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ワインの欠陥臭って?6つの種類を解説


今回は欠陥臭についてのお話です。
うまくまとまった冊子があるのですが、それを捨てたかったのでここにまとめることにしました。

みなさんはレストランやバーでソムリエが注いだものをお客さんがチェックしているといった姿を見たことがあるでしょうか?

見たことある方、やったことある方いらっしゃると思います。
これをスマートにできたらと思ったことがある方もいたかもしれません。

この行為は何をしているのでしょうか。

頼んだワインが美味しいかどうか?それとも腐っているかどうか?そもそもワインって腐るのでしょうか?

美味しいかどうか、ダメになっているかどうかというチェックというのは大方正解ですが、一言でいうと「欠陥臭があるかどうか」を確かめているのです。

美味しいかどうかというのはかなり主観で、それで文句を毎回つけられていたらお店も大変ですからね。

欠陥臭があるかどうかというのは客観的評価、ある程度認識が共通でなければなりません。


すると欠陥臭なんてわからない。そもそもなにが欠陥なのかというのが次の問題になるかと思います。

ここではそんな欠陥臭の種類を取り上げていきたいと思います(6番目だけ読むと早く終われます。)。

1. 酸化

管理の悪い古酒や、造りの時点での過度の酸化が欠陥臭を生みます。
古酒で起こりがちなのは、酢酸と酢酸エチルによる臭いです。
酢酸は言わずと知れた酢のようなツンとした臭いが、酢酸エチルはインクや除光液のような臭いがすると言われています。
個人的には酢酸エチルは小さいころ遊んでいたプラバルーンのような臭いだと思っています。

これは貯蔵の管理状態だけでなく、造りの上でも微生物管理(主に酢酸菌)が甘いと起こります。

2. 揮発性フェノール

揮発性フェノールはこれまでの記事でもよく出てきたビニルフェノールとエチルフェノール、それの類似化合物であるビニルグイアコール、エチルグイアコールのことを指します。

これは完全に造りの段階の微生物管理の悪さによって生じます。

ビニルフェノールは薬局の臭いといわれ、エチルフェノールになると馬小屋のような動物臭がしてきます。エチルグイアコールの方は、スモークのような臭いがします。

3. カビ臭

カビ臭は収穫時のブドウの状態が主に影響して生じる匂いです。
収穫前の雨や過湿によるカビがこの匂いを生み出します。
化合物としてはジェオスミンが挙げられます。
これは地面や堆肥の臭い、土臭いような感じです。

4. 未熟臭

未熟臭は以前取り上げたメトキシピラジンを筆頭とする化合物群で、未熟な状態での収穫に伴う匂いです。

これは否定的にも肯定的にも取られる香りでもあるので一概に欠陥臭とは言えないです。なにせ私は未熟臭であるピーマン香は比較的好きですから。

5. 還元臭

還元臭はH2Sといった硫黄化合物による臭いです。

H2Sは温泉でよく感じるあれです。腐った卵。

これは酸化防止剤である二酸化硫黄の添加や栽培の硫黄混合物のスプレーを元に醸造過程で生成されます。

他にも硫黄系化合物として、エタンチオール、メタンチオールなどがあり、これらは茹でキャベツ、玉ねぎの臭いと言われます。

これらは醸造過程だけでなく、スクリューキャップの方がコルクのワインより起こりやすいなど、酸化還元状態が影響して引き起こされる匂いです。



ここまでの欠陥臭に関して正直ピンと来ない人の方が多いと思います。

こればっかりは飲んだ経験値と、その時に横に教えてくれる人がいないとわからないことですから仕方ありません。

けれど心配しなくて大丈夫です。

これらの欠陥は醸造家、栽培家などの造り手、ソムリエなどが知るべき欠陥臭でしかないからです。

もっと言うとこれまで出してきた欠陥臭があっても、レストランで「ノー」を突き付けることはあまりないと思います。

というのもここまでに説明した欠陥臭は造り手の個性という言い逃れができるからです。これを造り手の個性と言うのには個人的にはかなり否定的ですが。

もちろんレストランはサービス業ですから、「ノー」を突き付ければ変えてくれるところも多いでしょう。
けれど上記の5つに関しては泣き寝入りすることが多いと思います。

一方で、完全な欠陥臭として「ノー」を突き付けることが許されているものがあります。


6. TCA(2,4,6-Trichloroanisole)

これが一番大事です。コルク臭とも言われています。
この発生頻度は一部では10%に及ぶとも言われていますが、Christian E Butzke教授によると、1%にも満たないそうです。

ともあれこの匂いだけはレストランで見つけたらためらうことなく「ノー」と言って大丈夫です。

これはコルクや醸造場の木材に一定割合でTCAという物質が混入してしまうことによって起こります。

この物質はかなり臭いを感じる閾値が低く、ワインを完全にダメにすることも多々あります。

臭いとしては濡れた雑巾や段ボールと称されることが多く、この匂いがあると果実の香りや、樽の香りなどが完全にマスクされてしまいます。

この匂いに関しては造り手のワインスタイルだということは許されず、レストランに非があるわけでもないのにレストランはワインを取り換えなければなりません。


というわけでここまで6種類の欠陥臭について軽く触れてきました。
特に最後のTCAは消費者にとっては一番重要な欠陥臭という話でした。

とは言いつつ私はTCAにはかなり鈍感で、周りが言っていたら「そう言われれば」というぐらいにしか感じません。

つまりこれらの臭いの感じる度合いは本当に人それぞれですし、人によっては臭いを感じる受容体がない場合もあります。

さらに言うとワインは何千という香りの集合体です。

そのため先に挙げてきたような臭いがダイレクトにするわけではありませんし、未熟臭のようにポジとネガの中立な香りもあります。

なので経験しながら学びつつ、わからなくても悲観しないということが大事だと思います。

むしろ経験を積んでもわからないなら人よりおいしく飲めるワインの選択肢が多いことを喜びましょう。

ということで最後にまとめておくと、

欠陥臭には色々種類がある。

そのうちTCA(濡れ雑巾)はレストランのチェックのタイミングで「ノー」と言えるので知る機会があれば覚えておいて損はない!

以上欠陥臭に関してでした。

この欠陥臭に関してをもう少し深堀した記事も書こうと思いますのでよろしくお願いします。

質問や意見はコメントまたはTwitter(@WinoteYoshi)までよろしくお願いします。


これからもワインに関する記事をuploadしていきます! 面白かったよという方はぜひサポートしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。