶えず旨味を爆発させながら楽しませてくれた。
クリーミーなスープをスプーンですくってキノコと一緒に食べると、メニューの名前の通り美しい森を感じることができた(笑)
バリエーション豊富なきのこが大集合して力を合わせたらここまで旨味がアップするのか…
そして何より食感がブラボー。
素晴らしいオーケストラの演奏後に思わずバッと立ち上がって「ブラボー!」と叫んで拍手したくなるあの衝動に駆られてしまった。
ちなみにキノコのスープといえば
2年前にティムのお誕生日に行った小さなレストランで変わったキノコのスープが出てきた。
金魚すくいみたいな透明の袋にキノコスープが入っていて、深くて窪みのあるスープ皿の上にパチンと切って召し上がってくださいと言われたのだ。
「へー、変わってるね」と言いながら一口飲むと
「わあ、美味しい…」
と思わず二人で目を合わせたのだった。
「あの時のきのこスープを思い出すな」
私は言った。
「だからキノコスープを作ることにしたんだ」
ティムは言った。
思い出にインスパイアされて出来上がった一品なのだと知って、きのこスープがさらに温かく、美味しく感じたのだった。
メインディッシュが顔を出したとき、私は思わず大きな声で叫んだ。
まさかこんなにも大物な肉がお家に現れるとは….
シェフは私の予想を遥かに超えてきた。
ふとマーケットで重い買い物バッグを持ちながら買い物して回るティムの姿が思い浮かんだ。
こんなにも大きくて美味しそうなお肉を買いに行ってくれて本当にありがとうと思った。
大きなお肉に塩をまぶした後、シェフは特別なソースを作り始めた。
以前親友がこのソースを作ってくれて美味しかったから真似したらしい。
お手紙に”背いっぱい考えました”と書かれていた意味が伝わった。
思い出の味を再現しようとしたり
親友が作ってくれたソースを作ってみたり
私の大好物を寄せ集めたり
その言葉が至る所で体現されていて
何度「嬉しい」「幸せ」「ありがとう」と言ったか分からない。
それくらい一夜限りのレストランは私に喜びをもたらしてくれた。
ソース製作中のシェフ
味見をして確かめるシェフ。
ミディアムレアに慎重に焼いたお肉がトントントンと食べやすいサイズに切られていく。
食べるのが待ち遠しい。
こんなにもたくさんお肉を乗せてくれるなんて、なんて太っ腹なレストランなのだろう。
お肉は上品でボリューミーな味わいで、噛むと肉の旨みがジュワァ〜と広がり、ガリガリとまぶした塩との相性が抜群だった。
うーーん最高、、、
うっとりしながら味わっていると
シェフはノートとボールペンをサッと取り出し
「本日の請求書でございます」
と言ってペイチェックを渡してきた。
しかもUSドルらしい。
まさかペイチェックの演出までくるとは(笑)
冗談はさておき ♪( ´θ`)ノ 笑
メインディッシュが終わり、コース料理はデザートタイムに突入。
デザートのバスクチーズケーキは一緒に作ろうと誘ってくれた。
この提案も嬉しかった。
そういえば最近「バスクチーズケーキを作ってみたい」と言ったことを思い出す。
ティムは口下手で不器用だけど、昔から私ですら覚えていない言動をしっかりと覚えている。そういうところが大好きだ。
ホールケーキは一夜で食べきれないだろうから、カップケーキサイズの小さな丸を5つ作ろうかという提案もものすごくナイスアイデアだ。
彼はチーズケーキの生地を用意しながらラズベリーソースを作り始めた。
東京に2人で住んでいた頃
近所に素敵なおじいさんのジャズ喫茶があって、私たちの楽しみのひとつは夕飯を食べた後にそこでチーズケーキを食べに行くことだった。
そこのチーズケーキがものすごく美味しくて、ラズベリーのソースと絡めて食べると最高だったんだよな。
そこからインスパイアを得てラズベリーソースを作ってくれたティム。
おかげさまでメニューを通して特別な思い出をいくつか振り返ることができたよ。
カップケーキの中に収まったチーズケーキの生地は、時間が経つにつれてケーキのような風貌を見せ始めた。
さらに時間が経過すると、バスク感がみるみると出てきた。
1時間が経過し
バスクチーズカップケーキの出来上がり!!!
初めて作ったバスクチーズケーキは、新たな思い出の味を贈ってくれた。
表面がカリッと焦げていて
中はまろやかなチーズな風味で
味変で甘酸っぱくてフルーティーなラズベリーソースと一緒に食べるとそれもまた美味…
作ってもらって、一緒に作って、出来立てを食べて「おいしー」って叫んで
その瞬間がどれだけ幸せだったか
こうして、一夜限りのレストランのコース料理ショーは幕を閉じた。
誕生日の日に現れた世界にひとつだけのレストランのことを私は一生忘れないだろう。
繰り返し思い出してはニンマリしようと思う。
この夜は私にとって宝物ナイトになった。
私は今まで
恋愛というものは出会った頃の好きが一番強く、熱く、だんだんと落ち着いてくるものとばかり思っていた。
でもティムは
出会った頃も好きだったけど
今の方がもっと好き。
ニュースで毎年のように聞く
「今までで一番の猛暑日です」
という言葉のように
私のティムへの愛も毎年アップデートされ続け
「今日が今までで一番好きです」
になっていく。
改めて、ティムシェフ
私の29歳初日を宝物ナイトにしてくれてありがとうな!!!
〜番外編〜
7月14日。この日はメルボルンで出会った大好きな女友達と一緒にカフェに行きました。
彼女の誕生日は私と数日違いなので、プレゼントを渡し合いました。
プレゼントを渡し合おうという話はしていなかったけど、二人とも「実は〜…」と言ってカバンからゴソゴソと何かを取り出し始めた(笑)
私はターコイズブルーとゴールドのピアスをいただきました。
ターコイズブルーは私のお気に入りの色なので、色といい形といい直球ど真ん中ストライクで、とても嬉しい贈り物でした。
誕生日当日の朝は、いつも通り大好きなカフェに行きました。「いつもの」が心地良くなってきたお年頃でございます。
お昼はティムがマーケットに繰り出している間、散歩をしながら大好きな街『フィッツロイ』へ。
前から行ってみたかったカラフルな世界観のカフェに飛び込み、ブラックコーヒーを飲みました。
ひとつひとつの席にカラフルなお花が置かれていて、癒されたし真似したくなった。
iPadで原稿のようなものを書いていた男性。
いいな、私も今度ここで作業しよう。
レインボーのキャンドルを1つ買ってみた。
好きな色は何?って聞かれた時、レインボーと答えてもいいのなら、私はそう答える。
だって、どの色も綺麗なんだもん。
お花屋さんに入ると豊かさがチャージされる。
本当は買って帰りたかったけど、一輪のものがなくどれもボリューミーでまた今度にする。
文房具屋さん巡りも楽しんだ。
ビンテージプリントが気に入って、世界地図をひとつ買ってみた。
マーケットで古い額縁を買って飾ろう。
トロントでできた友達がメルボルンに来てくれるので、小さなプレゼントを用意した。
もっとプレゼント感を出すために、赤いリボンを買った。リボン大好き。
家に帰ると、外出中のティムが机にカヌレの差し入れをしてくれていた。嬉しくて紅茶を淹れた。
レインボーキャンドルを灯して、少し魔女の宅急便を鑑賞。魔女の宅急便大好きなんだよね。
仮住まいだとしても、自分の城を築くことを忘れてはならない。
世界地図、ずっと欲しかったの。
好みのものをようやく見つけた。
訪れた国にマジックペンで印をつけていくことにした。メルボルンにも早速黒丸を。
一生かけて、いろんな国を訪れるぞという意思表明としての世界地図。
黒丸でいっぱいにすることがゴール!
ということで
お誕生日関連のことは書き切った!!!
29歳もワクワクでいっぱいにする☺︎
The journey will be continued…
サポートはその日一日が一瞬でハッピーになるくらいめちゃくちゃ嬉しいです♡届いたんだ...!!書いてよかった...!!って喜びを噛み締めます。