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ディアマンテスは「勝利のうたを歌おうよ!」と歌った【7/27広島戦●】

喫茶「まるこちゃん」のおじいは、「ディアマンテスが来るさー」と、うれしそうに教えてくれた。「東京の人は知らんかねー」と、添えて。

「東京の」私は知らなかったのだけれど、とにかくその「ディアマンテス」が来るフェスに行くことにした。そう、日本中がフジロックで盛り上がるちょうどその頃、宮古島でもフェスが行われていたのである。

「オリオンビアフェスタ」の文字が、昭和のゲームセンターのようにキラキラと輝くその「フェス」には、観光客というよりも地元の人たちがたくさん来ていた。

おじいが教えてくれた「ディアマンテス」のライブは、大盛り上がりだった。

その一年に一度のフェスを心待ちにしてたかのように、おじいもおばあもギャルもお父さんもお母さんもこどもたちもみんな、うれしそうに笑い、踊っていた。

子どもたちは、赤とシルバーのかっちょいいネイルをしたおばあからかき氷を買い、私はオリオンビールを飲み、宮古の夜空に響くディアマンテスの曲を聴き、そしてヤクルトの速報を見ていた。ヤクルトはもちろん、2点先制されていた。そう、ヤクルトが2点先制されるのは世の常なのだ。

さらに言うまでもなく、「いっっっっつもバティスタ!!」に、ホームランを打たれるのだってもちろん、世の常だ。もはやそんなことで、絶望している場合ではない。地球は今日も、同じように回っているのである。それはここ宮古でも、変わることはない。

神宮で花火が上がる頃、宮古のそのフェスでも花火が上がった。

息子は「神宮の方が花火おっきいけど・・・でも星と一緒に見えてきれいだねえ!」と言う。

息子の言う通り、宮古島の星空に上がるそれは、なんだかとてもノスタルジックで美しかった。島の人たちはにこにことそれを見上げていた。

この島の人たちはきっと、このフェスとこの花火を、楽しみにしている。一年に一度の、この日を。少しの、誇らしさのようなものと共に。

この島にはこの島の、人生がある。

そしてこの島で毎日毎日野球の試合を見ている自分がいる。ここに来てまで、と、思いながらそれでも、日々ヤクルトの試合を見る。そしてヤクルトはだいたい、負ける。そう、今日も負ける。

だけど、この島にも花火は上がる。神宮と同じように、夜空に向かって。全ては何かに、きっと、繋がっていく。

自分の人生が重なり合う瞬間を、少し思う。島の生活を、人生を思う。

ディアマンテスは、「勝利の歌を歌おう」と歌っていた。息子は、隣の広島ファンのゆずこ一家に、「今日はカープの勝利の歌だったねえ」と言う。「でもどっちか片方しか勝たないしねえ」という。そう、勝負はどちらか一方しか、勝つことができない。

でも今日負けたチームが、明日勝つことだってきっとある。今日泣いた誰かが、明日笑うことだってきっとある。みんなが心の中に、宮古の人にとってのこのお祭りみたいな、喜びと誇りを持つ限り、明日は少し楽しみなものになる。そういうのをきっと、希望と呼ぶのだろう。

去年同じように、宮古島でゆずこと一緒に見たカープ戦で、当たり前のように2連敗した後、チームを救ったのはじゅりだったな、とふと思い出す。またあの日みたいなチームの笑顔が見られるといいな、と、私は宮古の夜空に思う。




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