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思い返せば

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2021年5月の記事一覧

閉鎖病棟②

閉鎖病棟②

前回のつづきです。前回はこちらから。

境界性人格障害(通称ボーダー)、解離性健忘、適応障害、〇〇(薬物の成分)中毒。4つも病名がついてしまったと当時はめちゃくちゃに落ち込んだ。が、きちんとした病名がやっとついたおかげで「自分はまともな人間ではないんだ!良かった!」という謎の嬉しさもあった。

ボーダーというのは簡単に言うと性格の極度な歪みからくる病気。診断基準はDSM-5(精神障害の診断基準)に

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閉鎖病棟①

閉鎖病棟①

前回の続きです。前回はこちらから。

ハッと目を開けたら知らない天井だった。天井の隅には監視カメラのようなものがついていた。看護服の女性に「鎮静剤を打っているのでしばらくは動かないでくださいね」と言われ、病院にいることが把握できた。ただ身体はどこも痛くない。ホームに飛び降りたはず、電車に跳ねられたはず。頭がはてなマークでいっぱいだった。

精神科の閉鎖病棟に入院するにはおおまかに3種類の方法がある

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薬物乱用

薬物乱用

前回の続きです。前回はこちらから。

「この仕事つらいじゃん?だからさ〜私これやってんの。かのんちゃんもどう?」パケに入った白い粉が目の前で揺れた。パケを持つその腕には大量の生傷が見えた。風俗の待機室でよく一緒になっていた女の子が私に勧めたそれは高校の「薬物乱用防止教室」で聞かされた例の薬物だと確信した。「それはまずいんじゃない?」「じゃあこれは?これならドラッグストアでも買えるよ」と瓶に入った錠

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特別な空間

特別な空間

前回の続きです。前回はこちらから。

そんなこんなでファミレスでバイト、親に隠れて風俗でバイト、空いた時間に学校へ行くというなんとも不自然な生活を続けていた。

高校生活は周りの友達が学校に来なくなってから私もだんだん行かなくなったが、物理担当のO先生だけはずっと私を気にかけてくれていた。

学校に来て授業をサボる私を見つけては、普段は入れない物理準備室に私を招いて「コーヒーしかないよ」と理科の実

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生きた心地

生きた心地

前回の続きです。前回はこちらから。

2日後の初出勤まで、この大きな黒い秘密を自分一人で抱えられず、Kやそれ以外のネット仲間に話しまくっては気を紛らわせた。Kは「そんな心配することないよ〜ウザイ客とかいるけど大丈夫だよ〜」みたいに言ってたと思う。

そして来てしまった初出勤。金曜日の出勤だった。今でもよく覚えている。高校とは逆方向の電車の中で、私の目の前には今から登校する女子高生達が数人いた。「担

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