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Twitter詩

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【短歌】夏であることの意味。

【短歌】夏であることの意味。

空中にふゆうしている僕たちは鳥を鳥だと思わないように

雑踏のなかで寂しい貝になる、それでそれでって続きは言わない

目だけをね、覚ましてしまって僕たちは海岸線にたましいを置く

けたたましいけたたましさの中にあるたましい掬い取って青いね

感情は暴力だよと君が言い、なぞらず崩しているよオリオン

むささびが飛んでいる夜に吐いた嘘、今も元気にしてるだろうか

黒糖を宝石みたいに食べること羨ましくて

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【Twitter詩】2023/08/21

【Twitter詩】2023/08/21

名前を愛していること。形づくることの麓に、わたしたちは暮らしていて、意識を保つための硬度、それは口に含むと冷たいね。冴えざえとした、はっきりとしたものを自らの光として、血流を回している。わたしは風になる。背景としたものが、その他すべてにとっての拠り所だとしても構わない。構わないからなり得た、この体を、今静かに折り畳む。

Twitter詩「ゆうのゆうれい」

Twitter詩「ゆうのゆうれい」

 
わたしの髪はゆうれいの手
さらさらと水が流れる
なにかの原石を煮詰めている
わたしは夕方に悲しくなる
電車も人も走り去ってしまう
ゆうれいだって夜がこわいから
煮詰めた原石を川でひやしている
ぱきんと割れてなにかうまれる
なにか、なにか、なにが輝く?
つかれてしまって猫の背すべる
電車も人も走り去ってしまう
もうほとんど近くなる雨の音
わたしの影がうごめいている
街は天使にせっぷんされる

Twitter詩「北国のはる」

Twitter詩「北国のはる」

 

かじかむ手先をいたわって
コンビニでコーヒーを買った
まだしろい吐息の粒や
カップのくろい水底に
ふと 花が浮かぶまぼろしをみて
じぶんのせっかちに苦笑う
 
太陽が3月にするあくびのせいで
北国はまぼろしに包まれている
 
お山はまだねむそうだし
道端で雪はがんこにふんばる
小鳥とにんげんたちだけが
せっかちに巣をみつくろい
カラスは退屈そうに
ひろすぎる空を泳いでいる
めぶいた花は
この

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Twitter詩「遊魚」

Twitter詩「遊魚」

障子に透ける花焔

尾引く遊魚は濃紺の色

座敷流るる青竹の香に

童女の声染み入らむ夜

刹那震わす琴の音は

我が衣手の綾とならんや

障子に透ける花焔

帳は夜霧

世は帳

身のはかなさを抱えつつ

遊魚尾を引き空昇る

紅くれないの

唐紅

障子に透ける花焔

我が衣手には曼珠沙華

咲いてひらいた魚の鰓

【読み】
・香(か)
・童女(わらしめ)
・鰓(えら)

Twitter詩「廃色」

俺らの汚した暗闇で近所の親父はのら犬をぼう

ヒビの入った瓶底の叙情ぶってるウィスキー

白樺の枝を手折るよに乱れる性は冬に腐りて

突き立てられた月光に我ら臓物を破かれている

夜を迎える人間の野生が皿を割っており

夕陽に焼かれ膿んでいる乳房は女だけのもの

月に背かれた悔しさで俺らは今日も泣き疲れ

路地に聖歌は降り止まぬ落葉風の祈るよに

Twitter詩「閉口世界」

今更口にすることなんて何一つない。

心も体もすべては水晶体でできており、

無意識にでも人は光を撚り集める。

 

蒐集を繰り返していく。

すべてが透りすぎていく。

それを簡易的に人生と呼ぶのだから、

やはり口にすべきことはない。

 

泳いでいるもの、光っているもの。

枯れていくもの、褪せていくもの。

百年も前に通り過ぎて、それでも止まらなかった列車は、

空へと昇っていくことが

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Twitter詩「ぶどう味」

 

ぶどうのアイスキャンディ

くちびるにぬって

おめかしごっこした なつやすみ

 

きみのくちびる

ゆうひをこえて

あかくて あまくて

ぼくはなきたくなった

 

またね といっしょに

くちびるとけて

とけたアイスをポチがなめて

 

ゆうひのあじも

ゆうひのいろも

なみだのうみに しずんでいく しずんでいく

Twitter詩「よる」

Twitter詩「よる」

 

ぼろアパートの深い夜は

あま黒い紺の霧に包まれ、

鏡に映る子うさぎも

月に恋することなく夢の中。

 

独り毛布に抱かれるわたしは

ぎゅっとくまに抱きつく、

寂しさはそうやって連鎖の中で灰になる。

 

ああ、下階のお兄さんの話し声が暖かい。

花瓶のふちが空気と淡くなっている。

カーテンからこぼれる月明かりは

スカートをめくられた子のはにかみに似ている。

 

孤独の対

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Twitter詩「飾られたい感情」

Twitter詩「飾られたい感情」

 

ワンフレームに切り取られた世界を満足そうに眺めているのは、

退屈に麻痺してしまったからで、

浜に打ち上げられた海月とおそろいなんだ。

自己完結した物語はいつだって深海みたいに盲目で、

それを安定剤として使用しているうちは、

どこまで潜ってもひとりだよ。

できることなら、ショーウィンドウに飾られたいね。

いつまでも綺麗なままでいられるよう、

感情をピン止めして、標本にできればい

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Twitter詩「凍詩」

Twitter詩「凍詩」

 

つめたくてさみしくてつめたくて

なにもないねつりょうの

くうきのやわらかないろみ

うみとよると よるとつき

ひえる

あめのひのささやかないたみ

なにもないねつりょうの

ちいさなおんかい いきをすうおと

ひえる

しずくするこだま

しんとなくねつりょうの

なめらかななめらかなとうし

つめたくてさみしくてつめたくて

よる

はかなくなるつきのひかり

Twitter詩「落ち葉」

Twitter詩「落ち葉」

葉脈をのばし

空と結合する

それは ひとひらの回帰です

母のもとへと着陸したい

そう叫ぶ あなたの無線は

ひらり ひらりと

飛来する

あの空からでしょうか

それとも 願いからでしょうか

もう誰のおはなしも

聞きたくはないのです

だって わたしには声がなく

だって あなたには耳がない

ひとひらの

おかえりなさいを

風のたよりに待っているのです