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感想 蜩ノ記 葉室麟 静かな物語の中に、たくさんの思いが込められている傑作の直木賞受賞作品。



最近読んだ時代小説の中では圧倒的な面白さでした。
おすすめです。


友と喧嘩をし隠居させられた男は、家老の密命を受けてある男の監視任務につく
男は、お家の正史を書く仕事をしている元重役
殿様から10年後に切腹を命じられた男 戸田秋谷

この監視役の視線で語られる、この田舎暮らしは

侍とは何か?
人は、どう生きるべきか?


を問うてくる。

戸田が、罪を問われている事件は
殿様の側室が生命を狙われた事件に、戸田が居合わせて
彼女を一晩守った
彼女と一晩過ごした
それが不義密通として疑われたのだった

もちろん、何もない
むしろ、敵勢力から殿様の最愛の人を守ったのである。

しかし、戸田も側室も罪に問われた。
すごく理不尽だ。

そんな罪人である戸田に
大切な正史の編纂を任せたのも殿様だ

本書は、ミステリー形式でもある

どうして、戸田に正史編集をまかさせたのか?
どうして、殿様は、戸田を許さないのか?

前者は、今の殿様の母親
正室の秘密に関係してくる
ミステリーなので、詳しくは述べないが面白い

もう一つの問い
つまり、どうして戸田は最後まで殿様に許されなかったのかということだが
こちらは、本書では答えは提示されていない

しかし、戸田の守った側室の話しやら、戸田の思いをつなぎ合わせると何となく見えてくる

その側室は、殿様が本当は正室にしたいと思うほどの大切な人だった。
そして、彼女は元は戸田の家の奉公人の娘だった
彼女は密かに戸田に恋心を抱いていて
戸田のほうも同じ気持ちだった

たぶん、殿様は気づいたのだと思う
二人の気持ちに
だから二人を処分した

だが、側室のほうはすぐに罪をないことにされた
しかし、戸田だけは許されなかった
そのまま殿様は死んでしまった。

殿様にとって戸田は、正史をまかせるほどに頼りになる男だった
故に、許せなかったとも思えるのです

人間の嫉妬心ほど目を曇らせることはない
そう感じました。



2023 1 9
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