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感想 夏の体温  瀬尾まいこ  圧倒的に読後感の優しい。とてもいい気分にさせていくる小説たちだった。

ダウンロード - 2022-06-25T134939.846

短編集ですが、三作目はちょっと・・・。
「夏の体温」と「魅惑の極悪人ファイル」はとてもいい。

表題作「夏の体温」は、中期入院している小3の男の子の話しだ。
そこにくる子たちは小さい子が多いし、入院期間も短い。
同い年の子が二泊三日で検査入院に
この物語の核は、その子との3日間だ。

その時間は、まるで修学旅行のように別世界で楽しくて思い出となる出来事だった。

まず、この言葉に注目したい。
彼は長期入院している。親は優しい。

「許されることが多いことは、本当は悲しいことかもしれない」

これを小3の男子が吐くという意味を考えなくてはならない。
望めば何でも与えてくれる親がいる。
長期入院が彼にとって、どれだけ負担であるかがわかる。

彼は、ストレスを抱え込んでいた。
だから、誰もいない夜。
みんなの部屋に行き、おもちゃの箱をひっくり返す。
鬱憤ばらしだ。

それは翌日には何事もなかったかのように戻っていて、誰もしからない。

彼にとって癒やしは、みその さんというスタッフの口癖だった。

「たぶん・・・大丈夫」

この言葉を聞くと癒やされる。

せっかく知り合った友とも別れる時がきた。
ラストシーン
彼は、その日も深夜に共有スペースに行き
おもちゃの箱をひっくり返す
そこにあるものがあり、それは友達の置き土産なんだが
感動ポイントでした。

「魅惑の極悪人ファイル」は、作家になろうという女の子が
悪人を描けと出版社に言われ、それで悪人と言われている男を知り合いに紹介してもらい
その男に取材する。交流する話しだ。

ストブラというのが男のあだ名です。
ストマックブラック。腹黒。

本棚の本のほとんどが他人から借りたままのものだった。
それに気づくと、ストプラは古書店に売払い証拠隠滅を図ろうとする

しかし、それが犯罪だと女の子に指摘されると中断し
すべての本を借りた人たちに返すのだった。

このあたりから雰囲気が変化していく。

高校時代のあだ名は「ぎぜ」。偽善のぎぜ。
このエピソードがとてもいい。

高校の部活で暴力とかすごかったらしい。
それで彼が部長の時、そんなのなしにしてフレンドリーな雰囲気にしたら
強かった部活がめっちゃ弱体化したという話し

みんなに恨まれて 偽善者 と言われてた。

そう、万事がこんな感じなのだ。
彼はどちらかというと善人だった。

出て来るエピソードは、彼の魅力的なものばかり。
2人の優しい会話
彼の気づかい

もっと、この2人の世界の中で漂いたいと思った。
いい作品でした。

2作品とも読後感は最高。


2022 1 3
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