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むるめ辞典

■蝗害

[読]こうがい

蝗の害

[例文]
真っ黒な雨雲が遠くの空に見えた。これは一雨くるなと思って雲が近づいてくるのを見守っていたらなんと翅虫の大群だった。彼らの翅の震える音が空から落ちてきて、太鼓を叩くように地面を揺らした。

地に降り立った翅虫の、作物を咀嚼する口角の鋭い音と翅の振動が混ざりあって世の中のすべての矛盾と理不尽のために作られたような不快な音があたり一帯に響いた。

彼らの牙が刈り取った欲望の残骸を見渡していたら、いろんなことが修復不能にみえた。ちょっとあとになって芽生えた、あの時こうしておけばよかった、という生易しい感情がよけいに心を傷つけた。

それでしょうがないからまず酒をのんだ。

しばらく呆然としてから、いつもは残酷な時間が波になって心を洗い流してくれるのをただ待つしかないなと思い至って、傷を残したまま日常生活に戻った。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。